緑内障の本質と正しい治療の仕方<治療をすぐ開始するな>

緑内障という病気の根本と定義から、緑内障の治療の本来あるべき治療に関して考察します。

タイトルの<治療をすぐ開始するな>は、進行が初期でリスクの低い人のことです。かなり進行していて中心視野がギリギリのような人にはすぐに開始しましょう。

ガイドラインを参考にしつつも独自解釈もあるのでご了承ください。また、ガイドラインで引用されている論文までは見ていません。

目次

緑内障の定義

そもそも緑内障とは「眼圧が原因で、視神経が障害され、視野が狭窄していく病気」のことです。

日本緑内障学会の緑内障診療ガイドラインでは下記のような記載となっています。

緑内障は,視神経と視野に特徴的変化を有し,通常,眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である.

緑内障診療ガイドライン第5版

※緑内障診療ガイドライン第5版はかなりまとまっているのでおすすめです。

緑内障の治療の意味

眼圧が原因で、結果的に視野が障害される。視野狭窄が高度になると、生活に支障がでる。そうならないように進行を抑えるのが、治療です。

つまり、眼圧と視野、どっちが大事かというと、当たり前ですが視野です。1回1回の眼圧値を非常に気にする患者さんがそれなりにいるのは、医師の説明の仕方に原因があるのではないでしょうか。(眼圧は重要ですが間接的な参考値に過ぎないです:後述)

眼圧が高くても、視野が悪化していなければ気にする必要はありません。見えなくなっていませんから。(高眼圧症の緑内障発症率は年間1-2%とされています。眼圧値にもよりますが、自分だったら点眼を開始させないし、開始したいと思いません。検査通院し視野障害がでてきたら治療開始します)

眼圧が低くても、視野が悪化していたら意味がありません。更なる強い治療が必要です、そのままでは見えなくなってしまいますから。


そして緑内障の治療で一番大事なことは、

「その人が生きているうちに目が見えなくならないか」です。

緑内障があっても、高齢で視野障害が軽度で、進行がゆっくりな人、寿命を迎えるまでに緑内障による視野障害で生活に支障がでないであろう人に、治療をする必要は必ずしもありません。(超重要)

否定意見もありそうですが、治療の目的から考えると、これが本質だと思います。必要のない治療をしている時間の無駄と、薬剤・医療費の無駄と、通院・点眼にかかる患者さんや家族の負担を考えた方がよいと思います。

繰り返しますが、緑内障は視野狭窄で見にくくなってしまうことが困る病気ですから、生きているうちに視野狭窄が軽度で困らない状況であれば必ずしも治療する必要はないです。むしろ点眼する手間、点眼の薬剤料、いろんな無駄が出るだけです。

そのはずなのに、超高齢で視野障害が軽度の人にもずーーーっと点眼が出されているようなケースが多いです。「とりあえず」点眼を出すことは、やまめしょう。(勿論、必要だとちゃんと判断した人には出してください)

視神経萎縮の鑑別

網膜から脳までの視路のどこの神経に異常がでても、それが神経細胞・軸索の障害であれば、順行性萎縮、逆行性萎縮により対応する神経細胞は萎縮していきます。

  • 順行性萎縮:細胞体の障害で軸索が障害され萎縮する
  • 逆行性萎縮:軸索の障害で細胞体が障害され萎縮する

詳しくは生理学を参照してください。

緑内障に特徴的な視神経所見はありますが、そのような所見に乏しいときや、診察になれていない人だとわかりにくいことがあります。

例えばBRVO後の網膜の菲薄化からの視神経萎縮(網膜性萎縮:多くは部分的になるので鑑別可能)では、OCTマップによる網膜厚測定だけでは緑内障と区別がつかないこともあります。

視神経乳頭より中枢の障害では、逆行性に視神経乳頭は萎縮し蒼白化し陥凹もできて、網膜も菲薄化し(単性視神経萎縮)、所見が似ている場合もあります。

緑内障性視神経萎縮では、網膜神経線維層の菲薄化が先行し→視神経乳頭の陥凹が縦方向(深く)、横方向(リムが薄く)に広がり→最終的に蒼白化していきます。白色化より陥凹が先行すること、陥凹の辺縁部にノッチがあること、Bjerrum領域に相当する障害が多いことなどの特徴から鑑別は可能ですが、ときに難しいこともあります。

