眼科用材協会の医療用点眼剤写真一覧から点眼名を添付文書で検索し、妊娠、授乳中に安全に使える点眼薬はあるのか、という点に関して調べてました。
後発品がたくさん出ている薬剤、同一の一般名の薬剤はその中の1剤を調べています。
妊娠・授乳中に安全に使える点眼薬
「そのような点眼薬は存在しません」
残念ながら、ほとんど全ての点眼薬において、妊娠・授乳中の使用に関して肯定的な記載のものはなく、「注意を要する」だったり、「不利益より利益が勝るときに使う」などと書かれています。
もしくは、そもそも使用上の注意のところに記載すらされていません。この、「記載されていない」ということが、安全に使用できるという意味で使用上の注意に書かれていないのであればよいですが、そもそも安全性を確認されていないだけなような気もします。(同一製薬会社のものが多かったため)抗生剤点眼において記載のないものが多くみられました。
動物実験の結果では、薬によりますが、催奇形性、胎仔の死亡・体重減少、母体の子宮収縮の誘発、などの記載があります。また、調べられているものでは、薬剤の胎盤への移行、母乳への移行などが確認されています。
添付文書上で、という意味では100%安全というものは存在しないと思われます。(そもそも医療において100%安全性を確保できるのは、その医療行為を受けない以外にはありません。)
ただし、緑内障点眼であるベタキソロールは、妊娠中を禁忌として記載しています。ベタキソロールはβ遮断薬という種類の緑内障点眼です。
特に使用を注意すべき点眼薬
以下の薬剤は注意すべきという記事を見かけたので記載します。
- アトロピン
- エピネフリン
- フェニレフリン
- β遮断薬
- 炭酸脱水酵素阻害薬
- プロスタグランジン薬
- ステロイド系
- エリスロマイシン
- サルファ剤
- アミノグリコシド
- ニューキノロン
- テトラサイクリン
- ケトチフェン(ザジテン®)
- トラニラスト(リザベン®)
- ペミロラストカリウム(アレギサール®)
散瞳薬、緑内障点眼、ステロイド点眼、抗菌点眼、抗アレルギー点眼が含まれており、点眼薬として頻繁に使われるもの大部分が注意が必要ということになります。ちなみに、ドライアイ点眼ですら、添付文書には注意の記載があります。
点眼薬の全身移行を減らす使い方
結局、妊娠・授乳中の影響がどの程度あるかはよくわからないのです。そして、基本的には薬剤は体内へ移行するので、使わなくてよい薬剤なら使わないほうがよいのです。しかし病状的に使わなくてはいけない、使ったほうがよい薬剤であれば、メリットデメリットを天秤にかけて検討していただければよいです。
と、突き放されても困ってしまうので、今回は点眼薬における体内への吸収を劇的に下げる方法をお伝えします。
点眼薬が身体に吸収される主な経路として、鼻涙管を通じて鼻→喉へと流れ、飲み込むことで消化管で吸収されます。
つまり、多くは飲み込んでしまっていることにより体内へ移行します。点眼薬が眼から吸収される量としては微々たるものです。もちろん、胃に流れる量としても微々たるものですが、流れないほうが吸収量としては減るので、体内移行が気になる方は以下のことを試すとよいです。
- 点眼後に鼻根部、目頭を押さえる(以下参照)
目頭を押さえることで、目の表面に溜まった目薬が鼻涙管を通して飲み込んでしまうのを防ぐことができます。数分間を目安に抑えればよいでしょう。
詳しくは下記記事もご覧ください。
まとめ
- 妊娠・授乳中に安全に使える点眼薬はほぼない(添付文書上)
- 動物実験では、胎仔の死亡・体重減少・奇形、子宮の収縮の誘発などが報告されている
- 体内に吸収されにくくするには点眼後に目頭を押さえる
必要のない点眼は妊娠・授乳中にはやめましょう。(もちろん、妊娠中に限らず不要な薬剤は使わないでよいです。)
ただし治療に必要な点眼薬は、もちろんメリットデメリットは各自判断の上、使うのであれば目頭を押さえることでリスクを下げることができます。
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