不同視と不同視弱視、モノビジョンに関して説明します。
不同視とは
左右の屈折値の違いにより、右眼と左眼で見やすい奥行の位置が異なる状態で、多くは2D(ジオプトリー)以上の左右差がある場合を言います。
不同視のことは、「ガチャ目」ともいいます。(斜視のことをガチャ目と記載しているサイトがありますが、間違いです)
2Dの差
片目が正視±0Dとした場合、片目が+2Dの遠視や-2Dの近視などです。
- 正視の±0D→裸眼で遠くが見やすい状態
- 近視の-2D→裸眼で手元50cm(1m/2)が見やすい状態、遠くはぼやけて見にくい状態
- 遠視の+2D→裸眼で遠くも近くもぼやけて見にくい状態(近くのほうが見にくい)
ということになります。(調節がない状態だとして)
片方が0Dじゃなくてもよいですが、左右の差が2Dあるというのは、それなりに見やすい位置が違っているということが上の例から分かるかと思います。
結局、ピントの位置が左右で異なるとどうなるかというと、「一般的には見にくい」ということなります。
不同視の生じた年齢が重要
この左右の見やすい位置が2D以上異なる状態(=不同視)は、そのときの年齢が非常に重要です。
大人になってからの場合
不同視があると、左右の見えるバランスが悪くなることにより
目が疲れやすくなり、眼精疲労の症状(目の疲れ、肩こり、頭痛など)が生じます。
治療としてはコンタクト・眼鏡などでの度数合わせ、場合によっては屈折矯正手術(白内障手術など)を行います。左右の度数が違い過ぎると、眼鏡で矯正すると物の大きさが異なって見える現象(不等像視)が起きて、どうやっても見にくい状態になってしまう場合があります。そのような場合は、コンタクトレンズか、屈折矯正手術がおすすめです。
眼鏡とコンタクトレンズの拡大効果
眼鏡では度数が強くなると、実際の大きさよりも眼鏡を通してみると大きさが変化します。(近視なら小さく、遠視なら大きく見える)
左右の差が大きくて眼鏡で矯正すると、左右で見えているものの大きさが異なる現象=不等像視(※不同視ではありません)という現象が生じ、これもまた眼精疲労の原因になったりします。
コンタクトレンズは眼鏡より拡大率の影響を受けにくく不等像視は起こりにくいです。
一方、眼精疲労自体はさまざまな影響で生じます。例えば長時間のVDT作業(パソコンやテレビ)をする職業などでは、ドライアイとともに生じやすかったりするので、その場合はコンタクトよりも眼鏡の方がよいです。
子どもの場合
不同視の話に戻ります。子どもの不同視の方が重要です。
子どものときに、この不同視があるとどうなるかというと、
同じように、見にくいのです。
さて、この見にくい状態というのが子どもにとっては非常に良くなくて、見にくい状態があると
- 「見にくい方の目を使わなくなってしまう」
- 「見にくい方の目でで見ることをやめてしまう」
という現象が起こります。
使わなくなってしまうと、使っていない目は視力の成長が止まります。これを弱視といいます。
不同視弱視とは
左右の度数の差が強すぎると、バランスが悪くなり見えにくかったり、目が疲れたりします。
そのようなときに、人間は見やすい方の目で見ようとするため、見にくい方の目を使わなくなります。
そうすることで、見にくい方の目が成長しなくなり、結果将来的にどのようなことをしても視力が上がらなくなってしまうのが、不同視弱視です。
子どもの視力成長に関しては下記記事で説明していますが、子どもの視力は年齢×0.2-0.3程度しかありません。
それが「見る」ことにより成長し、4-5歳程度で1.0ぐらいまで見えるようになります。
その成長の過程で、不同視があると見にくい方の目が「見る」ことをやめてしまうわけです。そうすると、その「見る」ことをやめた目は、成長しなくなります。
繰り返しですが
弱視とは子どもの視力成長の時期に何らかの影響で視力が成長しなかった状態をいいます。視力が成長するのは子どもの時期だけで、弱視になって子どもの一定期間を過ぎると、二度と視力は成長しません。つまり、どんなに合う眼鏡をかけても、視力が出ない状態になります。
不同視によって弱視になったしまった場合を、不同視弱視といいます。
つまり、3歳ころに不同視があった場合、片目が順調に成長していても、片方の目の視力が0.6程度(3×0.2として)で止まってしまうということです。
なので、子どもの頃の不同視は非常に重要になってくるのです。(そうならないように、眼科での治療が必要になります)
不同視弱視は、見にくい方の目を使わなくなることが原因なので、どこにもピントが合っていない遠視の目に起こりやすいです。
