義眼まとめ 適応、手術、取り扱い、費用、保険

義眼は主に、事故や病気により、眼球を取る手術(眼球摘出術、眼球内容除去術など)を行った後に、整容面の目的で挿入します。

義眼は補装具の1つです。

目次

義眼の主な目的

  • 整容面での精神的苦痛、社会的ハンディキャップを減らし和らげるためのもの

眼窩に義眼を入れておくことで眼窩、眼瞼などを位置を正常に近い形で保つための意味もあります。小児においては成長に合わせて顔面の骨も大きくなりますので、そこに義眼を入れることで顔の形が左右でズレが小さくなる効果があります。また、長期間義眼を入れていないと瞼が垂れ下がって後の義眼挿入が困難となることなどもあります。

義眼の対象

基本的に失明している状況(もしくはそれに近い状況)が対象となります。

  • 眼球摘出後、眼球内容除去術後の無眼球
  • 眼球ろう、角膜混濁、先天小眼球、先天無眼球など

病気、事故などによる眼球摘出後、眼球内容除去後だけでなく、眼球を取っていなくても使用することはあります。

小児で眼球摘出が必要となる疾患としては、網膜芽細胞腫が有名です。(時期によっては手術はせず眼球を温存し、化学療法などを行います)

眼球摘出や眼球内容除去はただ失明しているだけでは普通行いません。失明しているだけでなく、そこから病気が波及する可能性があるもの(例えば感染症)や、失明していて目の視機能としての役割を果たせていないのに目の痛みが酷い場合などです。悪性腫瘍では失明していなくても全身への転移を防ぐために眼球摘出をする疾患もあります。

義眼の費用

  • オーダーメイドは10万円前後
  • 各種保険の対象となり、一部補助が出る
  • ただし医療補助がでるのは眼球摘出・眼球内容除去術後

こんな取材記事もありました。

片目では障害と認定されず…『片目失明者』が抱える悩みと金銭的負担 義眼を「美容目的」とされる場合も

片目失明だけでは視覚障害における障害者手帳の交付対象にはなりません。一方で眼球摘出をしていない場合だと、医療補助は受けられません。つまり障害者総合支援法、健康保険での補助は対象外となります。ただしこの場合、労働者災害補償保険法で対応できるのでは?と思うのですがどうなのでしょう。

義眼の取り扱い

  • 1日1~2回、取り外して洗浄する
  • 1年に1度、義眼専門家による義眼のチェックを推奨
  • 耐用年数は2年

義眼をずっと入れたままの方がたまにいますが、目やにがベタベタでくっついているような状態になっており、整容面でも意味が少ないように見え、そこにどんな耐性菌がいるのだろうかなどと思うと、なかなか恐ろしいです。可能な限り清潔にしましょう。また耐用年数は2年で、補助対象であれば2年ごとに補助がでます。

義眼の対象年齢

  • 何歳からでも(年齢制限なし)

先天性の場合は子どもの頃からでも使用します。

義眼の種類

  • 有窓義眼・・・手術後に浸出液の排出をさせるための穴の開いた義眼(目の見た目にはなっていない)
  • レディメイド義眼・・・既製品の義眼
  • オーダーメイド義眼・・・ひとりひとりに合わせて設計する義眼

義眼と義眼台のイメージ

義眼はボール状ではない

義眼というと、目を取ったところに入れるものなので、球体を思い浮かべるのが普通かもしれません。

しかし実際は、義眼は球体ではなく、薄い皿状の形になっています。(厚めのコンタクトレンズのような形)

眼球を取る手術(眼球摘出術、眼窩内容除去術)では、眼球を取ったままにすると眼窩の凹みはかなり大きな状態となりますので、基本的には手術の際に土台となるボールを挿入します(義眼台)。その上にかぶせるようにして、義眼を乗せるというイメージです。

以下でイラストを用いて説明します。

以下の画像は、広島県医師会ホームページのものより引用、改変。

眼球摘出術後

結膜を切開し、視神経、外眼筋の切断し、眼球を取り出します
筋肉は切断すると収縮して目の奥の方へ縮んでいきます
レジン球を入れ、結膜で覆います
義眼床に義眼を入れて完成です(術直後は有窓義眼を入れます)

眼球内容除去術後

強膜を切り開いて中身を取っていきます
強膜がある分、スペースは狭いのでレジン球も小さいものを入れます
義眼床に義眼を入れて完成です(術直後は有窓義眼を入れます)

実際には手術直後には、有窓義眼という透明で穴が開いている義眼を入れます。目の見た目にはなっていません。術直後は浸出液が排出されるのでそれが溜まらないように穴が開いています。目の見た目の義眼を希望される場合は術2週間以降頃から作成を検討します。

  • 義眼床:義眼を挿入するスペースのこと
  • 義眼台:眼球摘出、眼球内容除去術後に眼窩内に挿入されるボール状のもの。PMMA製のレジン球が一般的に使用されるが、厚生労働省から認可を受けた義眼台は存在しない。

義眼をしない選択肢

補助が出るとは言え、義眼は費用がかかるのと、メンテナンスも必要です。(しない人もいますが)

人によっては義眼は作らなくてよいという人もいます。

特に見た目を気にしていない人はそのままの状態で生活している人もいれば、アイパッチ・眼帯をして過ごしている人、濃いサングラスをかけて過ごしている人などいろいろいます。

ただし、瞼の機能は落ちてしまって、基本的には垂れ下がってしまっています。見た目が気にならない人なので、問題はありませんが、義眼床がつぶれてしまっているので、後々義眼を挿入することが難しくなります。

義眼youtuber

義眼少女ぴぴる

たまたま義眼について調べていたら見つけました。1年以上更新されていないようです。義眼を外している動画もあるため、【閲覧注意】というタイトルになっています。

まとめ

  • 義眼は整容面を”普通らしく”させるためのもの
  • 子どもの場合は義眼を入れることで入れないときより顔の形の成長のバランスがよくなる(と言われています)
  • 義眼は1日1回洗浄し、年1回程度はメンテナンスを推奨

自分とは姿・形が異なるものを、ヒトは怖がります。日本人は特にその傾向があるのではないでしょうか。

したがってそういった社会的な問題から整容面を”普通らしく”させることが義眼の目的です。

勿論、義眼をしていないと顔の成長のバランスが悪くなるなどもありますが、それも結局は整容面を普通らしくさせるために義眼をする、という意味では同じことかな思います。

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