緑内障気質*緑内障になりやすい性格は几帳面で神経質?

眼科診療の中で「緑内障気質」という用語があります。

「緑内障の人に多い性格」ということです。

どのような性格なのか?なりやすい性格があるのか?どうしてそのような性格になるのか?

など解説していきます。

目次

血液型と性格

血液型と性格の傾向があることは以前から言われています。

  • A型:神経質、几帳面
  • B型:マイペース、自己中心的
  • O型:おおらか、おおざっぱ
  • AB型:性格が理解されにくい、二重人格

引用:「血液型と性格」60万人超データで実証 「A型:神経質」「B型:自己中」「O型:大雑把」「AB型:二重人格」

もちろん全ての人に当てはまるわけではないので、血液型で人を判断するのはよくないと思います。

が、こういった傾向があるというのは、風潮からも、実際にもなんとなく感じることがあるかもしれません。

緑内障気質とは

緑内障気質とは

  • 不安
  • 抑うつ
  • 神経質
  • 心配性
  • 攻撃的

といった性質が混在しているような気質を指すことが多いようです。

このような気質の人が緑内障になりやすいのか、緑内障の人がこのような気質になりやすいのかはよくわかりません。

血液型で考えると、A型気質が似ているように思えます。A型が緑内障になりやすいというデータはあるのか知りません。

目が見えないと毎回訴えが強く落ち込みが激しい:対策は?|眼科 62巻 4号 pp. 339-344(2020年04月)

緑内障のリスク因子

一方で、緑内障診療ガイドライン第5版によると、危険因子としては以下のものがあげられています。

  • 高眼圧:ベースライン眼圧が高い、経過中の平均眼圧が高い、眼圧変動が大きい
  • 高齢
  • 家族歴
  • 陥凹乳頭径比(cup‒to‒disc ratio:C/D 比)が大きい、視神経リム面積が小さい
  • 乳頭出血
  • 乳頭周囲脈絡網膜萎縮(peripapillary choroidal atrophy:PPA)β域が大きい
  • 角膜厚が薄い
  • 角膜ヒステレシスが低い
  • 眼灌流圧が低い
  • 拡張期・収縮期血圧が低い
  • 2 型糖尿病
  • 落屑症候群
  • 薬物アドヒアランスが不良

性格に関するところは、最後の「薬物アドヒアランスが不良」が関係してきます。「2 型糖尿病」は糖尿病の人の性格という点もあるかもしれませんが、直接言及しているのは「薬物アドヒアランスが不良」のみです。

「薬物アドヒアランス」とは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味します。それが不良であるということは、指示通りに服薬・点眼治療が行えていない状態を指します。

これは緑内障気質とされる神経質で心配性な人からしたらあまり考えられません。緑内障歴が長く理解がある人ほど、点眼治療はしっかりされている人が多い印象です。

したがってここにあがっているアドヒアランスが不良という性格は、緑内障気質とは異なると考えらます。

緑内障気質は緑内障になったらなりやすくなる?

以上からは、「性格的に緑内障になりやすい人がいる」というわけではなく、「緑内障になったらそういう性格に変化しやすくなる」と考えるほうが正しいと考えられます。

なぜ、緑内障になると不安、抑うつ、神経質、心配性、攻撃的な性格になりやすいのでしょうか?

それは、将来が心配だからです。

緑内障は治癒はせず、治療をしても悪化のスピードを抑えることしかできません。日々できることは目薬をさすことだけで、目薬をさし続けたからといってよくなったと実感することはありません。むしろそれでもゆっくり悪化していくことも多く、眼科検査の時期を待ちながらひたすら点眼するしかない病気だからです。

だんだん見にくくなっている気がする

視野がせまくなっている気がする

と毎回仰る人は結構います。視野検査上まったく進行していないような状態でも。これは、それだけ治療効果が体験できず、その中で永遠と指示通りに点眼をするしかない辛い病気だからです。

もちろんこれも、全員が全員というわけではありません。ただし疾患の性質上、患者さんも神経質になって細かいことを聞いてきたり、不安になったり、さらには攻撃的な発言をしてくる人もいます。(もともとの性格の可能性もありますが)

緑内障気質になりやすくなる原因

病気の特性として、心配になりやすいことをお伝えしました。ただし別方面からの要因もあると思うので記載します。(重複する内容もあります)

緑内障は失明原因の第1位であること

よく、緑内障は中途失明疾患の第1位と言われます。もともと見えていた人が、失明してしまう原因の1位ということです。(正確には失明ではなく、視覚障害者としての手帳取得率の第一位です。)

もともと見えていた目が、両眼とも見えなくなってしまうこと

当たり前ですが、ものすごい恐怖だと思います。なんとしても避けたいと思いますし、避けれるのであれば治療はできるだけしっかりと行いたいと思います。(その人の性格にもよりますが)

