ベル現象(Bell phenomenon)とは何かについてまとめました。
ベル現象を簡単に説明すると、
「目を閉じると目が上を向いて白目が見える現象」です。
ベル現象を理解すると、
- 眼球運動障害の麻痺の原因部分の判断に繋がり
- 眼科における術後体位保持に影響する
ことが分かります。
眼科の術後体位保持は一般的に行われますが、ベル現象を考慮した体位保持は普通考えられていないか、考えなくてもあまり大きな問題がないからなのか、言及されないことがほとんどです。
しかし原理的には体の向き同様、というか目の位置関係が一番大事なので、目の位置が目を閉じると変わってしまうベル現象も考慮したほうがよいと思います。
イラストを交えて説明します。
ベル現象の概要
「目を閉じているときに目を開かせると、白目を剥いている現象」
- ベル現象とは、両眼閉瞼時に両眼が上転(外上転)すること
- 目を閉じているときに、指などで開かせることで検査する
- 片眼の閉瞼(ウィンク)では起こらない
- ベル現象がない人が正常者で10%程度いて、逆に下転する人が2%程度いる
ベル麻痺(顔面神経麻痺の一種)とは全く関係ないので、間違えないように。
ベル現象の臨床意義
「上転障害の障害部位の診断に有用」
麻痺性眼球運動障害における上転障害において、核上性(中枢性)か核下性(末梢性)の麻痺か判断できる。
- 核上性の上方注視麻痺では障害されない
- 核下性の上転障害では消失する
→動眼神経麻痺ではベル現象消失
その他特殊な状況としては、眼瞼下垂手術で、効果が強く出過ぎて目を閉じても閉じ切らない場合
ベル現象が陰性の人だと、角膜が乾燥して兎眼になる。ベル現象が陽性であれば下方結膜が乾燥して障害を受けるだけなので視力には影響しない。
ベル現象における眼球上転の角度
眼球運動の角度は、「左右方向に何度のときに上転作用、回旋作用が最大」というタイプの記載はよくありますが、「上転する角度が何度か」という記載はあまり見かけません。(文献あったら教えてください~)
ので、イラストを元に上転角度の算出を行いました。
瞼裂と角膜縦径は概ね同じくらいです。
5mm(瞼裂の約半分)上転する場合の角度
これくらいの人はよくいますね。これの角度を概算すると、
こうなり、約30度上転ということになります。
もう少し白目を剥いている人もいますよね?
7.5mm(瞼裂の約3/4)上転する場合の角度
これくらい白目を強く剝いている人の上転角度は、、、(ここまでの人はあまりいないか?)
約40度上転していることになります。
実際に測っているわけではありませんが、イラストがそれなりに綺麗に描けました(満足)ので、それを回転させて角度を概算しています。
インターネット上ではベル現象の上転は10-20度程度という研究のものを見かけましたが、白目の剥き具合を考慮すると角度が小さすぎるような気がします。
ただし、閉瞼している状態での瞼裂は通常時の瞼裂幅より小さいので、実際の角度はもう少し小さいとも思います。また、目が開いて黒目が見えたまま寝ているような人もいますし、人によって上転の角度は異なると思われます。
まぁ、MAXで30度程度は上転するんじゃないかな~と思います。
まとめ
- ベル現象とは、寝ているときに白目を剥く(上転)現象
- 末梢神経麻痺で障害され、核上性麻痺では障害されない
- 眼瞼下垂手術時の合併症で兎眼になるか否かに関わる
- 上転角度はMAX30度程度(おそらく)
冒頭でも述べた通り、ベル現象は眼科の手術後の体位保持に影響する可能性があります。
あまり言及されているケースは少ないですが、眼科における術後体位保持は、体位が大事なのではなく、眼位保持が大事です。
つまり、体の向きではなく、顔・頭の向きが大事で、更に細かく言うと目の向きの問題になってきます。
ということで下記記事でも更に考察をしていますので、参考にしてください。
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