眼球運動と斜視 筋肉(外眼筋)の作用方向と解剖の基礎

眼球運動障害、斜視を考える上で必須であると同時に、バックルなどの斜視手術以外の手術でも外眼筋の付着部位は知っておく必要がある解剖の基礎知識です。

本記事では眼球運動の基礎知識、解剖に関して記載します。

眼球運動は左右の目が同時に動く「共同運動」も考慮すると、蝸牛の平衡器官や脳内のいろんなところが関与しており、非常に複雑になります。

今回はシンプルに、単眼での眼球運動に関してです。

目次

眼球運動の用語

  • 外転、内転
  • 上転、下転
  • 外旋、内旋

単眼の眼球運動は、外転・内転、上転・下転、外旋(外方回旋)・内旋(内方回旋)で全て説明できます。

外眼筋の付着部

Tillauxのらせん

外眼筋の付着部位は角膜輪部からおおよそ

  • 内直筋 5mm
  • 下直筋 6mm
  • 外直筋 7mm
  • 上直筋 8mm

となっています。

Tillauxの螺旋

内→下→外→上の順に約5mm,6mm,7mm,8mmと順になり、らせんを描くように角膜輪部から付着部が遠ざかる。これを、Tillauxの螺旋(チロー、ティロー)という。

内方回旋の方向に、内直筋から順に5→6→7→8mmとなっています。

外眼筋の起始・停止

  • 直筋+上斜筋の起始は、総腱輪
  • 下斜筋の起始は、眼窩内側の骨
  • 直筋の停止は、Tillauxのらせん参照
  • 上斜筋の停止は、上直筋の外縁を超えた辺り
  • 下斜筋の停止は、外直筋下縁付近

解剖学書などで上斜筋の起始が眼窩先端部の「総腱輪」ではないところ(骨?総腱輪に付着するような感じ?)と記載の文献もあり。下斜筋の起始は骨の名称など詳細が書いてある文献なかなか見つからなかったです。

上斜筋、下斜筋はそれぞれ上直筋、下直筋の下側(尾側)に存在

  • 上斜筋は、上直筋と眼球の間に存在
  • 下斜筋は、下直筋に覆うように存在

※眼窩プリーがあるため、実際に「機能的に」起始部となるのは、眼窩プリー部(眼球赤道面あたり)になる

外眼筋の支配神経

こちらを参考にしてください。

外眼筋の作用方向

上記の図は、外眼筋の最大作用方向を表しています。

上下直筋は外方視で上転・下転が最大作用し、上下斜筋は内方視で下転・上転が最大作用となります。(次項参照)

外眼筋の種類による作用方向

  • 外直筋→外転
  • 内直筋→内転
  • 上直筋→上転+内旋+内転(※下線は後述)
  • 下直筋→下転+外旋+内転
  • 上斜筋→内旋+下転+外転
  • 下斜筋→外旋+上転+外転

眼球運動方向による作用筋

  • 上転→上直筋、下斜筋
  • 下転→下直筋、上斜筋
  • 外転→外直筋、上斜筋、下斜筋
  • 内転→内直筋、上直筋、下直筋
  • 外旋→下斜筋、下直筋
  • 内旋→上斜筋、上直筋

上下直筋に内転作用があるのは(下記イラスト左参照)

  • 直筋付着部が回旋中心点より前方で
  • 眼窩先端部つまり内側・背側から走行しているから
田崎義昭, 斎藤佳雄: ベッドサイドの神経の診かた(改訂18版). 南山堂, 2020, pp111-114.

上下斜筋に外転作用があるのも同様に考えればよいです。(内前方から走行して、回旋中心より後方に付着)

外眼筋の走行と眼窩の関係

右眼を上方から見た図
右眼を外側から見た図 VISION CAER|メガネの服部より引用

下斜筋は、上斜筋と似た走行を下方で行っていると考えるとわかりやすいです。付着部はやや外側よりになり、外直筋下縁付近になります。

  • 上下直筋は外方23°の方向に走行
  • 上下斜筋は内方51°の方向に走行

したがって

  • 上下直筋の上転、下転作用が一番強く作用する方向は、23°外方を向いたとき
  • 上下直筋の内旋、外旋作用が一番強く作用する方向は、67°内方を向いたとき(←90-23)
  • 上下斜筋の下転、上転作用が一番強く作用する方向は、51°内方を向いたとき
  • 上下斜筋の内旋、外旋作用が一番強く作用する方向は、39°外方を向いたとき(←90-51)
外方を向いているとき

上下直筋と視線が同一(23°外方視)のとき上転、下転効果が最大

内方を向いているとき

上下斜筋の筋走行と同一(51°内方視)のとき下転、上転効果が最大

まとめ

  • 直筋付着部は内下外上の順に5-6-7-8mm(Tillauxのらせん)
  • 直筋は視軸と23°の角度、斜筋は51°の角度
  • 内外直筋以外は複数の作用方向があり、最大作用の眼位がある

外眼筋の解剖、筋の付着部位は、眼球運動障害、麻痺筋や斜視の原因筋を考える上で重要であり、バックルや斜視手術、眼球摘出、眼球破裂など、外眼筋を操作する手術などでも必要となってきます。

これら眼球運動の基礎がわかると、麻痺性斜視を考える上で、上下斜視も含めてわかってきます。上下斜視はさまざまな筋が関与して非常にわかりにくいのですが、以下の記事では完結に3ステップで理解できるので非常におすすめです。

理解しにくい分野としてのA-V斜視に関してもイラストを多数用いながらまとめています。

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