白内障は目の中の水晶体というレンズが汚れた状態を指す病名です。
汚れ、濁りがあれば程度はどうであれ、一応は”白内障”ということになります。
今回はその白内障の汚れ・濁りの種類をメジャーなものからマイナーなものまで、また白内障が生じる原因別にまとめました。
白内障の進行度の分類
白内障の進行度として大雑把に以下のようなものがあります。
- 初発白内障(初期白内障)
- 未熟白内障(中期白内障)
- 成熟白内障
- 過熟白内障
進行度合いの表現なのであいまいです。
いろいろな眼科ホームページを参考にしてまとめると、以下のような感じになります。
初発白内障(初期白内障)
- 診察することで見つかる程度の白内障で、自覚症状がほとんどない状態
白内障手術はしなくてよいです。
未熟白内障(中期白内障)
- 目のかすみやまぶしさなどの自覚症状が出る
- 手術を一般的に勧める時期だが、生活はできるのでしない人もいる
日本ではこのタイミングで手術する人が多く、勧めるタイミングもこのタイミングが多いです。
成熟白内障
- 白濁が水晶体全体を覆った状態で、 外から見ても白く見えるほど進んだ状態
- 手術しないと視力が戻らないが、手術もリスクが高い
白くなった白内障(白色白内障)を成熟白内障と言いますね。硬さは関係なさそうなので、加齢に伴い核が硬いパターンも、外傷などによる若い人で軟らかい白色の白内障も含まれると思います。一方、小児先天白内障の全白内障を成熟白内障と言うかというと、言わなそうです。先天白内障といいますね。(後述)
この段階は、ほとんど視力を失っている状態なので、他の要因がなければ圧倒的に手術をしたほうがよいです。
過熟白内障
- 水晶体皮質が液状に溶け出し、水晶体嚢が破れて、液化した皮質が漏出することがある
- 強い炎症と痛みを起こすことがある(水晶体起因眼内炎のことか?)
- チン小帯が切れて核落下することがある
まとめると、モルガニ(Morgagni、モリガニー)白内障のような状態ですね。
Morgagni白内障:皮質が乳化し、硬化した核が液化皮質中に遊離、沈下している状態
手術の難易度も非常に高いです。合併症も十分起こり得ると考えた方がよいですが、放置しても合併症を起こす可能性もあるため、手術したほうがよいです。
白内障の原因全体の分類
白内障の種類としての分類は、大きく以下のようになります。
- 加齢性白内障・・・一般的な白内障
- 併発白内障・・・他の眼疾患に伴って発症する白内障
- 全身疾患に伴う白内障・・・糖尿病、アトピーなど
- 薬剤性白内障・・・ステロイドやフェノチアジン、クロロキン、アミオダロンなど
- 外因性白内障・・・外傷性(穿孔性、鈍的外傷)、放射線、紫外線、電撃など
- 先天白内障・・・出生時~乳幼児に生じる白内障
- 後発白内障・・・白内障術後に生じた水晶体嚢の混濁のこと
外因性白内障は勝手に分類しました。目に直接影響する外的要素が原因でなる白内障、という意味です。
白内障の主病変
白内障は目の中の水晶体の汚れ・濁りですが、濁り方として大きく以下の3つに分類されます。
- 皮質白内障
- 核白内障
- 後嚢下白内障
皮質白内障
- 日本人に多く、紫外線暴露が関与
- かすみやまぶしさを感じやすい
濁りは白いので、拡大すると全体的に非常に白い状態(成熟白内障)になります。成熟白内障は外傷などで若くても生じることがあります。
核白内障
- 白人に多く、日本人では少ない
- 近視化するが、視力は下がりにくい
核白内障の核硬化度
Emery-Little分類としてEL、核硬化度(nuclear sclerosis)としてNSなどと表記する。
- 1度 透明または乳白色で軟らかい(soft)
- 2度 白色・黄白色・緑黄色でやや軟らかい(semisoft)
- 3度 黄色で中等度の硬さ(medium)
- 4度 琥珀色、茶色を帯びた黄色で硬い(hard)
- 5度 褐色、濃い茶色~黒色で非常に硬い(rock hard)
白色白内障(成熟白内障)の核硬化度はさまざまで、若年の白色白内障は吸引のみで処理できる全く硬くないもの(1度)もある一方、高齢者では白色+茶色が混じったの非常に硬いものもある。
後嚢下白内障
- 3つの中では頻度は低いが、視力低下を強く生じる
- ステロイド使用や糖尿病、強度近視、網膜色素変性症などの人に生じやすい
Emery-Little分類は有名だが、皮質白内障・後嚢下白内障をグレーディングしたWHO分類がある。が、あまり使われていないと思われる。(手術前評価として使う必要性があまりないため)
白内障の副病変
濁り方の細かな種類として以下のものがあります。
- retrodots・・・皮質深層、そら豆状
- water clefts・・・皮質浅層、Y字縫合に沿って斜照法で黒く抜けたように存在
