眼内炎とはその名の通り、「眼内の炎症のある目」のことをいいますが、普通は細菌感染などによる感染性眼内炎を指すことが多いです。
感染性眼内炎は重篤で、最悪失明する場合や、眼球摘出する必要がでてきます。
眼内炎の分類(感染の有無)
細かくいうと眼内炎は、感染性眼内炎と非感染性眼内炎とに分けられます。
感染性眼内炎は、細菌・真菌・ウイルスなどの感染が原因で起こる眼内の炎症です。
ウイルス性の眼内炎は、多くは特別な病名が付いているため(サイトメガロウイルス網膜症、急性網膜壊死など)、基本的に感染性眼内炎というと、細菌性眼内炎か真菌性眼内炎を指すことが多いです。
非感染性眼内炎は、感染が原因ではない、すなわち細菌・真菌・ウイルスなどが原因ではなく眼内炎症を生じている状態をいいます。自己免疫反応などによるぶどう膜炎と同じような意味だと考えてよいです。
眼内手術後に非感染性の眼内炎症として、TASSがあります。術後の感染性眼内炎との鑑別に注意が必要です。
眼内炎の分類(目の傷の有無)
外因性眼内炎と内因性眼内炎とに分けられます。
目の内部へおよぶ手術(白内障手術、緑内障手術、硝子体手術など)を行ったあとや、目に生じたケガのあとに、その傷口から感染する・目自体から感染が引き起こされることを、外因性眼内炎といいます。
一方、目に関係ない部分の感染(点滴刺入部や、心臓、肝臓などの感染症)がある状態で、細菌や真菌が血流にのって眼内へ到達し、眼内で感染症を起こしている状態を、内因性眼内炎といいます。
目の手術や外傷歴・病歴がなく、眼内炎を起こしている場合は、身体のどこかに異常がないか、採血検査やCT検査など全身の検査をする必要があります。
目の手術後はその傷口から外因性眼内炎になる可能性があるため、白内障手術などの同意書には眼内炎のことが記載されています。
眼内炎の恐ろしさ、後遺症など
一般の人が知る機会としては、白内障などで目の手術を受けるときです。
内眼手術の同意書には、合併症の一つとして眼内炎はほぼ間違いなく記載されています。白内障手術、硝子体手術、緑内障手術などの手術同意書に必須で記載されています。
なぜほぼ確実に記載されているかというと
眼内炎は非常に重篤で、重大な後遺症や最悪失明するリスクのある合併症だからです。
眼内炎が起こる確率は、内眼手術の数千件に1件程度、と言われておりそう頻繁に起こるものではありません。しかし、稀には起こる合併症です。それなりに手術をしている医者であれば、ある程度は経験していることが多いと思います。
眼内炎は感染した菌などの種類によりますが、悪いものでは数時間するとものすごく悪化する、かなり緊急性の高い病気です。
起こる確率はかなり低いですが、起こってしまうことはあり、非常に重症な合併症であるため、必ず手術同意書には記載されているわけですね。
眼内炎の治療
原因菌に対する抗生剤治療が基本です。
ただし、基本的には時間単位にどんどん悪化していく重篤な病態であるため、原因菌が何か調べる前にさっさと治療を開始します。
抗生剤は点眼・硝子体注射などを行うこともありますが、抗生剤を眼内に浸透させつつ原因菌を取り除いた方が根本的な治療で手っ取り早いため、当日即座の緊急手術となることが多いです。
手術の際に眼内に灌流させる液体に抗生剤を混ぜつつ、硝子体手術を行うことが一般的です。(対応は施設などにより多少異なることもあります)
眼内炎の予後
網膜にどれだけの障害が及んだかで後遺症の程度は変わってきます。
風邪を引いた後に時間が経てば治るのと同じように、眼内炎も適切に治療され時間が経過したあとは、感染・炎症は収まります。
ただし手術直後は強く炎症がでやすいため、長期間・根気強く治療を続けていく必要があります。もちろん感染力のほうが強い場合は、勢いが収まらないこともあります。
手遅れになった眼内炎の対応
感染が眼球全体に非常に強く及んでいる場合、眼内が菌だらけで埋まっているような状態では、上記手術でも回復が難しいです。
そのような場合は、感染が目を超えて顔や脳などに波及しないように、眼球自体を取り除く手術をすることがあります。(眼球摘出、眼球内容除去など)
その場合は、目自体がなくなり、必要に応じて義眼を作成します。
患者さんが気を付けるべきこと
目の手術後しばらくは、目および目の周囲を触らない、こすらない、目にゴミや汗が入らないようにしてください。
これらを守っていれば、眼内炎にならない、というわけではありませんが
これらが守られていないと、眼内へ菌が入りやすくなるため、眼内炎のリスクが上がる可能性があります。
具体的に何日間という決まりは明確ではないので、主治医に確認しましょう。
まとめ
- 眼内炎は非常に重篤な病気
- 内眼手術後に数千件に1件程度で生じる
- 治療は早急な抗生剤治療+手術
- 手遅れになると目を取り除く手術となることがある
- 白内障手術後などの早期は直接目に触らないように
眼内炎は、眼科医も非常に嫌だと思う病気の一つです。
患者さんの目の状態をよくすることを目標に手術をしたのに、眼内炎によって以前より悪くなってしまう可能性があるからです。また非常に緊急の病態であり、早急に対応する必要もあります。
非常に一般的に行われている白内障手術にも、この恐ろしい眼内炎を起こす可能性があるということを忘れないでいただければと思います。加えて言うと、屈折矯正(主に近視矯正)の自由診療の手術、ICL挿入も同様に眼内にレンズ挿入するため、発生する可能性があります。
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