後部硝子体剥離のステージと関連する網膜疾患

網膜疾患は主に

  • 網膜自体の疾患(網膜血管関連など)
  • 網膜と硝子体の接着面での疾患
  • 脈絡膜からの影響による疾患(加齢黄斑変性など)

に分かれます。

イメージとしては、

  • 網膜自体
  • 網膜より内側(硝子体)
  • 網膜より外側(脈絡膜)

という感じです。

今回は硝子体との関連で生じる網膜症に関しての内容ですが、これらの多くは治療は外科的治療(手術)となります。

目次

後部硝子体剥離とは

眼内にある硝子体が、網膜との接着面から外れることをいいます。基本的に網膜は眼球の奥(後方)にあるため、後方の硝子体がはずれる(剥がれる)ため、後部硝子体剥離(PVD:posterior vitreous detachment)といいます。

硝子体は眼内にあるゼリー状、たまごの白身のようなゲル状の物質ですが、膜で包まれていると考えると分かりやすいです。その膜が網膜とくっついています。

後部硝子体剥離の起こる位置
硝子体と網膜が接着している状態(後部硝子体剥離なし)

硝子体の外枠の膜と網膜がくっついている状態です。

硝子体と網膜がはずれた状態(後部硝子体剥離あり)

硝子体膜と網膜がはずれた状態です。

後部硝子体剥離のステージ

引用:後眼部アトラス

  • ステージ0:後部硝子体剥離なし
  • ステージ1:黄斑周囲に部分的に後部硝子体剥離あり(部分PVD)
  • ステージ2:中心窩周囲に後部硝子体剥離あり(perifoveal PVD)
  • ステージ3:黄斑で完全に後部硝子体剥離あり、視神経乳頭でなし
  • ステージ4:完全後部硝子体剥(PVD+)

後部硝子体剥離のステージと疾患

後部硝子体剥離を含む硝子体との関連で起こる主な疾患はには、

  • 裂孔原性網膜剥離
  • 網膜硝子体界面疾患

があります。網膜硝子体界面疾患には黄斑前膜、黄斑円孔、VMTSなどが含まれます。

PVD stage 0~1

後部硝子体剥離が全く起こっていないPVD stage 0で起こる疾患としては

  • 黄斑前膜

があります。黄斑前膜は多くはPVDが起きている状態で生じますが、PVDが起きていない状態の黄斑前膜もあります。

  • 偽黄斑円孔

は、黄斑前膜に伴い生じるので、黄斑前膜が起こる可能性がある場合はいつでも生じる可能性があります。

また黄斑部に部分的に牽引がかかることで

  • VMTS

を生じる可能性もあります。

PVD stage 2~3にかけて

中心窩網膜に牽引がかかっている状態であり、

  • 黄斑円孔
  • 分層黄斑円孔
  • VMTS

などを生じる可能性があります。

PVD stage 4

stage 4は後部硝子体は完全に剥がれている状態(視神経乳頭部まで)です。

それよりも周辺部の網膜へPVDが進む際に、血管周囲などの網膜との癒着が強い箇所で網膜ごと剥がれると裂孔原性網膜剥離を生じます。

  • 裂孔原性網膜剥離

また、多くの黄斑前膜は完全にPVDが起こった状態で生じます。

  • 黄斑前膜

まとめ

後部硝子体剥離のステージをまとめました。

  • 黄斑前膜はPVDがありでもなしでも起こるので、stage はあまり気にしなくてよい
  • 偽黄斑円孔は黄斑前膜に伴い生じるので、同上
  • 分層黄斑円孔は中心窩PVDが生じる際(stage 2~3にかけて)、もしくはERMによって生じる
  • 黄斑円孔はPVD stage 2~3にかけて生じる
  • 裂孔原性網膜剥離は基本的にはPVD stage 4(萎縮円孔による網膜剥離の場合はこの限りではない)

いろいろ書きましたが細かくstageを覚える必要はあまりありません。

手術をする上ではPVDが起こっているか、起こっていないかの判断は必要であり、そのためには概ね疾患毎にPVDがあるかないかは把握しておくとよいですが、疾患毎、または同疾患でもバリエーションはさまざまですので、PVDは手術中に確認しつつ対応すればよいです。

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