「目が悪い・乱視がある」の認識の違い 一般の方と眼科医

医者と一般の方との認識の違いはたくさんありますが、今回は眼科でよくある「目が悪い」と「乱視」についてです。

目次

一般の方の「目が悪い」

主に「裸眼で遠くがぼやけて見にくくなった」ことを、「目が悪くなった」と表現します。

「目が悪い」は「裸眼視力が低い」こととほぼ同じ意味で使われています。

眼鏡をかけている人、コンタクトをしている人を「目が悪い」と言っていると思います。

つまり、基本的に近視を意味します。

近視とは、裸眼で近くは見えて、遠くがぼやけて見にくい状態を言います。

これは、裸眼視力が低い、だけであって

近視だけであれば眼鏡やコンタクトで矯正すれば、遠くも見えるようになります。

元々眼鏡を使ってこなかった人が、「だんだん目が悪くなってきた」というような表現で使うことが多いかと思います。

一般の方の言う「目が悪い」=近視 がほとんど

近視以外でも、例えば遠視でも歳を取ると遠くもぼやけてきます。

が、遠視だと手元のほうがよりぼやけるので、目が悪くなった、という表現よりも「手元がぼやける」「老眼になった」と表現することが多いです。

眼科医の「視力が低い」

眼科医が言う「視力が低い」は、矯正視力が低いことを言います。(目が悪いとはあまり言いません)

つまり、裸眼でも視力が低いのですが、眼鏡やコンタクトを使っても視力が低い状態を、「視力が低い」と言います。

一般の人からにしたら、元々裸眼だったのが見えにくくなって眼鏡をしなくてはいけなくなってしまった=目が悪い なのですが

眼科医からしたら、眼鏡をかけて見えるのであれば全然問題ないので、「眼鏡をかけてください」でおしまいなのです。

なぜかと言うと、眼鏡をかければ見える状態は、医学的には全然問題がないからです。

ただし一般の人からしたら眼鏡をかけなくてはいけないことが自体が問題だと思うので

この認識の違いが生じます。

ちなみに眼科医が説明する視力検査の結果は、基本的に矯正視力です。「裸眼視力は~」と言わない限り裸眼視力ではありません。その日の検査で、どんな強い矯正でも、一番よく出た視力(最高矯正視力)を言います。

眼科医の言う「視力が低い」=眼鏡しても視力が出ない

眼科医の説明する「視力」は「最高矯正視力」

裸眼視力が低いことも問題

しかし眼科医、とくに若手の眼科医はわかっておかなくてはいけないのですが

矯正視力がよくても、普段の患者さんの視力がどうなのかということは、必ず把握しておかなくてはいけません。

なぜなら、それが普段の患者さんが見えている景色だからです。

「裸眼視力が0.1だけど矯正したら1.2でました」

これは先ほども述べた通り、医学的には全く問題はありませんが

患者さんが普段眼鏡もコンタクトもしていないのであれば、実際は0.1の視力で生活しているわけで、見にくいのです。この視力で裸眼で運転していたら、どう考えても危なくて問題ですよね。

例を出すと、世界の低視力の人の多くは、適切な矯正がされていないことがあげられます。

途上国に多いですが、眼鏡があればよく見えるのに眼鏡がないから、結局よく見えていない人がたくさんいると言うことです。

未矯正であることが低視力の大きな原因なのです。

日本においても、眼鏡を使ったことがない人は多くいますので、初診で来た患者さんは必ず裸眼視力も確認し、低ければ眼鏡を持っているかを確認しましょう。

また、定期通院している患者さんでも時おり、普段の視力(裸眼なら裸眼、普段使いの眼鏡があるなら眼鏡視力)を確認することも大事です。

眼鏡していない人は裸眼視力=普段の視力

眼鏡の有無を確認するのは超重要

一般の方の「乱視がある」

続いて乱視に関してです。

一般の方の場合は、ぼやけて見えることを乱視と表現することが多いです。ぼやけて乱れて見えるので。

見えにくい、ぼやける=乱視ではありません。

つまり、実際に乱視があるかどうかは関係なく、乱視という表現をされることが多いです。

一般の方の言う「乱視がある」=ぼやけて見える

眼科医の「乱視がある」

眼科医に言う「乱視」は、実際に眼科で検査して乱視が強く存在すれば「乱視が強い」と表現します。

多かれ少なかれ、ほとんどの人に乱視はあるので、「乱視がありますね」という場合は「乱視が強いですね」という意味です。

ただ単に小さな乱視があるときに「乱視がある」とは言いません。

「乱視がある」と言われたときは「乱視が強い」と思っておきましょう。

乱視とは

乱視は簡単にいうと、「縦方向と横方向のピントがずれている状態」であり、全体的にぼやけるのではなく、縦もしくは横というように「ある方向のみがぼやける」ことを言います。

不正乱視という場合は、縦横関係なく、ぼやけます。

乱視って結構難しい用語なのです。

「乱視がある」という患者の多くは「乱視はほとんどない」

ということで乱視の認識としては

  • 患者「乱視がある」=「ぼやけて見える」
  • 眼科医「乱視がある」=「強い乱視が存在する」

になります。

軽度の乱視であればほとんどの人にありますので、眼科医はそれを「乱視がある」とは言いません。むしろ乱視としては弱ければ、「乱視はほとんどない」といいます。(「乱視がない」とまで言うとそれはそれで間違いなので)

中には過去に検査をされて、「強い乱視がある」ということを知っていて「乱視がある」と言う人もいます。その場合は正しいです。

ただ単にぼやけて見えることは乱視とは限りませんので、何でもかんでも乱視にしないようにしましょう。(してもいいですが、実際は違うことが多いということです)

そして「乱視があって見にくいです」と表現する多くの人は、経験的には「それほどの乱視はない」ことが多いです。

まとめ

  • 一般の人の言う「目が悪い」≒「裸眼で遠くが見えにくい(近視)」
  • 眼科医の言う「視力が低い」=「矯正しても視力が低い」
  • 眼科医の説明する視力は、最高矯正視力
  • 矯正して視力が出れば医学的には問題ない
  • 未矯正の裸眼視力を含め現視力が低いことは問題
  • 一般の人の言う「乱視がある」≒「ぼやけて見える」
  • 眼科医の言う「乱視がある」=「強い乱視がある」
  • 弱い乱視はだいたいみんなあるし、わざわざ「乱視がある」とは言わない

この認識の違いを正す必要があるかというと、別にないのですが

認識が違うと勘違いが生まれる可能性があるので、知っておいて損はないかと思います。

特に眼科を受診する一般の方にとって視力結果は気になると思いますが

眼科医の説明する視力結果は、特に断りがなければ最高矯正視力を言っていますので、普段生活している視力がその通りとは限りません。

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