眼科専攻医1年目向け 眼科診療/疾患/対応マニュアル

4月の新規眼科専攻医向けの内容です。

施設ごとに慣習的な対応もあると思うので、細かいことは適宜それぞれの病院のオーベンに確認しましょう。

目次

眼科の診察、手技、カルテに慣れる

まず最初に残念なことに、眼科はかなり専門的な分野であり、初期研修医のときに学んできたことは急変時などには役立つものの、眼科自体の診察にはほとんど役に立ちません。

全身を管理することはほとんどありませんし、眼に関してこれから改めて学んでいく必要があります。

眼科を専攻し続ける以上、ずっと目を診ていくことになるので、診察・手技はさっさと慣れ始めるほうがよいと思います。

  • 細隙灯顕微鏡(スリットランプ)
  • 倒像鏡による眼底診察

まずこの二つを扱えるようになりましょう。できるようにならないと、患者さんの診察自体ができないです。また、入院手術患者における眼圧測定は必須なので、アプラネーション、トノペン、アイケアなどで測れるようになりましょう。

その後、細隙灯顕微鏡を用いた

  • 前置レンズでの眼底診察
  • 接触レンズでの眼底診察
  • 接触レンズでの隅角診察
  • 接触レンズでのレーザー治療

をできるようになればよいと思います。

また、カルテも眼科専用のカルテを使っていることが多いです。パターンとしては、以下のどちらかがほとんどだと思います。

  • 全科電子カルテ+紙カルテ
  • 全科電子カルテ+眼科専用電子カルテ(連携)

眼科ではシェーマ(目の状態のお絵描き)を用いることが多いため、いろんなシェーマの型が必要となってきますが、全科カルテではほとんど採用されていません(知りませんが)。

また、眼科では右眼と左眼の所見を書く必要があり、学んできたカルテの書き方SOAPも、右と左でそれぞれ書く必要があり、ごちゃごちゃします。

ということで、眼科診察のカルテが書きやすいように作られた眼科専用の電子カルテがあり、眼科専用のモニターなどを併用して使っているところが多いです。

手技では

  • 顕微鏡の扱い方
  • 顕微鏡下の細かい手技、注射など
  • 結膜下注射、テノン嚢下注射、硝子体注射

を学んでいく必要があります。注射手技を学ぶ上では、針先の向きは理解しておくべきです。

眼科の次回検査指示

眼科は外来も特殊です。

多くの科では「直接診察室に呼んで、診察をして、処置や処方などの対応をする」という形、もしくは「事前に採血検査や画像検査などをしてから」というパターンですが、検査するにしても当該科の外来以外のところ、つまり該当する検査の検査部(採血部や放射線部)で、検査をしてから外来に来てもらう、と言う形になります。

一方眼科では、「眼科の外来で、ほぼ毎回眼科の検査をして、その後に診察する」という形になります。

基本的に眼科外来だけで完結します。眼科検査をせずに直接診察するパターンもありますが、ほとんどの場合まず検査をしていきます。「屈折値(初回)」「視力」「眼圧」を測り、その他必要な検査をそろえた上で、診察室に案内される感じです。

つまり眼科医は必要な検査の指示を毎回入れる必要があります。

患者さんの診察終了時に、次回の診察前に行う検査の指示を入れる必要があるわけですね。

その上で大事なことが

  • 不要な検査はいれない

ように注意すること。

例えば白内障手術希望の患者さんが来たとして、若手1年目は自分の判断で手術を決めれない、オーベンに相談してから手術決定をするパターンも多いと思います。

オーベンがその日いてそのまま相談するパターンならよいですが、その日に相談できる人がいないとき、別の日に再度受診してもらうことにした場合、次回の検査オーダーは何を入れるか。

視力・眼圧は基本的に行う検査と前述しましたが、このパターンでは不要です。

白内障術前視力を一度測っているのに、次回少し先の時期にもう一度測る必要はありますか?

ないです。

眼圧が変わるような疾患ではないのに、次回また眼圧を測る必要がありますか?

