いずれも水晶体の内側(嚢内)の成分が溶け、水晶体の外側(嚢外)に溶け出すことで生じます。
水晶体成分が前房内に溶け出し、炎症所見を認めるときに、水晶体起因(性)眼内炎(ぶどう膜炎)といいます。
溶け出した成分により、急激な眼圧上昇を伴う眼痛、充血、頭痛などを生じる場合を、水晶体融解(性)緑内障といいます。
水晶体融解緑内障自体は炎症所見にはあまり触れませんが、炎症所見を認めつつ眼圧も上がることも多く、どちらも溶け出した水晶体成分が原因のため、同じカテゴリーで論じられることが多いです。
水晶体起因眼内炎、水晶体融解緑内障の原因
液状化した水晶体が嚢外へ溶け出すことで生じます。
溶け出す原因としては
- 外傷による水晶体嚢の破損
- 白内障術後の残存皮質の溶け出し
- 進行しすぎた白内障の嚢内で液状化した成分が嚢外へ溶け出すこと
などがあります。
つまり、白内障手術をしている状態でもしていない状態でも起こり得ます。
水晶体起因眼内炎、水晶体融解緑内障の診断基準
明確な診断基準はありません。
上記のいずれかの原因と特定でき、それによる症状・所見を認めるときに診断します。
水晶体起因眼内炎、水晶体融解緑内障の症状・所見
水晶体の融解所見
前房内の炎症、白濁、角膜後面沈着物、前房蓄膿、毛様充血など
過熟白内障の自然融解の場合は前房中に閃輝性物質がみられることがあります。
高眼圧の所見
高眼圧、頭痛、眼痛、嘔気、毛様充血、中等度散瞳など
急激に眼圧が上がるため、急性閉塞隅角緑内障と同じような症状、所見を示します。
水晶体融解緑内障の発症機序
溶け出した成分による高眼圧を発症する機序としては、以下のものがあります。
- 前房に流出した水晶体蛋白により線維柱帯が閉塞する説
- 流出した水晶体蛋白を貪食したマクロファージにより線維柱帯が閉塞する説
- 水晶体蛋白とマクロファージの両者による線維柱帯が閉塞する説
いずれにせよ、溶け出した水晶体蛋白がそもそもの原因です。
水晶体起因眼内炎の鑑別
白内障術後の場合(残存皮質による影響の場合)は、細菌性眼内炎との鑑別が重要です。
また、細菌性眼内炎はTASSとの鑑別も大切であるため、TASSも同様に重要です。
水晶体起因眼内炎の治療
溶け出した水晶体成分が原因であるため
前房内洗浄が基本であり、水晶体が残存している場合は除去(白内障手術)を行います。
その後の保存的治療(点眼治療)としては、ステロイド点眼による消炎が大切です。
少量の残存皮質が原因である場合、保存的加療や経過観察で改善する場合もあります。
まとめ
- 水晶体蛋白が溶け出すことで生じる水晶体起因眼内炎と水晶体融解緑内障
- 外傷、白内障術後、放置しすぎた白内障などで生じる
- 水晶体起因眼内炎は眼内炎症の所見、水晶体起因緑内障は高眼圧による所見を呈する
- 両方を合併する、同様に論じることが多い
- 鑑別は細菌性眼内炎やTASS
- 治療は溶け出した成分の除去、水晶体が残存する場合は水晶体も除去する
炎症が強い場合、眼圧が非常に高い場合は早急な対応が必要な、緊急疾患です。
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