視野が進行しているのか、進行しているのであれば眼圧によって進行しているのかを確認しないと緑内障とは言えないはずですよね。そのことをしっかりと把握し、確認していくことが本来の緑内障の治療、検査の方針だと思います。

無治療時のベース測定の重要さ

緑内障(POAG)の多くはたまたま健診で視神経乳頭異常を指摘されたり、たまたま別のことで受診したときに眼底を見てみたら緑内障がありそうだ、というような「たまたま」パターンと、ほとんど病院受診してこなかった人が最近見え方が悪いと感じ受診し、診てみたらかなり進行していた緑内障だった、という「残念」パターンが多いです。

後者では緑内障の視野の状況に応じて、末期の緑内障であれば視機能が悪化しないように早急に治療を開始してよいです。ベースラインを測って無治療でいるうちに悪化させるより、治療を先決してよいと思われます。

一方前者のパターン、たまたま見つかった人の多くは初期の緑内障です。では、さっそく点眼治療を開始しますか?もちろん、治療開始すべきではありません。年齢、リスクにもよりますが、まずはベースを測定していきます。

後期例など特に治療開始を急ぐ必要のある例でない限り,治療開始の前に眼圧,隅角,眼底,視野などのベースラインデータを十分に把握しておくことが望ましい.

緑内障診療ガイドライン第5版(p107)


  1. 病型、年齢その他のリスク因子
  2. ベースラインの眼圧がいくらなのか
  3. ベースラインの視野がどの程度なのか
  4. 無治療での視野狭窄のスピードがどれくらいなのか(独自考察)

①~③は緑内障診療ガイドライン第5版|日本緑内障学会にも記載があります。治療を開始する上で、どの程度の目標眼圧にするか決める要素です。

①は診察、問診にて。

②の測定回数はガイドラインに記載がなかったように見えますが3~5回程度測ります。日内変動、季節変動、医者の手技による多少の個人差、診察時以外の眼圧は不明など不確定要素があり、重要所見ですがあくまで参考値です。

③眼圧は変動するからベースラインを測る、ならば視野検査も測定誤差があるのでベースラインを測らなくてはいけませんよね。視野データは初回より2回目以降のほうが慣れて上手くできることが多いこと、その日の体調などにより検査結果の正確さは変わります。つまり、ベースラインの視野も本来は1回では判断ができません(測定結果からある程度うまくできているかは判断できますが)。ガイドラインにも「・・・、視野などのベースラインを十分に把握しておく(上述の引用文)」と書かれていますが、どれくらいの期間にどれくらいの頻度で行うかの記載はありません。視野進行の判定は最低5回以上で行うことが推奨されています。では、ベースラインも5回程度行ったほうがよいのか?(上記理由から少なくとも2~3回はやったほうがよいと思います。)ですがさすがに、短期間に高頻度の視野検査を行うのは現実的には難しいです。しかし、期間をあけて複数回行ったとしても、それは果たしてベースラインなのか。どちらかと言うと、もし進行していたら進行と判断すべきな気もします。そこらへんがちょっと曖昧です。そして多くの人は、ベースラインの眼圧を測定して、視野データ1回から治療開始しているのではないでしょうか。(知りませんが)

つまり、ベースラインが重要と言うわりに、そのベースラインの測定方法が未記載、あいまいな可能性がある、ということです。

④は記載はありませんが、「本来そうすべきであろう」という意見です。理由は、

  • そもそも緑内障性視神経症以外の可能性がある(上述、診断が誤っている可能性)
  • その場合は進行しない可能性がある(進行する疾患の可能性もあるが)
  • 無治療での進行速度を測ることで、逆算的に何歳頃発症したのかが分かる(必ずしも必要な情報ではないが、その速度が分かれば場合によっては無治療での経過観察でもよい場合がある)
  • 点眼にて眼圧が下がって進行速度が下がっていたら治療効果がありと直接的に判断できる
  • 逆に無治療での進行速度が分からなければ、それが点眼での効果か判断できないはず(点眼してなくても進行していなかったかもしれない)
  • そもそも進行速度が遅いのであれば、年齢等考慮して無治療でもよい場合もある

