本来、白内障手術は急ぎません。
白内障手術は基本的に予定手術で行うものです。しかし中には緊急を要してすぐに手術する白内障もあります。
今回は、早急な手術が必要である白内障について解説していきます。
白内障手術における緊急度
まずはじめに、白内障手術をする上での緊急度に関してです。
白内障は基本的に手術をすれば改善し、見やすくなるため、緊急で行う手術ではありません。
その中で緊急に手術を行う必要がある理由として
- 放置すると恒久的な視機能障害を残す場合
があります。恒久的な障害が残る目の組織としては、
- 網膜
- 視神経
があります。
どちらも神経細胞でできており、視覚情報を「網膜→視神経→脳」へと伝えていく役割があります。神経細胞が障害された場合、多少改善することがあっても後遺症として残ることが多いです。
水晶体は神経細胞でできていないため、白内障になっても手術すれば改善し障害を残すことはありません。
水晶体・白内障が原因で網膜、視神経、脳へ影響を与えうる状態が、緊急で手術を必要とする状態です。
早急に手術を要する白内障
以上のような理由から、早めの治療が必要な白内障として3つ以下にあげます。
- 急性閉塞隅角緑内障
- 水晶体融解緑内障・水晶体起因眼内炎
- 先天白内障
急性閉塞隅角緑内障
①の急性閉塞隅角緑内障は、白内障が原因で急激な緑内障発作が起こっている状態です。急性緑内障発作とも呼ばれます。
急激にくるタイプの緑内障は眼圧が非常に高い状態であり、眼圧の値にも依りますが放置すれば数日~数週間程度で失明する可能性があります。
眼圧が非常に高い状態は
- 眼痛
- 頭痛
- 嘔気・嘔吐
などの症状を起こします。
眼圧をさげるために早急な手術を要します。(白内障手術、レーザー虹彩切開術など)また、眼圧が上がっていない状態でも、リスクが高い場合(浅前房、狭隅角がある場合)は予防的な治療を行うことがあります。
水晶体融解緑内障、水晶体起因眼内炎
②の水晶体融解緑内障、水晶体起因眼内炎は、水晶体が眼内に溶け出すことで生じる病気です。
白内障術後の除去しきれなかった水晶体片が原因で生じることもありますが、進行した白内障を放置しすぎると生じることもあります。
こちらも眼圧が非常に高くなったり、眼内炎症が強く出ることで組織を損傷することがあります。
眼圧をさげるため、炎症を抑えるために早急な手術を要します。(白内障手術、前房洗浄など)
先天白内障
③の先天白内障は、生まれた当初から白内障がある状態であり、赤ちゃんの病気です。
子どもの目の機能は、外界の視覚情報が適切に眼内に入ることにより成長します。白内障があると光が眼内に適切に入ってこないため、視機能が成長しません。
白内障の程度が強い場合、早急に治療を行わないと生涯目の機能が成長しない「弱視」になります。
眼圧や炎症は関係ないため、痛みなどの症状や充血などの所見はありません。そもそも赤ちゃんなので症状を伝えてくれることはできません。
大切なのは、「赤ちゃんの瞳が白くないか」という点です。
本来、瞳は黒色ですが、白い瞳を見たときにはすぐに眼科を受診しましょう。
弱視にならないよう、早急な手術を要します。
まとめ
- 普通の白内障手術は緊急で行うものではない(白内障のみであれば手術すれば改善する)
- 網膜・神経・脳へ影響を与える可能性がある場合、早急な手術が必要(後遺症として残る可能性があるため)
- ①急性緑内障発作(眼圧をさげるために)
②水晶体融解緑内障・水晶体起因眼内炎(眼圧をさげるため、炎症を抑えるために)
③先天白内障(弱視にならないようにするために)の3つが重要
今回は医学的な面から、後遺症をできるだけ残さないような意味で早めの手術が必要という内容です。
その他にも、たとえば両眼ともに進行した白内障で普段の生活も難しい場合、見えるようなって問題なく生活できるように、社会的な意味で早めに手術を行うこともあります。
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