ないです。

白内障をチェックしてもらう必要があるので、散瞳だけすればokです。(他、おこなっていなければ術前に必要な検査も)

次回検査で、何の検査が必要なのかをよく考えて指示出しをしましょう。

不要な検査が増えると、

  • ORTの負担が増加
  • 患者の負担も増加
  • 無駄な検査時間のせいで外来が混む
  • 無駄な検査で医療費の無駄

などに繋がります。

必要な検査は忘れずその上で必要最小限の検査指示を入れることを意識しましょう。

患者の容態別対応方法

疾患別実践対応です。

術後炎症

炎症の程度によりますが、フィブリンが析出していたり前房蓄膿がある場合は、特に注意する。

術後合併症のうち、非常に怖いものの一つが術後眼内炎です。

術後眼内炎は基本的には感染性のものを指しますが、非感染性の眼内炎のTASSを生じることもあります。

この鑑別はときに難しいことがありますが、発症時期と眼痛の有無が参考になります。(TASSは24h以内で、炎症所見のわりに痛みが弱い・自覚症状が弱い傾向)

術後高眼圧

眼圧が高い理由を探す。

  • 前房がなくて高眼圧→悪性緑内障など
  • 膨隆虹彩、虹彩後癒着で高眼圧→LI(レーザー虹彩切開)で治療
  • 硝子体手術ガス置換後の高眼圧→ガス膨張の可能性、ガス抜きの検討
  • 異常所見に乏しく術後数週間後から眼圧上昇→ステロイドレスポンダーを疑う

上記のような所見がなく、目の正常構造が保たれながら眼圧が高いとき(所見があっても高いときは適宜点眼で下げてok)

  • 20〜25mmHg:まずは様子見でよい
  • 25〜30mmHg:緑内障点眼1剤(もしくは合剤2成分)から開始
  • 30〜35mmHg:緑内障点眼フル(4~5成分)でよい
  • 35〜40mmHgかそれ以上:緑内障点眼フル+ダイアモックス内服(マンニトール点滴検討)、もしくは前房穿刺

緑内障の治療とは異なり、一過性の眼圧上昇を抑えるためなので、眼圧は下がったら点眼は中止します。

あくまで上記数値は参考で、状況によっては対応は変えてましょう。

たとえば、術前眼圧両眼10mmHg程度の緑内障がそれなりにある人が、術後25mmHgでは眼圧は結構高い状態と考え、さっさと下げたほうがよいと思います。

術後低眼圧

低眼圧の原因と、それによる影響を確認する。

  • 前房の有無
  • ザイデルの有無
  • 脈絡膜剥離の有無
  • 網膜皺壁の有無

術後低眼圧のほとんどは、内眼手術の際の創口の閉鎖不全で房水、硝子体液が漏れ出ていることが原因です。術後の炎症が非常に強い状態では、毛様体機能低下による房水産生低下で低眼圧となることもあります。

したがって低眼圧のときは

  1. 漏れ出ているところがないか探し
  2. 漏れ出過ぎて前房がつぶれていないか確認し
  3. 低眼圧による脈絡膜剥離が生じていないか確認する

とうことになります。低眼圧による網膜数壁が長期間持続すると低眼圧黄斑症という状態を発症することがあります。術後の低眼圧は、創傷治癒に伴ってほとんどの場合改善してきますので、ある程度は様子見でよいです。

改善が乏しい場合は

  • 漏出部位の縫合
  • ステロイド点眼の中止(創傷治癒を早める)
  • 軟膏への変更
  • 圧迫眼帯

などの対応があります。

硝子体出血

原因をさがす。原因としては

  • 網膜剥離
  • 糖尿病網膜症、その他網膜新生血管のできる疾患
  • 加齢黄斑変性、PCV破裂
  • 網膜細動脈瘤破裂
  • テルソン症候群
  • 前眼部の新生血管(虹彩NV、隅角NVからの出血)
  • 外傷