緑内障は改善しない病気であること

緑内障は治療によって悪化を遅らせることしかできず、悪くなった分は回復はしません。

つまり、日々悪化していくかどうかを点眼治療を行いながら見守っていくしかないということ、明らかに自覚症状がよくなるということはないこと、治療をしていても緩徐には進行することが多いため、その悪化具合に怯えて生きていかなくてはならないこと

という、この病気の特性です。

医者の説明の仕方の問題

個人的にはこれもあると思います。

「点眼しないと失明すると言われ続けました」というように、医者から脅されるように説明を受けた過去がある人は結構います。(自経験上) 「昔医者に言われてから緑内障点眼だけはずっとしている」という寝たきりレベルのADLの高齢者とかもよくいます。

医者から「失明する」なんて言われたら、普通の人からしたら脅しに聞こえます。医学的脅迫です。もちろんその人の状態によっては本当に失明してしまうリスクが高くなんとしても治療を強く行わないといけない人もいます。

が、要は言い方です。

もちろん治療を途中で放棄されてもよくないですが、恐怖を与える必要は全くないと思うんですよね。これは昔の父権的医療のころの名残かもしれません。

気にしすぎても疲れるけど気になることは聞こう

心配なことはしっかり主治医に伝えて、その内容の返答があったほうが嬉しいし安心すると思います。しかし、心配しすぎても疲れてしまいます。

緑内障は治療介入のタイミングや、治療強化のタイミングが難しい病気でもあります。したがって緑内障を専門に診てきたことがある医者や、検査結果をしっかり確認して説明もある程度してくれる医者のほうが通院していて絶対安心します。

自分が緑内障で眼科にかかるなら、雑な説明や軽い感じの説明をする医者だったら変えてほしい、病院を変えたいと思うでしょう。

とは言え無駄に心配しすぎても労力がかかるだけですので、病気のことをはっきり伝えておきます。

  • 緑内障は治りません!悪化するスピードを抑えることしかできず、それが治療で、治療してもよくなった実感はありません
  • 視野検査が重要です!視野検査が悪化していなければ緑内障は悪化していないと言えます
  • 眼圧が参考となります!眼圧が低いと視野の悪化スピードが抑えられやすいです
  • 視野が全く進行していなければ点眼を減らせる可能性もあります(減らさない医者が多いですが)
  • 点眼で効果不十分なときは手術もします!ただし手術しても回復した実感はありません、むしろ手術の影響で一時的には見え方は悪化することが多いです、手術してよかったと実感することも少ないでしょう

1度のデータを気にしすぎても仕方ない?

緑内障の人は眼圧を非常に気にします。

眼圧は受診の度に簡単に測れる検査であり、緑内障の状態の指標の一つになります。

ただし、眼圧は心臓が拍動するごとに変動していますし、朝か夕方か夜かといった時間によっても変動しますし、季節によっても変動します。

そのときの眼圧の数mmHg程度いつもと違っていても、そこに大きな意味はありません。

視野検査が重要と言いましたが、視野検査も前回と今回でまったく同じ結果になるようなことはほぼありません

前回よりうまくできたか(よい結果)、うまくできなかったか(悪い結果)の2択です。視野検査をしたことがあればわかると思いますが、5-10分程度集中して行う必要があります。結構疲れます。その日の体調によっても、悪い結果にもよい結果にもなり得ます。

したがって、前回より今回が悪い結果だったからと言って、この1回だけで悪化したとは判定しません。

つまり、今回結果が悪かったからといって、これも同様に落ち込み過ぎる必要はないのです。ただし今回の悪い結果が、次回も同じくらい悪かったりもしくはそれよりも悪かったり、その次の検査もさらに悪くなっていたりする場合は、悪化している可能性が高いと判断します。

その判断までに何回か検査をしていく必要があるため、対応が遅い医師だとそれまでに緑内障がいくぶん悪化してしまうことがあります。逆に心配性ですぐ対応する医師だと、1回の結果で悪化しているかどうか定かではない(悪化していない可能性もある)状態で治療強化され、点眼回数が増えたり医療費の負担が増えたりします。

緑内障はそういう意味で、治療が難しく、患者さんが神経質になりやすいことも仕方ないのですが、ある程度しっかり診れる医師に診てもらったほうがよい疾患です。

まとめ

  • 緑内障気質とは、不安、抑うつ、神経質、心配性、攻撃的などが入り混じる性格
  • その性格が緑内障をなりやすくするのではなく、緑内障になるとそのような性格になりやすい
  • 緑内障が治らない、治療してもよくなる実感がない、基本的に一生治療を続ける疾患であるから
  • 一度の検査結果を気にしすぎても仕方がない(複数回の検査結果で判断する)

眼科は全人類がなる白内障という病気があり、白内障は手術をするとたいてい見え方が改善し、手術を受けた本人もとても満足する疾患で、患者満足度が非常に高い科でもあります。

しかし緑内障には治療による患者満足度はほぼありません。しかし長期間にわたってずっと、患者さんの心配や細かい話にも日々耳を傾けながら、よくなる実感のない治療を続けないといけません。

なかなか辛い疾患なのです。

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