後部硝子体皮質前ポケットと後部硝子体剥離

硝子体の細かな解剖は意外とわかりにくく、あいまいになっている人もいると思うのでまとめます。

硝子体網膜界面疾患(黄斑前膜、黄斑円孔、VMTSなど)を理解するには、後部硝子体皮質前ポケットの理解が必要です。

この記事では、後部硝子体皮質、後部硝子体皮質前ポケット、後部硝子体剥離と、硝子体網膜界面疾患のことが理解できると思います。また、細かい部分に関しては適宜関連記事をリンクしておきますのでご確認ください。

目次

硝子体の解剖を簡潔に

硝子体の解剖
硝子体の解剖図
  • 容積約4~4.5ml程度の透明なゲル状物質、眼球容積の4/5を占める、前後径16~17mm
  • 99%が水、0.9%が低分子物質(電解質、糖など)、0.1%が高分子物質(Ⅱ型コラーゲン、ヒアルロン酸、可溶性蛋白質など)
  • Ⅱ型コラーゲン線維の間にヒアルロン酸が存在し、大量の水を保持している
  • 硝子体前面は水晶体後嚢にWieger靭帯が輪状に接着しており、その付近の空間をBerger腔という
  • そこから視神経乳頭までCloquet管が伸びており、乳頭前方部はMartegiani腔という
  • 成分は一様ではなく、上述の管と、黄斑前方には液化した空間(後部硝子体皮質前ポケット)がある
  • 硝子体基底部は毛様体扁平部~鋸状縁~網膜周辺部の領域にあり、網膜と強固に接着している

以下のページも参考にどうぞ。

後部硝子体皮質前ポケットとは

  • 硝子体皮質とは、ゲル状の硝子体成分を包んでいる硝子体の端の膜のこと
  • 後部硝子体皮質前ポケットとは、後極の硝子体膜の前方にある液化腔のこと
  • ポケットはCloquet管と繋がっている

後部硝子体皮質前ポケットとは、黄斑前方の硝子体に認める硝子体の中の液化したスペースで、幅約6.5mm、高さ約0.7mmの液化腔をいいます。Cloquet(クローケ)管との間に隔壁がありますが、つながっています。

このスペースがあることによって、黄斑前方の硝子体は、一様にゲル状物質があるのではなく、後部硝子体皮質のみが膜状にくっついている状態になります。その手前のポケットは液化硝子体であり、ゲルではありません。

硝子体皮質は、硝子体(ゲル)成分を包んでいる硝子体の一番外側の膜、と考えるわかりやすいです。

別名「岸ポケット」ともいいます

後部硝子体剥離(PVD)とは

  • PVDとは、後極の硝子体が網膜面から外れること
  • 硝子体と網膜面の癒着の強さは、硝子体基底部>視神経乳頭部>中心窩>その周囲の網網となる
  • すなわちPVDが起きる順番は癒着の弱いところからで、中心窩周辺の網膜→中心窩→視神経乳頭部となる
  • 視神経乳頭部までPVDが起きれば完全PVD
  • 加齢とともに増加し、完全PVDは60歳代で40%、70歳代で80%程度生じている

PVDとは網膜(のILM)と接着している硝子体が加齢に伴い液化・収縮し、網膜面から剥がれることをいいます。

実質的には後極部には後部硝子体皮質前ポケットがあるため、後部硝子体皮質の膜が網膜にくっついており、硝子体のゲルはくっついていません。すなわち後部硝子体皮質が剥がれることがPVDということになります。(下記イラスト参照)

しかしそれも実際には綺麗に剥がれず、膜がちぎれて網膜に硝子体膜が残存することがある。その場合も全体として後方の硝子体が剥がれていて前方に寄っていればPVDといいます。 (下記イラスト参照)

後部硝子体皮質が綺麗に剥がれて起こったPVD

後部硝子体皮質が綺麗に剥がれて起こったPVD

そのまんま硝子体膜ごと剥がれた状態と考えればよいです。後方の硝子体は膜で網膜とくっついているので、膜は簡単にちぎれ得ます。そうすると、下のようになります。

後部硝子体皮質が綺麗に剥がれず網膜に残ったPVD

後部硝子体皮質が綺麗に剥がれず網膜に残ったPVD

膜がちぎれてしまったパターンです。これでも全体としては剥がれているので、PVDということになります。網膜に硝子体膜の残存成分が多いと、そこに細胞増生が起こりやすく、疾患になりやすいと考えられます。

後極網膜では視神経乳頭部>黄斑部>その他の網膜 の順に接着が強いので、剥がれる順番はその逆で、黄斑の周囲の網膜→黄斑部→視神経乳頭部となります。

視神経乳頭部までPVDが起きた状態を、完全PVDといい、視神経乳頭部のPVDが起きるとWeiss ringとして確認でき、しばしば生理的飛蚊症として自覚します。

上図のように、PVDの起こっている目でも約半数程度で硝子体皮質が黄斑に残存しているようです。

網膜硝子体界面疾患の数々

さて、この硝子体と網膜の境界面に、様々な疾患が生じます。

それらをまとめて網膜硝子体界面疾患といいますが、具体的には、黄斑前膜、黄斑円孔、硝子体網膜牽引症候群などがあります。

黄斑前膜

PVDが起こった際、ポケット後壁(=後部硝子体皮質)が黄斑に残存し、それを足場に細胞が増殖し生じる。多くの症例でPVDが起こっています。

黄斑円孔

中心窩のPVDが起こるときに、強い牽引が網膜にかかると生じます。視神経乳頭部より先に中心窩のPVDが起こるので、発症直後は多くの症例で完全PVD(視神経乳頭部のPVD)は起こっていません。

VMTS

硝子体膜が収縮し中心窩に強い牽引を生じ、嚢胞様変化や網膜分離を生じます。VMTSでは後部硝子体膜が分離している所見が見られることもあります。

網膜剥離は?

眼科ではお馴染みの疾患である裂孔原性網膜剥離では

後部硝子体剥離が生じて、さらに前方へ剥離が進んでいく中で、網膜との接着が強い部分や網膜の弱い部分などに硝子体の牽引がかかって網膜に裂孔が生じます。

さらに牽引され剥離が進行するのと並行して、液化硝子体が裂孔から内部に入り内部からも剥離が進行します。

まとめ

  • 硝子体は硝子体外層の膜(硝子体膜、硝子体皮質)で包まれている
  • それらの膜が網膜面と接している
  • 後方(網膜側)は後部硝子体膜・皮質が網膜と接着している
  • 加齢により接着が取れて硝子体皮質と網膜が分離する(後部硝子体剥離)
  • 後部硝子体皮質の硝子体側には液化腔(ポケット)が存在する
  • 後部硝子体皮質と網膜の接着面にいろんな疾患が生じる

網膜硝子体疾患の多くは、硝子体と網膜の接着部での何かしらの問題があって起こるものが多いです。

眼内炎症後などでは癒着も強くなったり

新生血管にしても硝子体側に立ち上がることでより重症化していきます

さまざまな疾患を理解する上でも、硝子体手術での行っていることを理解する上でも、硝子体皮質と網膜の関係を知っておくことは非常に重要かと思います。

参考文献
・OCT眼底診断学
・眼科学
・眼手術学 網膜・硝子体Ⅰ など

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