ステロイド眼合併症の3つ 白内障、緑内障、網膜剥離←!?

ステロイドによる眼合併症についてまとめました。眼科医の人は皆知っていますので、眼科以外の医療関係者(主に医者)に知っておいて欲しい内容です。

ステロイドは強い消炎作用を持つ薬剤であり、さまざまな疾患に用いられる一方、合併症も非常に多く、特に免疫抑制は易感染性を生じ重篤な感染症を起こす可能性があり、注意が必要です。

ステロイド使用は眼科的にも合併症を引き起こすため、使用時には眼科受診が勧められます。特に、影響が強く出やすい小児、大量のステロイドを使う際には要注意です。

目次

ステロイド眼合併症 3選

有名なものおよび重篤な合併症をあげておきます。

  • 白内障
  • 緑内障
  • 網膜剥離(滲出性)

3番目の網膜剥離はかなりレアですので、そういうことも起こし得ると頭の片隅にあればよいかと思います。

今回の話はステロイドの全身投与(内服や点滴)による合併症です。ステロイド点眼・軟膏などの局所治療による感染症(細菌性、真菌性、ウイルス性)などは省略します。

白内障

ステロイド使用における眼合併症の白内障は有名です。

基本的には用量依存的で、長期間に大容量のステロイド内服を続けているとリスクが上がり、許容量を超えるとほぼ必発します。

投与を始めて短い期間では発生することはほぼありません。

白内障の分類としては、後嚢下白内障を生じることが多く、強い視力低下を引き起こします。

白内障は通常は加齢性変化であるため高齢者に起こりますが、ステロイドによる白内障は用量依存的なので、長期間に大容量のステロイド内服を続けている場合、小児にも白内障を生じます。

白内障自体は基本的に手術をすれば改善し、下がっていた視力も回復します。ただし小児の場合は手術がやや難しくなったり、行うにしても全身麻酔下での手術となります。(通常、白内障手術は局所麻酔・意識下麻酔です)

また、あまりみないですが、白内障になった年齢がおおむね5歳未満だと、弱視になる可能性もあります。

こどもの視力は「年齢×約0.2」のペースで成長しますが、成長しきる前にその成長が遮られるとそこで視力が止まってしまい、以後視力が上がらない状態(弱視)になります。

・ステロイド白内障は晩期合併症である(初期にはならない)
・ステロイド白内障はステロイド投与総量が多いと必発する
・後嚢下白内障となり強い視力低下を起こす
・手術すれば改善するが、小児の場合は手術が難しくなる可能性がある
・乳幼児に白内障ができると弱視のリスクが上がる

緑内障

ステロイドで緑内障が生じることも有名です。

緑内障の原因は眼圧です。ステロイドによって眼圧が上がることで、緑内障を生じます。

ステロイドによる眼圧上昇は、年齢や用量にも依りますが、ステロイド投与開始して2~4週間程度で起こります。したがって大量のステロイド治療を開始する場合は、開始後遅くとも1か月以内に眼科受診をしたほうがよいです。

眼圧の上昇が非常に大きいと、緑内障の進行も早くなります。また、ステロイドの投与量が多いほど、眼圧が上昇しやすくなります。ステロイドによる眼圧上昇は、休薬によりある程度改善することが多いですが、眼圧が高かった間に受けた障害は改善しませんので、ステロイド使用中の眼圧には気を使う必要があります。

具体的に何mg投与から眼科受診が必要かという明確な基準はありませんが、プレドニン換算で10mg以上を開始する場合は眼科受診をお勧めいたします。また小児はステロイドによる眼圧上昇が起こりやすいため、より注意が必要です。

ステロイドによる眼圧上昇に伴う緑内障は、分類としては続発性緑内障となります。

・ステロイドにより眼圧が上昇する
・小児、大量ステロイド使用の際はリスクが上がる
・眼圧上昇は数週間後から起こりやすくなる
・ステロイドによる眼圧上昇は可逆的だが、その際に受けた視野障害は不可逆的

滲出性網膜剥離

稀な合併症ですが、ステロイド使用により網膜剥離を引き起こすことがあります。

一般に認識されている網膜剥離は、”裂孔原性網膜剥離”であり手術が必要ですが、ステロイドによる網膜剥離は異なります。

網膜剥離は、

  • 裂孔原性網膜剥離
  • 滲出性網膜剥離
  • 牽引性網膜剥離

の3つの分類がありますが、ステロイドによる網膜剥離は滲出性網膜剥離であり、ステロイド使用により、血漿成分が網膜下に漏出することで起こります。

滲出性網膜剥離を起こす疾患として、多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE)というものがあります。MPPEはCSCの劇症型として知られます。ステロイドによって起こり得る網膜剥離として眼科医には有名ですが、その他の医療者にはまず知られていない合併症です。

詳細は下記を参照してください。

・ステロイドで滲出性網膜剥離を起こすことがある
・網膜剥離は強い視力障害や後遺症を残すことがある

・ステロイドによる滲出性網膜剥離の治療はレーザーが基本
・ステロイドの休薬・減量も重要

眼科を受診すべきタイミング

上述のように、ステロイド使用に際して眼合併症も引き起こす可能性があるため、眼科受診は必要です。ではどのタイミングで受診すべきかというと、ステロイドによる眼圧上昇がもっとも重要で注意が必要であり

  • ステロイド開始後遅くとも1か月以内

の受診を勧めます。

ステロイド白内障に関しては早期に起こるものではないため、ステロイド開始時の所見として白内障はほとんど気にしていません。長期間フォローしていくうちに視力低下が出てきたらステロイドの影響を考慮する程度で、必要に応じて手術を検討するだけです。

また、頻度は低く稀ではありますが、網膜症(多発性後極部網膜色素上皮症)・網膜剥離を引き起こすことがあります。こちらに関してはリスク因子はあるにせよ最初から予想するような合併症ではないため、眼科受診の際に見つかった場合はステロイド使用の減量・変更を検討していただければ幸いです。

ステロイドによる重大な網膜剥離を引き起こす可能性がある、ということを知ってもらえれば幸いです。

まとめ

  • ステロイド眼合併症は、白内障、緑内障が有名
  • ステロイドにより稀に網膜剥離を起こすことがある
  • ステロイド使用開始時、遅くとも1か月以内に眼科受診を推奨

多発性後極部網膜色素上皮症(MPPE)を生じるとレーザー治療をしても、ステロイド使用が続くと結構再発します。

強い視力低下を引き起こしますし、重症例で網膜剥離が程度が強いと失明もしますので、「ステロイド網膜剥離」という強いワードで説明すると分かりやすいかもしれません。

ステロイド白内障、ステロイド緑内障、ステロイド網膜剥離ですね。

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