手術適応は誰が決める?絶対的・相対的手術適応とは

手術適応があるとかないとか、医者はそんなことを話していますが、そもそも手術適応ってなに?という話と、手術適応は誰が決めるの?という話です。

目次

手術適応とは

  • 命を取り留める
  • 身体の機能を残す
  • 身体の機能を回復させる

という意味において、手術をすべきかどうかの医療者側からの視点での判断です。

「手術適応あり」と言えば、「手術したほうが(ある程度)良いと言える」、と言えます。

絶対的手術適応と相対的手術適応

  • 絶対的手術適応
  • 相対的手術適応

なんてものがあります。

  • 絶対的手術適応は、手術をしないと命に関わる場合や重篤な機能障害が残るような場合
  • 相対的手術適応は、状況に応じて手術をするかしないかが変わってくる場合

となります。

言い換えると、

  • 手術治療をしないと命に関わったり急激に病態が悪化したり重い後遺症を残すような状態が、絶対的手術適応
  • そうでないものが、相対的手術適応

となります。

これは、命を取り留める、体の機能を残す、回復させるという意味において医療者側からの視点のみに過ぎません。

医療者側からすると

  • 絶対的手術適応→手術したほうが絶対にいいですよ
  • 相対的手術適応→どっちでもいいですよ

というイメージです。

眼科においては時間とともに進行し悪化する病気として有名なのが、網膜剥離です。

網膜剥離は網膜が剥がれて最終的には失明する病気であるため、手術はしたほうがよいです。なので網膜剥離で手術が必要な状況(場合によってはレーザー治療などでも可能)であれば、必ず手術をお勧めします。

一方、白内障は高齢者の視力低下の最たるものですが、基本的に手術をしたら見えるようになるので緊急性はありません。

放置して進行すると失明レベルで見えなくなる白内障もあります(世界の失明原因の一位は白内障)が、日本ではそこまで進行する前に手術を受ける人が大多数です。

日本においては「いつ」治療しても白内障は基本的には治せます。(非常に悪化してからだと合併症のリスクは上がります)

手術によって失われた機能(視力など)は元に戻すことができるので、医療者側からすると必ずしも「いますぐ」治療しなくてもよい病気なので、相対的手術適応となります。

絶対的手術適応は誰が見ても手術適応

生命・機能を残す、回復させるという医療者側の視点ですから、病気を知っていて、それが放置するとどうなるかの経過を知っている、すなわち一定の知識・経験のある医師からしたら、誰が見ても手術適応だと言えるのが絶対的手術適応です。

手術することによるメリットが基本的にはデメリットを大きく上回ります。

相対的手術適応は人によって判断が変わる

手術してもしなくてもいいですよ、というのが相対的手術適応です。

これは医者側も人によって手術するかどうかの判断が変わりますし、患者側も人によって手術を受けるかどうかの判断が変わります。

例えば白内障。

両眼それぞれ視力が1.0以上出ているけれど、白内障の影響でかすんで見えたりまぶしく感じて困っている人がいたとします。

  • 人によっては視力が1.0も出ているのだから手術は必要ない、と判断する人もいますし
  • 視力は良いけれど見え方で困っているから手術をするのもあり、と判断する人もいます

視力が0.3ずつぐらいしか出ていないけれど、車の運転もしないし普段の生活に困っていない人がいたとします。

  • 視力が低いから積極的に手術をするべき、と判断する人もいますし
  • 視力は低いけれど生活に困っていなければ手術しないで様子見る方針でもよい、と判断する人もいます

車の運転をする人で運転免許の視力基準に満たない人は、基本的には積極的に手術を勧めます。

実際の検査結果、本人の症状・状況、その他さまざまな点を踏まえて、相対的手術適応として手術すべきかどうかを判断するのは、手術をする医者です。

自分が手術するなら自分が判断するし、手術を依頼するならその依頼された医者が判断します。その医者によって、手術適応があるかどうかの判断は変わってくるということです。

その判断した結果に対して、患者側がどうしたいか、という話ですね。

説明の仕方で受けとめ方も変わる

医者の説明で

「手術を受けたほうがよい」と言われたら手術を受けないと大変なことになる、と思いますよね。

「手術はどちらでもよい」と言われたらわざわざ手術を受けたいという人は多くはないかと思います。

つまり、医者の説明次第で患者側をある程度コントロールできてしまいます

絶対的手術適応の場合に「手術はどちらでもよい」なんて言う医者はヤブ医者ですが、相対的手術適応の場合はどちらでもよいため、医者は自分のしたいように患者に勧めることもあります

そのような際は本当に手術を受けたほうが良いのかどうかの判断に迷うこともあると思いますが、以下の記事の方法を試すことをお勧めします。

最終的に手術を受けるか決めるのは患者側

絶対的手術適応でも相対的手術適応でも、最終的に手術を受けるかどうするかを判断するのは患者側です。絶対的手術適応だからと言って絶対に手術を受けなくてはいけないわけではありません。その後どういう経過をたどってしまうかわかった上で、治療を受けない選択肢もあります。

手術しないと命に関わる状態、手術しないと後遺症を残す状態だとしても、それでもよいという人もいます。在宅医療などでは急変時には治療はしないでそのまま看取るという方針もよくあります。

つまり、あくまで手術適応は医者側の視点に過ぎなく、その患者の状態や環境、背景を考慮した上で最終的に手術を受けるかどうかを判断するのは患者側、それに対して対応するのが医者側です。

様々な点を加味した上での絶対はない

たとえば

網膜剥離があり放置すると失明してしまう状態とします。失明させないという上では手術は必ず必要な状況ですが、その人は身体の状態が悪く、また全身麻酔でないと手術できない人だとします。全身麻酔により身体に強い負担を与え、逆に後遺症や命に関わるリスクがそれなりにあるとします。

その場合、網膜剥離の手術は絶対にすべきでしょうか?そうとは限りませんよね。メリットよりデメリットが上回ります。

身体の手術でも同様です。

放置したら命に関わることや後遺症になり得る場合、つまり絶対的に手術をしたほうがよい状態でも、手術によるリスクがそれを上回る場合、つまり手術することがより命に影響を与えうる状況の場合は、メリットよりデメリットが上回る可能性があります。

同様に放置したら命に関わる状態でも、本人・家族がこれ以上の治療を望んでいなく、自然な形を望まれている際に、無理やりにでも手術するでしょうか?絶対的手術適応である状態であっても、手術はしない形となります。メリットはありますがそもそも望んでいないパターンです。

まとめ

  • 手術適応という言葉は医者側の視点に過ぎないこと
  • 絶対的手術適応は医者の誰が見ても手術すべき状態のこと
  • 相対的手術適応は手術してもしなくてもよい状態のこと
  • 相対的手術適応の判断をするのは手術する医者であること
  • それらを受けて手術を受けるかどうか判断するのは患者側であること
  • その選択に従って医者側は治療をするだけ
  • さまざまな要因を考慮した上での絶対はない
  • さまざまな要因を考慮し、医者・患者側でよく話し合うことが重要

相対的手術適応の判断は、手術する医者の判断になります。

言葉の使い方の問題に過ぎませんが、絶対的手術適応の疾患・状態でないもの、つまり相対的手術適応の疾患の患者を、他科の医師や上司に紹介・コンサルトするときに、「手術適応かと思います。ご高診ご加療よろしくお願いします。」などと言ってしまうと

「それはこちらが判断するんだよね」となりかねないので注意しましょう。

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