先天白内障についてまとめました。
白内障は本来、加齢に伴い生じる加齢性変化で、歳を取ると全員なりますが、生まれたときから認める先天白内障というものがあります。
先天白内障は治療時期が遅れると弱視となるため、早期の発見、治療が必要となってきます。(全身麻酔にて手術を行うため、検査等いろいろと進めていく上でかなり急ぐ必要があります。)
先天白内障とは?
先天性に水晶体が混濁している状態です。
他に原因がないことも多いですが、他の眼疾患、全身疾患を伴うこともあります。
白内障自体は手術により治療できますが、小児で大切なことは弱視にさせないことです。
白内障の程度によりますが、治療が遅れると形態覚遮断弱視をきたし視力が一生あがらない目になってしまいます。
瞳が白いように見えたら、早急に眼科を受診しましょう。
先天白内障の頻度
視機能に影響しないものを含めると
- 約200人に1人
認めるようです。
また、視機能に影響する、問題になる先天白内障は
- 約3000人に1人
認めるようです。
先天白内障の治療時期
- 両眼性では生後8-12週以内
- 片眼性では生後数日以内~5-6週以内
書籍、文献により理想の手術時期は異なるが、両眼性より片眼性が緊急です。
「片眼のみの白内障で6週間以内、両眼の白内障で12週間以内に手術をする」と書かれているものが多いですが、弱視予防の観点からは可能な限り早めのほうがよいです。
先天白内障の手術方法
- 通常の白内障手術同様、前嚢を切開し、水晶体を切除する(吸引のみで切除できます)
- 2歳以降で手術する場合は、眼内レンズを挿入するケースもあるが、それより幼少の場合は眼内レンズを挿入しないことが多い(眼球の大きさの問題や、執刀医の判断により異なる)
- 術後の後嚢混濁の予防のため、手術時に後嚢切除(~前部硝子体切除まで)を行う
- 小児は創口が自然閉鎖しにくいため、創部を縫合する必要がある
手術後の矯正と弱視予防
- 2歳以降でIOLを挿入した場合は、その屈折値と視力をフォローする
- IOLを挿入しない無水晶体眼で終えた場合は、なるべく早期に屈折値を測定し、完全矯正眼鏡を常用させ、屈折値と視力をフォローする
- 手術後は水晶体による調節は入らないので、そのままで測定した屈折値を使用してよい
- 児の成長に伴い屈折値は近視側に変化していくので、適宜矯正値を変えた眼鏡を処方する
先天白内障の視力予後
手術時期と獲得した視機能には以下のような記載があります。
- 両眼性
- 生後2か月以内 両眼視の獲得
- 生後3か月以内 0.8以上
- 生後4か月~1歳 0.3-0.7
- 片眼性
- 生後3か月以内 0.3-0.7
- 生後4か月以降 0.08以下
片眼性の場合はなるべく早く、両眼性の場合は、3か月以内を目安に手術をしたほうがよいと考えられます。
まとめ
- 先天白内障は白内障の程度、片眼性・両眼性で、手術までの緊急度が異なる
- 手術時期が遅れると形態覚遮断弱視になる
- 両眼性で12週まで、片眼性で6週までに手術推奨する記載が多い(が早いほうが弱視にはなりにくい)
- 視力予後は手術時期によって変わってくる
早期の手術決定もそうですが、小児科への全身疾患の有無などのコンサルト、特殊な白内障手術手技、術後の抜糸や屈折値のフォロー、完全矯正眼鏡の常用および視力の成長のフォローと適宜眼鏡の処方し直しが必要となり
手術前から手術後も成長していくまでずっと見ていく必要がある、重要で大変な疾患ですが、視力がしっかり成長していると治療を実感できる疾患でもあります。
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