以前、白内障についてのイラスト付き説明をしました。
今回は白内障の”手術”に関してイラスト付きで記載します。
目が見える仕組みと白内障
まず基礎的なことです。
外界の光情報・視覚情報は水晶体などの目の前方の透明なところを通過して、網膜へ光が届きます。その情報を脳に伝えて、脳で見えることができています。
しかし白内障になると、水晶体が汚れて濁っていて光がうまく通過しません。網膜に光が届かないと、脳に伝える情報が入ってこないためよく見えません。
白内障手術では、濁った水晶体(=白内障)を取り除いて、きれいな人工レンズを入れることで、再度光が問題なく通過できるようにします。
詳細は以下のページを参照してください。
水晶体と周囲組織の簡単な構造・解剖
白内障手術を理解するのに大切なのは、水晶体・水晶体嚢・チン小帯の3つです。
- 水晶体はレンズの役割をしている
- 水晶体の一番外側は透明な膜・皮で包まれている(水晶体嚢)
- チン小帯はハンモックのような役割で水晶体を支えている
- チン小帯と水晶体嚢はつながっている
- 水晶体を、水晶体の中身と外側の皮と分けるとわかりやすい
白内障手術では水晶体の中身を取り除いて、その取り除いてなくなったスペースに人工レンズを入れます。水晶体嚢も水晶体の一部です。
水晶体の中身も細かく分類していくと、一番内側の”核”や、その核周囲や、水晶体嚢に一番近い”皮質”など、いろいろと名称があります。しかし手術の概要を知る上では必要ない知識のためここでは省略します。
白内障手術の超簡単3ステップ
ものすごい簡略化すると、白内障手術は3ステップです。
まず、水晶体の中身の汚れ(白内障)を取り除くため、水晶体の皮を一部取り除きます。
次に、水晶体の中身を取り除きます。
この取り除き方はやり方がいくつかありますが、現在日本においての主流、というかほとんどは、吸引機能のある機械を眼内に入れて行います。この機械が、水晶体を細かく破砕しながら吸引することで水晶体を取り除きます。破砕するときに超音波を使い、多少の眼内への悪影響を及ぼします。
最後に、人工レンズを入れます。
これで終了です。
イラストのように、水晶体嚢とチン小帯はつながっています。チン小帯が水晶体の位置を安定させています。水晶体嚢とチン小帯はつながっているため、水晶体嚢を丸ごと取ってしまうと支えがなくなり、人工レンズは固定できません。手術操作によりチン小帯が切れてしまうと、水晶体は傾いたり目の奥に落下したりします。
このようにチン小帯はとても大事な役割をしており、チン小帯の支えが弱い人(診察によってある程度判断できます)は、白内障手術の難易度が上がります。(今回説明した通常の白内障手術ではできない可能性もあり)
まとめ
- 白内障手術では、水晶体(の中身)・水晶体嚢(水晶体の皮)・チン小帯を理解する
- 水晶体嚢の一部を切り抜き、水晶体の中身を吸って、人工レンズを入れる
- チン小帯は水晶体嚢とつながって水晶体の位置を安定させている大事な組織
手術が(うまいかどうかは別として)早い人だと5分程度、普通くらいの人だと10分前後、学び始めの医師は30分前後かかることが多いと思われます。
手術は早さが全てではないですが、同じ丁寧さなら早いに越したことはありません。手術する側は努力して技術を身に着け、手術を受ける側は信頼できる医者に手術をお願いしましょう。
また、白内障手術は全身の他の手術も含めた全手術の中で、一番多い手術です。白内障は歳を取ると基本的に全人類がなる病気だからです。
白内障手術の手術時間自体も、おそらく全手術の中でトップクラスに短い手術です。(慣れた術者がやれば)
ですが、一概に「簡単な手術」とは言えませんので(最悪失明するリスクまであります)、患者さんは医師の話をしっかりと聞いた上で手術を受けるかどうか判断しましょう。
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