日本の眼鏡分野の闇 眼鏡処方、検眼のグレーな領域

「眼鏡」という物と、「眼鏡合わせ=検眼」という行為は、実はいろんな曖昧さを含んでいます。「眼鏡処方 医行為」などで検索すればいくらでも出てきます。その曖昧な領域を徹底的(?)に展開します。

これらは

  • 眼鏡が医療機器である一方、ファッション性を帯びた生活用品であり、誰でも製造販売可能なこと
  • 眼鏡合わせ(=検眼)を医行為としつつ、実際は眼鏡店(非医療従事者)でも問題なく行われていること

という、眼鏡の持つ二面性(医療機器、生活用品)と、法律と過去の判例による曖昧な解釈から生じています。

が、結論としては今の世の中、眼鏡店で眼鏡を作るのは問題ないという状態になっています。

目次

眼鏡は医療機器

そもそも眼鏡は法律(薬事法)上、医療機器に属します。

医療機器は薬事法にて、その特徴によって以下のように分類されます。

  • 一般医療機器(人体に影響を与える恐れがほとんどないもの):クラス1
  • 管理医療機器(人体に影響を与える恐れがあるもの):クラス2
  • 高度管理医療機器(人体に重大な影響を与える恐れがあるもの):クラス3-4

眼鏡は一般医療機器に分類され、コンタクトレンズや白内障手術などで挿入する眼内レンズは高度管理医療機器に分類されます。

しかし一般医療機器(クラス1)は届出のみで販売できます。(届出不要と記載の都道府県HPもあるが、厚生省HPでは記載あり)独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(通称PMDA)に届出を行った時点で製造販売が開始できるようです。

クラス2~4は届出・審査や承認が必要となります。

つまり眼鏡は医療機器であるが、届出をすれば誰でも製造販売できるということです。

  • 眼鏡は医療機器に分類されるが、届出をすれば誰でも製造販売できる

「処方」をするのは医師

「(薬を)処方するのは、医師」というのは医学を勉強する上で学ぶ医師法の基本事項です。

薬を調剤するのが薬剤師で、処方するのは医師(医師は調剤もしてよい)、ということになります。

医師の処方箋交付義務は医師法に記載があり、処方という行為は医師にのみ許された行為となります。

「医師は、患者に対し治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、患者又は現にその看護に当っている者に対して処方せんを交付しなければならない。」

医師法第22条

処方の意味については、下記辞書が一番近いと思います。

医師が患者の病状に応じて、薬の調合と服用法を指示すること。

goo辞書

「使用する薬、使用方法を指示すること」が処方で、「その指示が示された紙」が処方箋です。薬を調合すること、作ること、配合することではありません。

  • 処方という行為を行えるのは、医師のみ
  • 処方とは使用する薬、使用方法などを指示すること
  • 処方箋とはその指示書

眼鏡を「処方」するのも医師

眼鏡は薬ではないですが、どのような度数の眼鏡を作るかという指示書を医師が作ることを一般に「眼鏡処方」といい、「眼鏡処方箋」という紙を発行できます。

(※ただし医師法に”眼鏡”処方箋という眼鏡に関する記載はなく、眼鏡処方も眼鏡処方箋もある意味拡大解釈です。医師法に記載されているのは”薬の”処方・処方箋のみです。)

眼鏡店で眼鏡を作るときに、眼鏡業界の関係者の間では「眼鏡処方」という言葉が使われているようですが、言葉としては怪しい部分になります。

そもそも「眼鏡処方」という言葉が曖昧ですが、「処方」という言葉は医師の業務独占なので、言えません。眼鏡作製です。ただし言葉の問題なので、どうでもいいと言えば、どうでもいいです。

実際には眼科では、医師の指示のもとという形で、視能訓練士が視力測定・眼鏡度数測定をし(=検眼)、その結果を見て医師が処方箋を発行する(=眼鏡処方)、という流れが多いです。