- focal dots・・・皮質浅層~深層の周辺部に多い、白~青色の点状混濁
- fiber folds・・・皮質浅層~成人核、白色のシワ状変化
- coronary flakes・・・皮質深層の周辺部全周・冠状に存在、棍棒状の白色混濁
- vacuoles・・・皮質浅層、可逆的
- 前嚢下白内障・・・アトピーではヒトデ型が多く、石灰化していると手術時に厄介
- クリスマスツリー白内障・・・皮質~核、結晶状の混濁、きれい
retrodotsやwater cleftsは頻度高いです。
こちらもOxford分類に程度分類があるようだが、同様の理由で使われていないと思われる。
先天白内障
狭義には生下時に存在していたもので他の要因なく生じたものを呼ぶが、広義には乳幼児に存在する白内障を呼びます。
- 全白内障・・・全体的に白い
- 前極白内障・・・前嚢中央に平坦もしくは盛り上がった1mm程度の白色点
- 核白内障・・・成人と異なり核硬化は伴わない
- 層間白内障・・・Y字縫合より周辺側の1層が混濁したもの
- 膜白内障・・・乳化した核・皮質が吸収され半透明状に残った皮質の混濁
- 後極白内障・・・生下時から存在し成人後に進行し視力低下を起こすことが多く、手術は後嚢破損がある前提で行う
- 後部円錐水晶体・・・頻度0.005%以下、後嚢が薄いため後嚢破損を想定して手術を行う
全体的に濁っている場合や、水晶体の中心の広い範囲に濁りを認める場合は、弱視になる可能性が高く、早急に手術をしたほうがよいです。
併発白内障
なんらかの目の病気があり、それに伴い生じる白内障です。
- ぶどう膜炎
- 網膜色素変性症
- 脈絡膜炎
- 強度近視
- 硝子体出血
- 緑内障
- 硝子体手術
など、いろいろあります。
若い人の硝子体手術は単独で行うこともありますが、核白内障が主に進行しやすく術後に近視化することがあります。
外因性白内障
目に直接影響する外的要素が原因でなる白内障のことです。命名は独自にしました。分かりやすいと思うのですが、この呼び名は見かけないですね。
- 外傷性白内障
- 放射線白内障
- 紫外線白内障
- 電撃白内障
などです。
有名なのは外傷性白内障で、目に傷や衝撃を受けることで生じます。直接水晶体に及ぶまでの鋭利なものでの傷は白内障は急激に進行します。水晶体内部の組織が漏れ出て水晶体起因性眼内炎となることもあります。
一方、打撲・殴打などの鈍的外傷は、ゆっくり進行しますが真っ白な成熟白内障になります。真っ白になるため、視力低下は非常に強くなります。
薬剤性白内障
代表的なのは
- ステロイド
- フェノチアジン
- クロロキン
- アミオダロン
などです。
ステロイドが非常に有名で、総投与量が多いとなりやすいです。ステロイド白内障は典型的には後嚢下白内障を生じ、視力が強く下がります。
一度進行した白内障は基本的には不可逆的で自然には治りません(視力は良くなりません)が、手術をすると改善するので白内障が理由で薬剤を中止する必要は基本的にはありません。
全身疾患に伴う白内障
これも非常にたくさんの疾患がありますので、一部記載します。
- 糖尿病
- アトピー性皮膚炎
- 副甲状腺機能低下症
など。
また、以下で指定難病の中で白内障を生じやすいものを記載しています。
白内障を合併する指定難病
- 網膜色素変性症
- 無虹彩症
- Wilson病(ひまわり白内障)
- Werner症候群(10歳前後で白内障)
- ライソゾーム病
- 神経線維腫症(若年性白内障)
- ルビンシュタイン・テイビ症候群
- 筋ジストロフィー
- アルポート症候群(後嚢下白内障)
- ペルオキシソーム病
- ファンコニ貧血
- ホモシスチン尿症
↑から有名な疾患をとってきました。他にもあると思います。
後発白内障
白内障術後、時間が経つと、人工レンズ(IOL)を固定している嚢が汚れて生じる白内障のことを言います。
- 後嚢上線維組織形成(後嚢線維化)
- ゼンメリング輪(Soemmerring’s ring)・・・嚢赤道部の半透明~白色の線維、硬い
- エルシュニッヒ真珠(Elschnig pearl)・・・カエルのたまご状、頻度高い
- 液状後発白内障・・・人工レンズと後嚢の間に白色液体の貯留、ぶどう膜炎や糖尿病網膜症に合併しやすい
基本的には外来でのYAGレーザーにて治療可能です。レーザーした直後から見やすくなったと感じる人も多いです。
まとめ
- 白内障は水晶体が汚れた状態を指す病名
- 基本的には加齢に伴い全人類がなるが、他の様々な原因でも白内障になる
- 水晶体のどこが濁ったかなどで、沢山の分類がある
ということですね。
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