などがあります。

既往歴も

  • 既往歴のない人、網膜剥離・裂孔の既往がある人
    →網膜剥離に硝子体出血を合併している可能性がある。超音波Bモード所見を参考にしつつ、はやめの手術対応
  • 糖尿病網膜症、網膜分枝静脈閉塞症などの新生血管を合併する既往のある人、そのような人で繰り返して硝子体出血をしている人
    →基本的にNVが原因での出血では超早期手術でなくとも大丈夫。特に硝子体術後で硝子体腔が液体の場合は吸収されやすいので様子見でもよい。改善しない場合、はやめの改善が望ましい場合(片眼の視力が低いなど)は手術
  • 高血圧、加齢黄斑変性などの既往がある人
    →血管の破裂の可能性、網膜下出血の可能性もあり。はやめの手術のほうが、網膜下出血の移動、視機能への影響などからよいと思われる
  • 原因が分からない場合
    →視機能に永久的に影響を与えうる悪いもの(網膜剥離や黄斑下出血など)を想定し、はやめの手術がよい

前房出血

前房出血の原因をさがす、必ず眼圧をフォローする。

  • PDRやその他新生血管を発症する疾患
    →血管新生緑内障の可能性あり 眼圧がコントロールできない場合ははやめに緑内障手術を行う
  • 外傷性の場合(毛様体断裂、虹彩断裂などにより出血する)
    →安静にして吸収を待つ、アトロピン点眼(瞳孔を開いて固定させ安静にさせ再出血を予防する)

眼圧が高過ぎる場合は眼圧を下げましょう。

眼内の出血であればある程度眼圧が高い方が止血効果(眼内への出血の流入を防ぐ)もあるので、どれくらいの眼圧で治療開始するかは人それぞれです。

術後体位の意味

また、ガス置換後の体位はガスの量によってガスが当たるかどうか変わってきます

ガスの量が充分にあれば、ガスが当たりにくい体位以外であれば大体当たります。

網膜剥離

→裂孔部が上方に来るような体位を取り、そこにガスが当たるようにする

ガスが当たることで裂孔部を圧迫し網膜裂孔の閉鎖、液体の再侵入による網膜剥離を防ぐ

例)右眼の右側(耳側)に裂孔がある場合は左側臥位、上方に裂孔がある場合は座位 など

黄斑円孔

→黄斑部は眼球後方になるため、うつ伏せ寝(下向き、腹臥位)をする

ガスで円孔部網膜を圧迫し、網膜を伸展させることで網膜同士をくっつける。ガスが充分あれば座位などでも充分あたる

硝子体出血、前房出血

→ベッドアップにする

出血が沈殿し下方に溜まることで、前房出血のニボーの位置で出血量の確認、眼底診察がしやすい(動き回ると出血が舞って全体的に濁り見えなくなる)

角膜移植後

→air置換後は仰臥位が基本

移植の種類によるが全層でない場合は、移植角膜とレシピエント角膜を接着させるために前房内にガスを入れる。そのガスの浮力により角膜を圧迫し接着させることを目的とする

網膜剥離を初診で受けたとき

裂孔の形状と位置と、剥離の範囲を確認する。

黄斑剥離(黄斑近くまで剥離)があると、視力障害や歪視などの後遺症を残す可能性がある

裂孔が弁状裂孔

→PVDに伴う牽引と硝子体液の流入による網膜剥離、進行は早い

孔が萎縮性円孔

→網膜菲薄部の円孔に硝子体液が流入し生じる網膜剥離、進行は遅い

裂孔の位置・大きさ

  • 上方裂孔は進行が早く、下方裂孔は進行が遅い
  • 裂孔が大きいと進行は早く、小さいと進行は遅い

黄斑剥離がある

→黄斑剥離に至った時期が大事だが、早期であれば早めに手術をする。充分に時間が経っている場合は、視力の改善は厳しいが遅らせ過ぎない時期に手術をする(線維性組織が増殖してくるため)

黄斑剥離がない

→黄斑剥離に早く進行しそうな場合は早めに手術をする、進行が遅いタイプでは予定手術でよい

まとめ

  • 眼科特有の検査、診察、カルテに慣れよう
  • 不要な検査はいれないようにしよう
  • 状態毎の対応は上級医のアドバイスを聞こう

最初は慣れずに大変かもしれませんが、そのうち必ず慣れて対応できるようになります。手術も同じです、最初はできなくとも繰り返すうちに程度はできるようになってきます。

今後同じ眼科という分野で楽しく働いていきましょう。

適宜機会があれば追記していきます。

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