  • 「処方」できるのは医師のみ
  • 眼鏡処方という言葉は法律上記載はない

眼鏡合わせ(=検眼)は医療行為

さて、過去国からの通達では

眼鏡店で検眼器を用いて検眼を行う行為は医行為にあたる

昭和29年11月通達

というように、眼鏡合わせ=検眼は、医療行為(=医師のみが行える行為、もしくは医師の指示のもと他の医療職が行う行為)だと言っているのです。

そして以下のような通達もあります。

「眼鏡店で医師でないものが行う検眼は、需要者が適切な眼鏡を自身で選択できる場合、人体に害を及ぼすことがほとんどない場合に限り、通常の検眼器を用いて度数の測定を行うことは許されないとする」

昭和32年6月通達

言い換えると検眼は医療行為だけど、健康な一般人に対してであれば眼鏡店で行ってもよいよみたいな曖昧な回答になっています。通常の検眼器を用いてはダメというのがよくわからないですが。

一方で、眼科にてコンタクトレンズ処方を目的とする検眼およびテストレンズの脱着を従業員に一任していた眼科医が有罪判決を受けた判例があります。(東京高裁平成6年11月)この眼科医は問題があったときしか検眼した患者を診ていなかったようなので、そもそもが問題かもしれませんが、もし検眼を医療行為とするのであれば、医師がいないところ(眼鏡店)で「検眼」する行為はどうなのかという話です。こちらの判例は対象がコンタクト(高度管理医療機器)だからっていうのかもしれませんが。

  • 眼鏡合わせをすること(検眼)は医療行為
  • しかし健康な相手であれば眼鏡店で検眼してよい(かなり曖昧)

眼鏡屋での眼鏡作成はアウト?

A:アウトではありません

してダメだったら眼鏡屋はこんなにたくさん存在しません。検眼を医療行為と指摘する通達が過去あったにも関わらず、現実的には検眼は眼鏡店で一般的に行われています。

では、何がokで何がダメなのか。前述の通達から考えると、ダメなのは

  1. 眼科で行うような「検眼器」を用いて検眼を行うこと
  2. 眼鏡を処方すること(言葉上の問題)

ということになると思います。本当にそうなのかは知りませんが。

一応視力検査表は、背景の光の強さなどがしっかりと基準を満たした「標準視力検査装置」と、検査効率・実用性を重視した「準標準視力検査装置」に分けられます。眼科には標準視力検査装置が多いです。(スペースや費用の関係で準標準視力検査装置のところもありそうだが、見た目での区別のし方は知りません)

つまり、標準視力検査装置であれば「眼科で行うような検眼器」に当たらなく、よいということになるのでしょうか。これもよくわかりませんが。

  • 眼鏡店で眼鏡を作ることは事実上、歴史的にも問題ない

眼鏡作製技能士の存在

眼鏡のプロ、眼鏡作製技能士という国家資格が2022年より始まりました。(それまでは認定眼鏡士という、団体から与えられた資格)

しかし、眼鏡作製技能士が存在しない眼鏡店はたくさん存在します。というか、従業員は全員資格を持っているというところのほうが少ないようです。(話を聞く分なので真偽は知りません)

そして、そこの眼鏡店にこの資格を持っている人がいるかどうかは、調べてみるか、実際に行ってみるか、聞いてみないとわからないです。それでも眼鏡店は開けるし、眼鏡は売ることができてしまいます。

つまり、資格を持ったプロが作る眼鏡がある一方、アルバイトが作る眼鏡があり、それは実際どのような人が作った眼鏡なのかわからない、ということです。

例えば、「〇〇医院」などという医療機関にいけば、そこにいるのは必ず医師です。医師でないものが診療していたら犯罪になります。

ここまでのまとめ

さて、ここまでの内容をまとめます。

  1. 眼鏡を医療機器と分類している
  2. しかし一般医療機器なので届出をすれば誰でも製造販売できる
  3. 眼鏡合わせ(=検眼)は医療行為であると言っている
  4. しかし眼鏡店でも健康な人には検眼してよいと言っている
  5. 一方で(コンタクトだが)検査を従業員に一任していた医師が有罪とされた例がある
  6. 処方は医師法上、医師しかできない(処方という言葉の使い方)
  7. 実際には世の中は多くの眼鏡店が存在し「誰が」眼鏡作製しても全く問題ない状況
  8. 眼鏡を扱う国家資格のプロがいる一方、アルバイトでも眼鏡は売ることができる

