黄斑部毛細血管拡張症(Macular telangiectasia:MacTel)は、”マックテル”と呼ばれる黄斑疾患です。
MacTelは1~3型までありますが、日本人においては1型が最も多いです。
2型は診療ガイドラインが令和4年4月に作られていますので、詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
目次
疾患の概要
MacTel type2の特徴としては、以下になります。
type2は傍中心窩型、ともいいます。
- 日本で少なく欧米で多い
- 50-60代に多い
- 性差はない
- ほぼ全例で両眼性
- 中心窩耳側から進行すると傍中心窩全体
- 毛細血管拡張
- 網膜硝子体界面の結晶様沈着物
- 嚢胞様黄斑浮腫、網膜内の空洞所見
- 網膜深層方向へ直角に曲がって引き込まれる拡張した静脈(right-angled venule)
- 網膜色素上皮過形成、色素沈着
- 神経網膜の萎縮性変化
- 網膜下新生血管
- 網膜下出血
- 分層、全層黄斑円孔
1型は血管瘤型であり、血管瘤が原因ですが
2型はミュラー細胞の変性が病態の原因と考えられています。遺伝の関連も報告されています。
臨床所見
同上となりますが
- 中心窩耳側から進行すると傍中心窩全体
- 毛細血管拡張
- 網膜硝子体界面の結晶様沈着物
- 嚢胞様黄斑浮腫、網膜内の空洞所見
- 網膜深層方向へ直角に曲がって引き込まれる拡張した静脈(right-angled venule)
- 網膜色素上皮過形成、色素沈着
- 神経網膜の萎縮性変化
- 網膜下新生血管
- 網膜下出血
- 分層、全層黄斑円孔
を両眼性に認めます。
OCT
- 中心窩~中心窩耳側のellipsoid zoneの欠損
- 網膜外層の萎縮、内層の引き込み像
- 網膜内の空洞所見(retinal cavity)(網膜の肥厚を伴わない)
- 外層分層円孔や全層黄斑円孔となることがある
- 網膜下新生血管を生じると滲出性変化を伴う
FA
- 黄斑部の毛細血管瘤や蛍光漏出
- right-angled venule
FAF(自発蛍光)
- 正常眼:黄斑色素によるブロックにより、青色光では中心窩は低自発蛍光
- MacTel type2:黄斑色素の減少のため傍中心窩に等反射像がみられる
鑑別疾患
以下の疾患を除外した上で診断します。
- MacTel type1
- 陳旧性網膜血管疾患(網膜静脈分枝閉塞症、糖尿病網膜症)
- 陳旧性黄斑浮腫
- 治癒後の特発性黄斑円孔
- 分層黄斑円孔
- 黄斑分離症
- 放射線網膜症
- 滲出型加齢黄斑変性
- 陳旧性中心性漿液性脈絡網膜症
- 陳旧性網脈絡膜炎
- 黄斑ジストロフィ
- 萎縮型加齢黄斑変性
- 黄斑微小円孔(macular microhole)
- タモキシフェン網膜症などの薬剤性黄斑症
以下の疾患は特別記載されており、鑑別点をあげておきます。
- 陳旧性網膜静脈閉塞症
- 放射線網膜症
- 滲出型加齢黄斑変性(AMD)
- タモキシフェン網膜症
陳旧性BRVO
- 病変領域が耳側縫線を越えない
放射線網膜症
- 放射線照射歴の有無、軟性白斑、網膜新生血管、病変が広範囲
滲出型加齢黄斑変性(特に、RAP)
- 高齢、軟性ドルーゼン、reticlar pseudodrusen、PED
タモキシフェン網膜症
- 既往歴や内服歴の確認
その他、鑑別疾患に上がった疾患についての詳細ページを以下に載せておきます。
治療
- 網膜下新生血管のないものに対する確立された治療方法はない
- 網膜新生血管を合併したものには、経瞳孔温熱療法、光線力学療法(PDT)、抗VEGF薬などの報告あり
まとめ
- 黄斑部毛細血管拡張症は1~3型ある
- 日本人に多いのは1型(血管瘤型)
- 欧米人に多いのは2型(傍中心窩型)
- 50-60代に多く、性差はなく、両眼性
- 中心窩耳側~傍中心窩全体の、毛細血管拡張、嚢胞様黄斑浮腫
- 確立された治療法はない
本疾患(黄斑部毛細血管拡張症2型)日本人には少なく、欧米人に多いです。
血管瘤による浮腫というより、萎縮性変化・網膜空洞(retinal cavity)という点で1型とは異なる疾患です。
コメント