細菌性眼内炎プロトコール 抗生剤の作り方、使い方

緊急対応を行っている眼科病院であれば、感染性眼内炎の緊急対応を行うことはあると思います。

忘れた際にすぐこのページを検索できるように、もしくはブックマークしておくことをお勧めします。

文献としては「白内障術後眼内炎」となっていますが、実際には硝子体術後眼内炎、緑内障術後眼内炎、硝子体注射後眼内炎など、さまざまな外因性眼内炎に使われていると思います。基本的に「細菌性」を疑っての初期治療になるため、タイトルは細菌性眼内炎としています。

目次

細菌性眼内炎プロトコール

目的→バンコマイシン10mg/ml(1%溶液)と、セフタジジム20mg/ml(2%溶液)をつくります。

準備するもの

  • 生理食塩水50ml 2つ
  • バンコマイシン0.5g/1V 1つ
  • セフタジジム1g/1V 1つ

バンコマイシンもセフタジジムもそれぞれ0.5gバイアルと1gバイアルがあります。

「どっちがどっちだっけ?」となることがあるかもしれませんが、

  • セフタジジムのほうが濃度が濃いこと
  • バン5(コ)マイシン

などと覚えるといいかもしれません。

作り方

  • それぞれの生食からそれぞれのバイアルに分注し溶解させて、それぞれの生食に戻す

これだけです。非常に簡単です。バンコ0.5gとセフタ1gを忘れなければ問題ありません。

  • バンコマイシン0.5g/50ml=500mg/50ml=10mg/ml=0.01g/ml=1%溶液(g/ml)
  • セフタジジム1g/50ml=1000mg/50ml=20mg/ml=0.02g/ml=2%溶液(g/ml)

の2つの溶液ができあがります。

使い方

  • 点眼薬
    :それぞれを点眼ボトルに分注して点眼薬として使う
  • 硝子体注射
    :それぞれを0.1mlずつ硝子体注射薬剤として使う
  • 硝子体手術
    :それぞれを1mlずつ灌流液に分注して灌流液として使う

溶液を作ってしまえば、あとはそれをそのまま使えます。

硝子体注射する量(0.1mlずつ)、硝子体手術の灌流液に入れる量(1mlずつ)を覚えておきましょう。

硝子体注射では0.1mlずつ注射するため、計0.2mlとなります。硝子体への注射量としてはかなり多いので眼圧に注意する必要があります。(硝子体液か前房水を多少抜いたほうがよいです)

抗生剤作成手順イラスト編

きれいでわかりやすいイラストを発見しましたので載せておきます。

白内障術後眼内炎|眼科 61巻 8号 pp. 803-808(2019年08月)から引用

バイアルへの希釈の際は、希釈したものを生食ボトルに戻すだけなので、5mlでなくてもokです。(大体5ml前後になると思いますが)

一応、これらの抗生剤の使用に関しては、文献のタイトルからは「白内障術後」という内容ですが、実際には白内障術後に限らず、

  • 硝子体術後
  • 緑内障術後
  • 硝子体注射後

など、内眼手術・処置後全般に使われていると思います。

眼科領域の抗生剤のスペクトラムは以下にまとめていますのでご参考に。

ステロイド使用に関して

こちらはエビデンスははっきりとしておらず、意見も一致していないようです。

かなり臨床的な、経験的なことから使う人もいれば、使わない人もいます。もちろん、眼内炎の程度によっても変わってきます。

眼内炎に対する治療は基本的に緊急の硝子体手術になりますが、硝子体術後の炎症はかなり強くでることが多いです。炎症による別の悪影響が起こりそうな場合はステロイドの局所投与を個人的にはお勧めます。(ただしステロイドの全身投与や硝子体注射などは行っていません)

まとめ

  • 生食50ml+バンコマイシン0.5g
  • 生食50ml+セフタジジム1.0g
  • 点眼→上記溶剤をそのまま使用
  • 硝子体注射→上記溶剤を0.1mlずつ注射
  • 硝子体手術→上記溶剤を1mlずつ灌流液に分注

細菌性眼内炎は基本的に早急に手術が必要になるため、抗生剤の作り方は覚えておくか、すぐに確認して思い出せるようにしておくことが大切です。

【白内障術後眼内炎アップデート 2005】治療戦略 緊急対応プロトコール|あたらしい眼科 2005
白内障術後眼内炎|眼科 61巻 8号 pp. 803-808(2019年08月)

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