網膜分離症の種類 若年性/近視性と遺伝の有無、治療まとめ

網膜分離症(retinoschisis)についての記事です。網膜分離症は大きく、若年性・先天性(遺伝性)と近視性の2種類に分けられ、病態が異なります。

先天性網膜分離症(X-linked juvenile retinoschisis: XLRS)

近視性網膜分離症(通常の、retinoschisis)

目次

概要・病態

網膜分離とは、網膜の内層と外層が分離した状態、すなわち網膜内で網膜が分かれてしまっている状態を指します。

網膜剥離では網膜視細胞層が網膜色素上皮から剥がれているのに対して、網膜分離では網膜内(外網状層、内網状層)で分断されている状態です。

遺伝性の頻度は5000-25000人に1人

・google画像検索「近視性網膜分離症」「若年性網膜分離症」(㊟目の画像が大量に出てきます)

近視が強い「近視性」、近視は少ない「若年性」なので、OCTの黄斑部の陥凹が2つは大きくことなります。近視性では凹んでいて、若年性では平坦が多い。

原因

若年性(遺伝性)と近視性に大きく分けられます。

若年性(遺伝性)

若年性は遺伝性疾患であり、X染色体潜性遺伝(劣性遺伝)の型式で遺伝します。X染色体は男性に1つ(男性はXY)、女性に2つあり(女性はXX)、Xが2つある女性は正常のX染色体により打ち消されるため通常発症しません。つまり、基本的には男性のみに発症します。

性染色体:男性XY、女性XX

X連鎖性遺伝:Xに異常遺伝子がある

X連鎖性劣性(潜性)遺伝:女性XXのうち1つの異常では発症しない。XXのうち2つとも遺伝子異常があれば発症する。男性XYのうちXに異常があれば発症する。患者は男性が多い。

X連鎖性優性(顕性)遺伝:女性XXのうち1つ異常があれば発症する。2つとも異常があれば重症化する。男性XYのXに異常があれば致死的である。患者は女性が多い。(男性は死亡するため)

遺伝については下記サイトが分かりやすいです。

X染色体上のXp22.2に位置するRS1遺伝子異常が原因で、患者の90%以上で同定されるようです。その遺伝子がコードする蛋白質retinoshisinは網膜視細胞内節、双極細胞で生成され、細胞接着やシナプス形成に関与しますが、その異常のため網膜内に分離が生じるようです。近視とは関係がなく、屈折は多くは遠視よりとなります。

近視性

近視性網膜分離症は、近視性牽引黄斑症とも呼ばれ、近視が関与します。通常の近視では発症はしにくく、強度近視(眼軸が非常に長い)、後部ぶどう腫のある近視眼に発症しやすいです。

眼軸が伸びることで網膜は後方に進展し引っ張られますが、硬い基底膜である内境界膜があることで網膜内層にはそこに留まろうとする力が働くため、結果的に網膜は後方に引っ張られつつ、相対的に前方にも牽引力が働き、網膜内で分離が生じます。硝子体皮質が残っている例(後部硝子体剥離が起こっていない例)、網膜前膜がある例などでは前方への相対的な牽引力はより強くなります。

近視性網膜分離症は病因としては、近視にともなう力学的変化ですが、近視自体が遺伝性の性質も持つので(特に強度近視は)、間接的には遺伝的要因ありと言えます。

若年性が組織の変性?であるのに対し、近視性は力学的に分離する

若年性は遺伝的要素あり、近視性も間接的に遺伝性要素あり

他の原因

基本的には上記2つが疾患名としての網膜分離症となりますが、網膜分離所見を示すことは他疾患でもあります。

例えば分層黄斑円孔などの網膜硝子体界面疾患での牽引性、網膜色素変性などでも所見としては認めます。(網膜分離”症”と表現はしないと思います)

症状

  • 視力低下

視力程度の低下はさまざまで、網膜視細胞層の状態、網膜萎縮の程度などによります。

所見・診断

分離所見をOCTで確認できれば一目瞭然です。ただし上述のように、他疾患でも所見として”網膜分離”は認めることがあります。”網膜分離”はあくまで所見であり、”網膜分離症(疾患名)”は基本的には今回の内容の若年性・近視性のものを指します。

  • 網膜分離の所見(網膜内層と外層の分離)

は勿論のこと、他に以下のような所見があります。

若年性(遺伝性)

  • 眼底の車軸状変化(spoke-wheel pattern)
  • 周辺部の小口病様の金箔様反射、水尾中村現象
  • 網膜電図での混合応答で陰性型
  • 分離は次第に融合・消失し、眼底所見は多彩
  • 網膜色素上皮萎縮を呈する
  • 蛍光眼底造影で網膜内嚢胞に色素貯留は認められない

などの所見を認めます。FAGで蛍光貯留が認められないということは、そこに水成分が漏出してできているものではない、ということですね。

近視性

  • 強度近視
  • 後部ぶどう腫
  • 進行した例では黄斑円孔や網膜剥離、黄斑円孔網膜剥離など

近視性はそもそも強度近視による眼軸長が発症に関わるので、近視であることが前提です。OCTで見ると黄斑部のみが強く陥凹していることが多いです。

強度近視や後部ぶどう腫があって網膜分離があれば近視性網膜分離症

若年(男性)で近視ではないのに網膜分離所見があれば遺伝性

を疑うということになります。

治療・予後

若年性(遺伝性)

若年性(遺伝性)には、現在確立した治療法はありません。炭酸脱水酵素阻害薬の内服や点眼(→細胞内浮腫への効果期待)、硝子体手術などが有効(原理の詳細不明)とされる報告はありますが、病気の原因は遺伝子変異による網膜の異常なので、根本的な治療ではありません。

近視性

近視性は、網膜の後方への眼球の伸長による牽引と、内境界膜その他による相対的な前方への牽引が原因で網膜が分離します。内境界膜を除去することで網膜が柔軟になり前方への牽引が緩和されるため、硝子体手術での内境界膜剥離が治療となります。

牽引により網膜全層に円孔があき黄斑円孔となること、その黄斑円孔から黄斑円孔網膜剥離となる可能性があり、最悪の場合失明します。黄斑円孔網膜剥離は基本的には近視性の病態に起こるもので、通常の黄斑円孔から黄斑円孔網膜剥離へと進展することは少ないです。(放置すると円孔幅が広がって暗点が広がったり視力低下が強くなることは多いです)

まとめ

  • 網膜分離とは、網膜内で内層と外層が分離すること
  • 大きく、遺伝性(若年)と近視性(中高年~高齢者)がある
  • 遺伝性は確立した治療法はない
  • 近視性は硝子体手術が治療

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