バビースモ「バイスペシフィック抗体」薬価、特徴、分子量

2022年5月25日発売となったバビースモ(一般名:ファリシマブ)ですが、その特徴についてまとめます。

眼科初の!

バイスペシフィック抗体!

が宣伝文句です。(利益相反はありません)

目次

バビースモの特徴

大きく言うと、バビースモの特徴は以下の2点です。

  • 抗Ang-2と抗VEGF-Aのバイスペシフィック抗体
  • 2つの抗体が作用することで長期間の作用効果が見込める

臨床現場においては、安全で長期間効果のある薬剤が求められます。

それを目標に作られたのがバビースモで、その目標を達するために使われた技術がバイスペシフィック抗体という技術です。

長期間効果があると、通院回数・治療回数が減ることにより

  • 患者・家族負担の減少
  • 医療者負担の減少
  • 医療費増大の抑制

という利点があります。

バビースモの名前

バビースモは商品名ですが、英語ではVABYSMOとなります。

  • V:VEGF-A
  • A:Ang-2
  • BYS:Bispecific(バイスペシフィック)
  • MO:Molecule(分子)

の語から取ってバビースモ、というようです。(雑学)

バビースモの承認疾患

  1. 中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
  2. 糖尿病黄斑浮腫

の2疾患のみです。※2024年3月末、バビースモは網膜静脈閉塞症にも適応が拡大しました。

1.に関してはどの抗VEGF薬も「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う」加齢黄斑変性と記載がありますが、そのあたりはうまくやっているのが実際だと思います。

単純に、AMDとDMEということです。

バビースモの薬価

薬価:163894

他の抗VEGFの薬価が

  • ラニビズマブ
    ルセンティス®:113702(注射キット)、142570(瓶)
    ※ジェネリックは79348
  • アフリベルセプト
    アイリーア®:137292(注射キット)、138986(瓶)
  • ブロルシズマブ
    ベオビュ®:138725

2022/8/1現在

となっているので、眼科の抗VEGF薬の中では一番高い薬になります。

バイスペシフィック抗体

眼科領域!初の!バイスペシフィック抗体!

と宣伝されていますが、バイスペシフィック抗体とは何か?

バイスペシフィック抗体(BsAb)は、2種類のユニークな個別抗原(または同じ抗原の異なるエピトープ)に同時に結合することが可能な抗体です。

バイスペシフィック抗体|Gen Script

2種の抗原に結合できるので、2種の抗原を抑えることができるということです。

効果が2倍になるわけではありませんが、悪者2つに対して働くので、効果が強そう!という印象がありますね。

その悪者抗体の2種が、Ang-2とVEGF-Aです。

VEGFは省略しますが、Ang(アンジオポエチン)とは何者か??

Ang-1

  • アンジオポエチン-1(Ang-1)は血管の安定化に寄与する
  • Ang-1は周皮細胞(ぺリサイト)から産生される
  • Ang-1は血管内皮細胞のTie-2受容体と結合し作用する
  • 炎症、血管透過性亢進、血管新生を抑制し、血管の安定化・維持を促進する

→良い作用

Ang-2

  • アンジオポエチン-2(Ang-2)は血管の不安定化をもたらす
  • アンジオポエチン-2(Ang-2)は血管内皮細胞から産生される
  • Ang-2もTie-2受容体と結合するが健常ではAng-1が優位に結合している
  • 病的な状態ではAng-2が優位となり、血管新生、血管透過性亢進を促進する
  • Ang-2はVEGA-Aと互いに強調して血管の不安定化をもたらす

→悪い作用


Ang-2、VEGF-Aはともに血管の不安定化をもたらす因子ですが(他にもあります)

「その両方をダブルで阻害する」

という薬剤がバビースモです。

分子量の比較

抗VEGF薬それぞれの分子量を記載します。

  • バビースモ:約149000
  • ルセンティス:約48000
  • アイリーア:約115000
  • ベオビュ:約26kDa→約26000といいたい?

※分子量に単位はありません。Da(ダルトン)を使うのは本来間違っています。

モル数

製剤名に書いてある用量は

  • バビースモ120mg/mL
  • ルセンティス10mg/mL
  • アイリーア40mg/mL
  • ベオビュ120mg/mL

であり、すべて硝子体注射に用いる用量は0.05mlであるため、投与される分子の質量は×0.05して

  • バビースモ6mg = 6×10-3g
  • ルセンティス0.5mg = 5×10-4g
  • アイリーア2mg = 2×10-3g
  • ベオビュ6mg = 6×10-3g

となります。これらを分子量で割ると

  • バビースモ 6×10-3g / 1.49×105g/mol = 4×10-8mol
  • ルセンティス= 5×10-4g / 4.8×104g/mol =1×10-8mol
  • アイリーア 2×10-3g / 1.15×105g/mol = 1.7×10-8mol
  • ベオビュ 6×10-3g / 2.6×104g/mol = 2.3×10-7mol

とmol数がでてきます。mol数は6.0×1023個を意味するので、積を求めれば投与される分子の数がわかりますが、比を取ると

  • ルセンティスを1として
  • アイリーアは1.7倍
  • バビースモは4倍
  • ベオビュは23倍

分だけの成分が眼内に注射されることになります。

もちろん分子の構造上の影響で効果の強さは変わってきますし、半減期によって持続効果も変わってきます。

が、

薬剤成分量としては、同じ抗VEGF薬でもこれだけ違うということになります。

まとめ

  • バビースモは眼科初のバイスペシフィック抗体
  • Ang-2とVEGF-Aを阻害する
  • 承認疾患はAMDとDMEのみ
  • どちらもアイリーアと比べ非劣勢が示されている
  • 薬価は一番高い
  • 効果は長く続くとされる

※2024年3月末、バビースモは網膜静脈閉塞症にも適応が拡大しました。

コメント

コメントする

目次