白内障と緑内障、白と緑、どちらも目の病気で、どちらも病気としては違う病気ですが、実は関係があるのです。
それが「緑内障にならないために白内障手術をしましょう」ということ。
眼科医は皆んな知ってますが、一般の人だけでなく眼科医以外の医療従事者含め知ってほしい内容になります。
なぜかと言うと、このことに当てはまる人というのは、この世の中に非常にたくさんいるからです。
白内障とは
目の中のレンズの汚れです。歳をとると全員なります。基本的に老化現象です。詳しくはこちらを参考に。
白内障では瞳孔が白くなる(パターンがある)ので、「白」内障という名前になります。(茶色っぽくなるパターンもあります)
白内障は手術治療をすると治ります。手術しない限りは、治りません。
緑内障とは
目の神経(視神経)が痛む病気です。眼圧が高いことで起こります。
緑内障の「緑」の理由は、諸説あるようです。「緑内障 名前の由来」などで検索してください。
眼圧に関してはこちらを参照。
緑内障で非常に大事なことは、緑内障は治らないということ。悪化する一方の病気で、元に改善はしません。
すなわち緑内障の治療においては「悪化させないようにする」「病気が進んでいくのを食い止める」ことが大事で、そうすることが治療ということになります。
悪化させないようにするにはどうするかというと、上の記事で書いているように「眼圧を下げる」ことになります。
緑内障には大きく二つのタイプがあります。
- 慢性タイプ
- 急性タイプ
慢性タイプ
慢性タイプは、ゆっくり進行してくるのである程度病気が悪くならないと、症状がなく、自分では気が付きません。
逆に言うと、見えにくい症状が感じたときには、それが緑内障であれば、かなり進行していて悪い状態のことが多いです。
初期の段階の緑内障は、健康診断の眼底検査で異常を指摘されたり、他のきっかけで眼科を受診してたまたま指摘されるパターンが多いです。
ゆっくり進行しますが、長い時間かけて進行してきますので、元気なうちに見えなくならないように、長期的に治療をしていくことが大事です。
急性タイプ
急性タイプは、急激に起こるので症状が強いです。発作のように起こるので急性緑内障発作といいます。
起こってから症状が辛いので、病院を受診することがほとんどです。こちらも「起こるまで」は、緑内障はない状態で、異常はありません。
しかし、「起こってしまう」と急激に強い症状が起こり、進行も早いため後遺症を残しやすく、治療後も見えにくい状態が残る可能性があります。
白内障で緑内障を起こすことがある
さて、タイトルの話になりますが、「白内障が原因で→急性の緑内障発作になる」というパターンがあります。
白内障が原因なので、白内障の治療(手術)をしておくと緑内障発作の起こる可能性がほとんどなくなります。
ですが難しいことに、上で述べたように、病気が「起こるまで」は本人は何ともなく、緑内障でもないのです。
本人はまったく目で困っていることはないのに、「手術をしたほうがよい」と言われるので、しっかりと説明しないと理解が難しいのです。
理解していないのに手術をされても不満が残る可能性もあるし、放っておかれて緑内障発作を起こしたら、それこそ悲しい結末になってしまいます。
急性緑内障発作の症状
頭痛(目の奥の重い痛み)、吐き気、嘔吐、などの体調不良の症状が急激に起こります。
目の症状としては、かすんで見にくくなり、充血とやや瞳が開きっぱなしの状態になります。
しかし、本人としては頭痛、吐き気などの身体の調子が悪いことの方が辛く感じます。
頭痛がするので、よく脳神経内科・外科を受診されることが多いです。そこで異常がなかった場合に眼科へ紹介されることがあります。
そして大事なことですが、起こってしまった後は、完全に元通りには戻らず、後遺症を残します。
急性緑内障発作になりやすい人
- 高齢
- 女性
- 遠視(手元より遠くの方が見やすいタイプ)
の人に多いです。
近視(遠くを見るのに眼鏡が必要)の人には少ないです。
それぞれなぜ起こりやすいのか。
- 高齢者は白内障が進行し膨隆することで眼内のスペースが小さくなる
- 遠視の人は目が小さめなので、そもそも眼内のスペースが小さい
女性が多いのは上記二つが多いからだと思います。
要するに、目のスペースが小さい人に起こりやすいのが、急性緑内障発作です。
遠視の人が目が小さいことに関しては下記記事参照。
なぜ目が小さいと起こりやすいのか、以下で説明します。
急性緑内障発作が起こる原理
急性緑内障発作は、目の中の隅角(ぐうかく)という部分が狭くなりふさがってしまうと生じます。
正常な目では下のように、水(房水)が循環して、目の中は綺麗な水が循環し目の中の細胞に栄養が届けられます。
目の中の狭いスペースを水が流れています。隅角がつまってしまうと、以下のようになります。
完全にふさがって眼圧が急激に上がる状態が、急性緑内障発作です。
隅角がふさがりやすくなる要因が先ほど述べた「白内障手術をしていない遠視の高齢女性」になります。
白内障が進行している人
白内障は進行するとそのサイズが膨隆し大きくなっていきます。
目の中での占める割合が大きくなり、結果的に目のスペース(水晶体と角膜の間=前房)が小さくなり(前房が浅い=浅前房)、隅角が狭くなります。
そして虹彩の根本(茶色の部分)で隅角が詰まってしまうと、緑内障発作を起こします。
遠視が強い人
遠視が強い人は、目が小さい(短い)人なので、目の中のスペースがそもそも小さく、隅角も狭くなっています。
そのため、隅角がふさがりやすく、急性緑内障発作を起こしやすくなります。
逆に近視の人は目が長いので、目の中のスペースは大きくなり、隅角も広いです。
そのため、隅角がふさがりにくく、急性緑内障発作は基本的には起こしにくいです。
白内障手術をすると発症しにくくなる理由
白内障手術をすると、水晶体よりも薄いレンズが眼内に入るため、目のスペースが広くなります。
目のスペースが広くなると、隅角がふさがりにくくなるため、緑内障発作を起こしにくくなります。
従って、遠視の人、白内障が進行して大きくなっている人で、隅角が狭く前房が浅い人は、急性緑内障発作を起こしやすいため、白内障手術をしておいた方が安全なのです。
白内障手術ができない場合は、レーザー治療を行う場合もあります。(根本的な治療ではありません)
まとめ
- 白内障が原因で急性緑内障発作を起こすことがある
- 急性緑内障発作はそれまでは何ともないが、起こると悲惨である
- 白内障手術をしていない遠視の高齢女性に起こりやすい
- 白内障手術をすることでリスクがほとんどなくなる
目のスペースが小さい人が緑内障発作を起こしやすいです。
しかし、「なりやすい」というだけでいつなるかは分かりません。
しばらくの間、今まで通り問題なく生活できるかもしれませんし、明日それが起こって見えにくい生活になってしまうかもしれません。
今まで問題なく、今後もしばらく問題なく過ごせる可能性がある一方、起こってしまったら元通りには戻らない後遺症を残しうる状態、あなたならどうしますか?
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