ドライアイ診療ガイドラインをもとに、ドライアイ治療薬の効果・推奨度などをまとめました。
ドライアイ治療 エビデンス比較表
特に効果的なのは以下の4つで、以下のような特徴があります。
- ヒアルロン酸 →安い、処方しやすい
- ジクアス →ヒアルロン酸より有効
- ムコスタ →ヒアルロン酸より有効
- 涙点プラグ →ヒアルロン酸より有効
個別の評価の詳細は以下で記載しています。
ドライアイ治療 詳細
ヒアルロン酸点眼
自覚症状、涙液の安定性、角膜障害を改善する
- 推奨の強さ:強い「実施する」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
重大な有害事象はないが、涙液安定性への効果は軽度である。
涙液の安定性にヒアルロン酸の濃度による違いはなかった→0.1%より0.3%が効果的だとはいえない
人工涙液点眼
自覚症状を改善する
- 推奨の強さ:弱い「実施する」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
重大な有害事象はないが眼表面の滞留時間が短く、頻回の点眼が必要となり、眼表面の影響や患者負担がある。
副腎皮質ステロイド点眼
フルオロメトロン、リンデロンなど
自覚症状、涙液の安定性を改善するが、眼圧上昇に留意が必要
- 推奨の強さ:弱い「実施する」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
自覚症状と上皮障害には有効と考えるが、涙液安定性には有効とはいえない(?)。眼圧上昇の有害事象がある。ステロイドの種類や濃度の違いによる効果の差は明らかでない。
→低力価の副腎皮質ステロイド点眼は有効と考える
非ステロイド性抗炎症約点眼
ブロナックなど
自覚症状、涙液の安定性、上皮障害の改善に有効と判断する根拠はない
- 推奨の強さ:弱い「実施しない」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:C(弱)
有害事象の頻度は少ないものの、有効性が乏しい上に、角膜知覚の低下を引き起こす可能性がある。
シクロスポリン点眼
自覚症状と上皮障害を改善するが、日本では保険適用外であるため推奨しない。
- 推奨の強さ:弱い「実施しない」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
自覚症状、上皮障害には有効で、涙液の安定性への効果は答えが別れているが、全体として治療効果は有効。
ジクアホソルナトリウム点眼(ジクアス®)
人工涙液・ヒアルロン酸点眼よりも、自覚症状、上皮障害を有意に改善させる
- 推奨の強さ:強い「実施する」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
眼刺激が3-12%程度にあるが重大な有害事象はなく、従来治療と比べて涙液安定性に有効ではないが、自覚症状、上皮障害を有意に改善させる。
レバミピド点眼(ムコスタ®)
人工涙液・ヒアルロン酸点眼よりも、自覚症状、上皮障害を有意に改善させる
- 推奨の強さ:強い「実施する」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
味覚障害(苦味)が10-15%程度、涙嚢炎の発症に関与したという報告があり留意が必要だが、重大な副作用は認めず、効果は有効。
血清点眼
自覚症状は改善するが、涙液の安定性と上皮障害の改善への効果は明らかでない
- 推奨の強さ:強い「実施しない」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:C(弱)
有害事象はないが、自覚のみの改善であり、作成方法や保存方法、点眼瓶の汚染などに留意が必要。
涙点プラグ
人工涙液・ヒアルロン酸点眼よりも、自覚症状、涙液安定性、上皮障害を有意に改善させる
- 推奨の強さ:強い「実施する」ことを推奨する
- エビデンスの強さ:B(中)
有害事象は流涙、不快感などがあるが重篤なものはなかった、効果は強い。
ジクアスとムコスタの具体的な効果
ジクアス
- 涙液量の増加
- 分泌型ムチンの増加
→涙液面の改善により優れている、涙液量が低下した症例によい
ムコスタ
- 膜型ムチンの発現亢進
- タイトジャンクション・微絨毛の機能亢進
→角膜上皮分化促進効果がより優れている、角膜所見が悪い症例によい
TFOT
TFOT(ティーフォット)とは「Tear Film Oriented Therapy」の略で、「眼表面の層別治療」というドライアイの治療の考え方です。
ドライアイの治療の考え方、TFOTでも
- ジクアス®(ジクアホソルナトリウム)
- ムコスタ®(レバミピド)
の2つを使っておけばだいたいokであることがわかります。
ただし使い勝手の良さから臨床では、軽症例であればヒアルロン酸ナトリウムが使われることが多い印象です。
まとめ
- それなりに有効性があるのは、ヒアルロン酸、ジクアス、ムコスタ、涙点プラグ
- ジクアス、ムコスタはヒアルロン酸よりは有効性が高い
- ジクアス、ムコスタを併用すれば涙液の層別治療としてはほぼ網羅
- 臨床的には使いやすいヒアルロン酸が多用されている
- 涙点プラグはとても優秀
ドライアイは最重症例だと、角膜上皮びらん・潰瘍などを生じ、視力障害を起こし、角膜実質に混濁を残すと視力低下が残存する可能性があります。
重症例には涙点プラグの挿入も検討しましょう。
コメント