逆に近視での2D以上の差がある場合は、両眼とも見える位置は違えど近くにピントは合っているので、不同視弱視にはなりにくいです。
基本的には「遠視性不同視弱視」とうことになります。
不同視弱視の治療
左右の度数に差があっても、矯正視力が良好に成長していれば経過観察で問題ありません。
視力に左右差が出ている場合、見えにくい目をあまり使っていないことで視力成長が妨げられている可能性があるため、使っていない目を使うとトレーニングが必要となってきます。
見にくい状態の目を使わなくなってしまうことが原因なので、
見にくい状態の目を見やすくしてあげて使ってもらうことが治療になります。
具体的には、眼鏡です。
眼鏡でピントを合わせてあげて、見やすい状態を作り、見にくい方でも見てもらうようにするのです。
見やすくなって「見る」ことで、視力の成長が再開します。先ほども述べたように、視力の成長する期間は限られているので、治療が必要だと判断されたら早めの治療開始が望ましいです。歳を取るごと(学年が上がるごと)に視力の改善は乏しくなっていきます。
年齢が若かったり、不同視の程度が小さければ眼鏡使用だけで視力が再成長してきます。
これでも視力の改善が乏しい場合には、見やすいほうの目を強制的につぶってもらい、見にくい方の目だけで見るトレーニングをします。
具体的には、アイパッチ(眼帯)です。
アイパッチ、眼帯などで見やすい目をふさぎ、一日数時間(視力の状態、施設などにより異なる)程度を片目で過ごします。そうすることで強制的に見にくい方の目を使わせていくという方法です。
ちなみに小さいお子さんのアイパッチは、逆にアイパッチしたほうの目を弱視にする可能性があるため、必ず眼科に通院しながら行うことが必要です。間違っても自分で勝手にお子さんの目を覆ったりしないようにしてください。
モノビジョンとは
モノビジョンとは、左右の屈折値が異なることで、片目で遠く・片目で近くを見ている状態をいいます。
不同視と同じような状態ですが、片目ずつでうまい具合に見ることができて、眼性疲労などの症状は生じていない状態として考えてよいでしょう。
見ている位置が遠くと近くで位置が異なるので、両眼がそれぞれ独立に見ている、という意味からモノビジョンといいます。
一般的には前項のように、2D以上ずれると不同視を起こしますので、差が2D未満になるような状態が望ましいです。
普通は、両眼で概ね同じくらいの奥行のところを見ているので、両目で遠く、両目で近くを見ています。両目で見ることにより、視差というものが生じ、立体的に見えます。
モノビジョンでは両目はそれぞれ違う奥行きを見ているので、立体視などの両眼視機能は弱まる可能性があります。
慣れると私生活に問題なく快適に過ごされている方も多いですが、職業上視力が大事なもの(ドライバー、細かい手作業が必要な方など)にはあまりお勧めではありません。
白内障手術では基本的に左右の見える奥行きの位置は同じ程度にしますが(=ピントが合う位置を同じくらいにする)、その場合、基本的には術後に老眼は残ります。(あえて度数をずらしてモノビジョンにする人もいます)
つまり、
- 両眼とも遠くにピントを合わせた場合、近くはピントが合わずぼやけます(老眼)
- 両眼とも近くにピントを合わせた場合、遠くはピントが合わないのでぼやけます(近視)
となり、どちらも眼鏡が必要となるのです。
ですが、眼鏡を使用したくないという人の場合、かつ多焦点レンズは使いたくないという人の場合、
片方を遠くに合わせて、片目をやや近くに合わせて、眼鏡なしで生活できているパターンもあります。
このようにして遠くと近くにピントを合わせて手術を行うことを、モノビジョン法と言ったりします。
ですが、自分なら白内障手術でモノビジョンにするよりは、多焦点レンズを使うかなと思います。(モノビジョンの見え方の良さはモノビジョンの人にしか分からない)
まとめ
- 不同視・モノビジョンどちらも両眼のピントの度数が異なる
- 不同視は2D以上の左右差があり、基本的には症状を有する状態を言う
- モノビジョンは基本的には不同視のような症状がなく、問題なく生活できている状態を言う
- 子どもの不同視は弱視(視力の成長が止まる)の可能性があるため要精査
わざわざお勧めすることは少ないですが、モノビジョンでも意外とうまく適応して楽に生活している人もいるので、そのような選択肢もあることはあります。
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