以上のような感じです。点眼の効果が判断できなくとも視野が保たれていればよいという考えは、確かに患者さんの視野は保たれますが、過剰医療に通ずるところもあると思います。また、「視野進行は最低5回以上の検査結果から判断する」ということに関して、おそらく多くの施設で視野検査は多くても4-6か月に1度程度の頻度だと思います(知りませんが)。つまり5回行うのに、2年近くかかるんですよね。勿論急激な悪化があれば、1-2カ月後に再検することもあります。しかし通常の判定は、2年越しということです。結局視野進行判定するのに2年かけるのであれば、一番最初に初期の無治療での進行速度測ってからでもよくないですか?

勿論④のようにして、無治療での視野フォロー中に視野が進行し見にくくなった場合の責任はその医師にあるので、ガイドラインがある以上ガイドラインに従ったほうがよいとは思います。ただ、視野進行の速度に注目するのであれば、本来はこういうことだよねって思いますけどね。一方で、緑内障点眼の離脱率の高さからも、患者さんは不要な点眼はしたくないのも事実です(一方、医師の言い方のせいか、点眼しないと失明すると信じ込んでいる軽症の緑内障の高齢者もよく見ます)。ガイドラインはあくまでガイドラインなので、患者さんと相談してその人に合わせた方針を検討するとよいと思います。まぁ面倒くさい場合は決まったやり方のほうが楽だと思いますが。

ただし先ほども述べたように、視野狭窄が高度な人や進行リスクが高い人には、ベースラインを測っている間に進行させるより、進行させないように治療を開始したほうが本人にとってもよいので、場合によっては治療を始めます。

また、基本的に緑内障を周辺視野から障害されますが、中には黄斑線維束が早期に障害されて自覚症状が出る人もいます。そのような人はベースラインフォロー中に自覚が悪化する場合もあり得るので、本人と相談の上、治療を早めに開始してもよいと思います。ただしその場合は(それ以外の場合も含みますが)、治療開始後の視野フォローで、長期間進行傾向がないのであれば一度点眼中止も考慮に入れるべきだと思います。(中止に関してもガイドライン上も記載あり)

一般に「緑内障治療は生涯続けるもの」と眼科医に認識されていると思います。それが本当に緑内障で視野が進行しているのであれば、それは正しいです。しかし、本当は緑内障ではなかったパターン、進行がゆっくりでその人が生きているうちにどう考えても視野障害で困ることがない場合は、やめることも考慮してもよいのではと思います。

まとめ

  • 緑内障で眼圧は大事だけど、一番大事なのは視野
  • 視野に着目し、それが悪化しているのであれば眼圧に注目する
  • 緑内障以外でも視神経乳頭萎縮、陥凹、網膜菲薄化は起こる
  • 診断してもすぐに治療を開始してはいけない(ベースを測定する)
  • 重症例ではその限りではない
  • 「緑内障治療は一生続けなきゃいけないもの」とは限らない

緑内障は本当にしっかり治療できている人とそうでない人がはっきり別れると思います。ベースラインすら測られていない患者も多いし、緑内障じゃなさそうな視神経萎縮に永遠と点眼を出されている人もいます。(自身がしっかりできているかは別として)

緑内障は失明原因の第一位ということはほとんどの眼科医が知っているし、そのことを説明する場合も多いと思います。しかし、そう言うわりに自分はまともな治療ができていないパターンが往々にしてあると思われます。それらは後任の眼科医が見て初めて分かるのであり、そういう目で見ない限り、曖昧な治療が蔓延してしまうと思います。

そしてそうならないようにガイドラインを制定しているので(あまり眼科領域でここまでしっかりしたガイドラインって少ないです)、基本的にはそれを参考にして治療を行っていきましょう。

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