検眼を医療行為と言わなければ問題なさそうですが、検眼は医療行為として保険診療点数が規定されています。

では眼科と眼鏡店での視力検査、何が変わるのか?どちらもベテラン検査員がいればそんなに変わりません。患者(客)によっては眼鏡店では対応不可・対応すべきでない人がいるだけです。(目の病気がある可能性がある人)

また、眼科では検査に医療費としてお金がかかりますが、眼鏡店では購入した眼鏡代のみです。これに関しては検査代をとっている眼鏡グループもあるようで、それは流石にアウトなんじゃないかと思いますが、どうなんでしょうね。

しかし結局は、問題にはならないわけです。

  • 眼鏡は医療機器だけど誰が製造販売してもよい
    →資格のある眼鏡士が作る眼鏡もあれば、アルバイトが合わせる眼鏡もある
  • 眼鏡合わせ(検眼)は医行為だけど安全な範囲では眼鏡店でやってもよい
    →実際たくさん行われている

では何が問題かというと、安全な範囲でできる検眼って、どこまで?という話です。

会社は大袈裟に言うと利益を求めます。利益だけ求めてしまい眼鏡を売ることを最優先にしてしまうと、医療機器という観点からよくないよ、ということですね。そのためには眼鏡に対する知識を深めることと、あとはモラルですね。とりあえず「売る」を最優先にしないようにすることです。

アメリカでは検眼医が検眼する

ちなみにアメリカでは眼鏡店にオプトメトリスト(Optometrist)と言われる検眼医(医師)がいて、検眼医が発行した処方箋がないと眼鏡を作成できません。(下記外部サイト参照)

このほうがはっきりしていてわかりやすいとは思います。

かといって今更これを日本に取り入れる必要はないと思います。

言えることは、はっきりとしない曖昧さがある日本という国と、それに合わせて我々は暮らしているだけ、ということです。

個人的希望は

「国が曖昧にしているだけ」ということなので、特に現状維持でよいです。

ただ、眼鏡を作成するということに関して、仕事の質を保ち責任をもって行って欲しいと思う程度です。(眼鏡に限らずどんな仕事にも言えると思いますが)

勿論、眼鏡店勤務の方で技術・知識・対応が尊敬できる素晴らしい方はたくさんいらっしゃいます。眼鏡の資格を持っている方もそうですし、資格を持っていない方でもそうです。

しかし大衆眼鏡店が乱立している現在、アルバイトも多く、全体で見ると必ずしも質は保てているのか、と疑問を思うところはあり、実際に眼科には度数が全然合っていない眼鏡を作られて受診される方がしばしばいます

眼鏡は適切に作られないと

  • 眼精疲労
  • 斜視
  • 弱視

などの原因となり得て、雑に合わせた眼鏡のせいで「目を病気にする」可能性があるということ。

眼鏡はファッション性を備えた気軽な生活用品であるとともに、医療機器でもあるという認識があればよいかなと。

なので個人的には、眼鏡の質と安心と、技術のある眼鏡店が栄えるように、眼鏡店さんには眼鏡作製技能士の資格を取ってほしいと思います。というかそうでなければ何のために国家資格にしたの?という感じです。

結論

  1. 眼鏡は医療機器だが届出をすれば誰が製造販売してもよい
  2. 眼鏡合わせは医行為だが安全な範囲であれば眼鏡店員がしてもよい
  3. 眼鏡は医療機器である一方、誰でも販売できるファッション性を帯びた生活用品であること
  4. 眼鏡を医療機器として医療機関が扱う一方、眼鏡を生活用品として利益目的に会社が販売していること

これらが混じり合うことで、この曖昧な領域ができて、曖昧に成り立っています。

結局、グレーなままで成り立っているのだから、そこをお互い突っ込んだりせず(この記事では成大に突っ込んでいますが)、出る杭にならず、お互いの領域をわかりつつ協力していくのがベストだと思います。

眼鏡店の方にはこれまでに患者さんの眼鏡作製をたくさんしていただいており、感謝しています。弱視の子の眼鏡作製などもこれまでもたくさんしてきてもらいました。是非とも今後ともよろしくお願いします。

以上、眼鏡領域展開でした。

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