眼内ガス置換後の術後体位保持とベル現象の考察

日々の診療疑問点・考察です。

術後体位保持とベル現象について。

目次

ガス置換後の体位保持

網膜剥離や黄斑円孔などの硝子体手術、黄斑下出血の血腫移動術(硝子体手術含む)などで、眼内にガス留置をすると思います。そのとき、体位保持をしますね。

体位保持の向きとして、網膜剥離であれば「裂孔部位が上方に来るように」体位保持します。

理由は、「液層とガス層ではガスは上方に来るから、ガスで裂孔を圧迫および液体流入を防ぐ」目的です。

ベル現象とは

さて、ベル現象というものがあります。

「目を閉じると、目が上転する」現象のことです。細かく言うと、上外転が多いです。

寝ている人の目を開けると、目が上を向いて白目を剥いていますよね。それです。

体位保持+眼球保持が必要

さて今回の記事で言いたいことは、

「ガス置換して体位保持(うつ伏せ、側臥位など)していても、目が動いていてはガスは正しいところに当たらないのでは」ということです。

施設毎に術後体位は考え方が違うかもしれませんが、私が教わってきたところでは「眼球の向きは考慮しない上での体位保持」でした。すなわち、裂孔が上にあれば座位・ベッドアップ、右にあれば左側臥位、下方にあれば逆立ちうつ伏せです。


以下に、ベル現象が起こった場合の眼球向き、裂孔、ガスの関係を描いてみました。

例)上方裂孔の場合

日中座位でいれば上方の裂孔にガスは当たり、タンポナーデ効果があります。

一方夜間、フラットにして寝てしまうとガスが当たりにくいので、ベッドアップにすると思います。しかし目を閉じてしまうとベル現象で・・・

あまりガスが当たりませんね。特にガスが減ってきたら、完全に当たりません。

例)下方裂孔の場合

同様にイラストを描いてみました。

ガスが70-80%程度あっても、裂孔が下方の周辺部だと、裂孔周囲は既に液層になってしまいます。

体位保持の詳細を記載している書籍は少ない

眼科書籍では手術系などいくつか読み漁りましたが、体位保持について細かく書いているものはありませんでした。(「裂孔が上方に来るように」程度の記載。)さらに、体位保持したとしてもベル現象や、その他眼球運動の影響については書いてありませんでした。

論文にはあるかもしれませんが、詳しくは調べていません←

眼球位置まで考慮した体位保持をされている施設の方はいるのでしょうか?

例えば、日中裂孔部位が上にくるような体位を取った状態で「目はあけたまま真正面しか見てはいけません」や、夜間睡眠時は「ベル現象(上外転位)を考慮した上での体位保持」を指示するようなパターン。

考察

ベル現象を細かく検討すると、角度や頻度においても個体差があるし、非常に細かな体位制限になってくる可能性がある。

一方、多くの人はベル現象で眼球は軽く上転はするので、夜間睡眠時の体位について、上転分を多少考慮した体位にしてもいいかもしれない。

また、裂孔の深さ(後極よりか周辺よりか)によっても、ガスの当たり方は異なってくるので、考慮してもよいかもしれない。(下方周辺部の裂孔はガスが減ってしまうと逆立ち生活をしてもらったりしない限りすぐタンポナーデ効果がなくなる)

ガスの量が減ると、タンポナーデ効果は曖昧になってしまう。一方、ガスがたっぷり入っている状態であればあまり気にしなくてよくなる。

まとめ

  • ガス置換後の術後体位は、眼球運動も考慮したほうがよい(夜間睡眠時はベル現象を考慮)
  • がしかし穴の位置、ガスの量、ベル現象の角度など、非常に細かく考えなくてはならない
  • 現実的には難しいので、裂孔の位置によっては眼内貯留期間の長いガスをたっぷり入れることが大事

実際にはそこまで検討しなくても術後経過問題ない方が多いと思います。

しかし原理的には眼球の位置も大事だよねということでした。

コメント

コメントする

18 + 3 =

トップへ
目次
閉じる