目を取る手術 眼球摘出術と眼球内容除去術の違い、適応

眼科の手術で、目を取る手術があります。目の癌や感染症の波及を防ぐ目的や、視機能のない目の慢性的な痛みから解放するために行うことがあります。

目を取る手術としては

  • 眼球摘出
  • 眼球内容除去

の2つがあります。どちらも全身麻酔下で行います。

目次

眼球摘出・眼球内容除去の目的

目を取る=目の機能をなくす手術であるため、それ相応の理由がないと行わない手術です。手術する場面としては、以下のようなケースがあります。

  • 網膜芽細胞腫やその他の眼内悪性腫瘍の治療目的
  • 失明眼(もしくはそれに準ずる視機能の眼)に対する疼痛緩和目的
  • 損傷範囲の大きい眼球破裂時の眼周囲への感染予防目的
  • その他、保存的加療による治癒が見込めない眼内炎などの眼周囲への感染予防目的

また、亡くなった方からの臓器移植(角膜移植)のための眼球摘出があります。

これらをまとめると

  • 癌・感染の波及を防ぐ目的
  • 視機能のない目の疼痛緩和目的
  • 心臓死または脳死者における臓器移植(角膜移植)のための眼球摘出

が、主な手術適応となってきます。

眼球摘出術の概要(画像付き)

以下の画像は、広島県医師会ホームページのものより引用、改変。

全身麻酔下で行います。

結膜を切開し、外眼筋、視神経を切断し、眼球を強膜ごと取り出します。
十分に止血をします。
結膜の中にレジン球を入れ、結膜で覆います。
義眼床に義眼を入れて終了です。(手術直後は有窓義眼を入れます)
  • 義眼床:義眼を挿入するスペースのこと
  • 義眼台:眼球摘出、眼球内容除去術後に眼窩内に挿入されるボール状のもの。PMMA製のレジン球が一般的に使用されるが、厚生労働省から認可を受けた義眼台は存在しない。
  • 有窓義眼:義眼床を安定させる目的で入れる義眼で、孔が開いており滲出液の排出ができる。目の見た目にはなっていない。

眼球内容除去術の概要(画像付き)

全身麻酔下で行います。

強膜を円周状に切り抜いて中身(水晶体、硝子体、網膜、脈絡膜)を取り除きます。
十分に止血後、強膜内へレジン球を入れ、強膜縫合、結膜縫合をします。
義眼床に義眼を入れて終了です。(手術直後は有窓義眼を入れます)

それぞれの手術の違い・使い分け

上述のイラストにあるように、眼球摘出と眼球内容除去の大きな違いは

  • 強膜ごと取り除くか(眼球摘出)
  • 強膜を残して中身まで取り除くか(眼球内容除去)

です。

手術の使い分けについては、

  • 癌は完全に取り除くことが大切なので眼球摘出
  • 強膜に及ぶ強い感染、強膜が挫滅しているような状態は強膜で閉じれないので眼球摘出
  • 心臓死・脳死者からの臓器移植(角膜移植)目的の眼球摘出
  • その他は眼球内容除去が多い

という感じになります。

「その他は眼球内容除去多い」とは思われますが、眼球摘出でなくてはならないケースは上述のようにありますが、眼球内容除去でなくてはならないケースはないため、どちらでもよいと言えばどちらでもよいです。(施設や術者によって異なるかもしれません)

手術説明の際の注意

  • 眼球摘出・内容除去を行うことで眼球の疼痛を緩和したり、感染などの波及を防ぐ目的があること
  • 眼球摘出・内容除去を行うことで視機能は全くなくなること、元には戻せないこと
  • 眼球がなくなることで眼球があった部位がくぼみ、容姿の変化が起こること
  • 術後に義眼を装着することで容姿の変化を軽減できること
  • 眼球破裂の際は、一般的にはまずは強膜を縫合しその後硝子体手術を行うことになるが、傷が大きい場合・程度がひどい場合・感染が強い場合などには眼球摘出・内容除去を行う可能性があること

などを十分に説明しておく必要があります。

術直後は有窓義眼を装着し、その後義眼を希望される場合は義眼店・義眼外来へ行くようにしてもらいます。

まとめ

  • 眼球を取る手術には、眼球摘出術と眼球内容除去術がある
  • 眼球を丸ごと(強膜ごと)取る眼球摘出術と、強膜の内部を取る眼球内容除去術
  • 手術目的は、癌や感染症の波及の予防、眼球の疼痛緩和、ご遺体からの臓器移植(角膜移植)などがある
  • 眼球内容除去ではなく眼球摘出を選択しなければならないケースが存在する

目の機能をなくすという意味では最終手段の手術になりますし、目の機能を改善・維持させることが眼科の主目的ですが、癌や感染症、残存視機能を考慮した上での自覚症状(疼痛)が強い際に検討することがあります。

眼球摘出術|臨床眼科 74巻 11号 pp. 58-60(2020年10月)

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