ヒドロキシクロロキン網膜症の禁忌とフォロー方法の実際

ヒドロキシクロロキン(Hydroxychlorquine:HCQ, プラケニル®)は抗マラリア薬であり、海外ではマラリアの治療や予防のために用いられますが、日本においては2015年から全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚エリテマトーデスの治療薬としても使われます。

ヒドロキシクロロキン使用による副作用の網膜症は頻度は少ないですが有名であり、使用開始前に眼科スクリーニングが行われます。

ヒドロキシクロロキン適正使用のための手引き(https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/hydroxychloroquine.pdf)

目次

ヒドロキシクロロキン網膜症とは?

ヒドロキシクロロキン(プラケニル®)を使用したことで生じる薬剤性網膜症です。

網膜の中心が障害されることで、視力低下や中心暗点などの症状をきたします。

薬剤の累積内服量が重要であり、内服を開始してすぐになることはまずありません。

使用開始前の眼科スクリーニング

以下の7つの検査が必須とされています。

  • 視力検査
  • 細隙灯顕微鏡検査
  • 眼圧検査
  • 眼底検査
  • SD-OCT
  • 視野検査
  • 色覚検査

視野検査の検査範囲は、中心10度メインだが、それより広い範囲(30度以内)なども適宜検討すべきとの記載があります。

視野検査は多くの施設で予約制となっているため、眼科受診当日には行えないことも多いです。あらためてもう一度検査しに来る必要があります。

眼底検査では散瞳した上で行うことも多いです。散瞳後は4-5時間、目の見え方がおかしくなるため、自分の車で来院はしないようにしましょう。

ヒドロキシクロロキン使用の禁忌

網膜症がある場合は使用が禁忌となります。

2.2 網膜症(ただし、SLE網膜症を除く)あるいは黄斑症の患者又はそれらの既往歴のある患者[副作用として網膜症、黄斑症、黄斑変性が報告されており、このような患者に投与するとこれらの症状が増悪することがある。]

添付文書より

添付文書には上記の記載があり、基本的に網膜症があれば使用はできません。

ただし「網膜症」というだけだと、網膜の疾患はいくらでもありますので全てが禁忌になるかどうかは微妙なところです。

添付文書および「ヒドロキシクロロキン適正使用のための手引き」においては、この「網膜症」に関して詳しく言及はされていないため、基本的には網膜の病気が過去~現在においてあれば使用しないことが賢明です。

しかし基本的にヒドロキシクロロキン網膜症は網膜の黄斑部が障害されるため、黄斑疾患や黄斑障害がなければ影響は大きくはありませんし、OCTでフォローしていれば使用しても問題はないと思います。

眼科検査のフォロー間隔

2011 年の米国の改訂ガイドライン 「Revised Recommendations on Screening for Chloroquine and Hydroxychloroquine Retinopathy」 ではリスク因子となる累積投与量を1000g、網膜障害は投与開始より 5〜7年を超えると発現率が 1% を超える

→投与開始5年以後、年1回の眼科検査の推奨

とありますが、

「日本においては、少なくとも年1回検査を行うこと」とされています。

さらにハイリスクの患者

  • 本剤の累積投与量が 200 g を超えた患者
  • 高齢者
  • 肝機能障害または腎機能障害患者
  • 視力障害のある患者,SLE 網膜症患者,投与後に眼科検査異常を発現した患者

には、それよりも早い期間(半年毎)などのフォローを推奨しています。

実際の診療の流れ

  • 基本的に皮膚科や膠原病科などからコンサルトを受ける形で眼科初診になります
  • 上記のスクリーニングを行い、問題なければ使用を開始していただきます
  • 開始した後は1年後に再度眼科検査を受けていただきます

プラケニルは基本1日200mgか400mg内服となります。200mg内服の人は1年間で200mg×365日=73g/年 の累積内服量となります。他にリスクがなければ累積内服量が200gを越えない3年間は低リスクであり、年1回のフォローで充分です。3年たった後からは半年に1度の受診が推奨されます。

視野検査のフォローとしては、中心10度を行っていることが多いですが、30度以内で検査している人もいます。

プラケニルの累積内服量を計算しましょう

注意を要する症例

全身性エリテマトーデスでは、脳血管障害がよくみられます。(難病情報センターよりhttps://www.nanbyou.or.jp/entry/215

実際スクリーニングや経過フォロー中の視野検査で、脳障害後における視野異常を示すことはたびたび見かけます。

この場合は網膜症をきたしているわけではないため禁忌ではありませんが、万が一ヒドロキシクロロキン網膜症をきたした際の視野異常の判断が難しくなる可能性があります。

まとめ

  • プラケニル使用前は眼科評価が必用
  • 網膜症がある場合は、使用は禁忌
  • 眼科フォローは年1回
  • 積算内服量が200gを越えた場合、その他リスクがある場合は半年に1度を推奨

日本においてプラケニル®が皮膚エリテマトーデス、全身性エリテマトーデスに適応となったのが、2015年7月。その後ヒドロキシクロロキン使用の手引きがでたのが2016年6月。

使用歴の長い人だと8年程度の人がでてくる時期であり、もしかするとヒドロキシクロロキン網膜症患者が増えてくる頃かもしれません。

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