要注意!アトロピン点眼の濃度は全身用より断然濃い超劇物

アトロピンは救急、麻酔でも使うので医療者はたいてい知っていると思います。

効果は抗コリン作用、具体的には抗ムスカリン作用にて副交感神経の作用を抑制し、胃腸運動の抑制、心拍数増大などの効果があります。具体的には徐脈時に救急や、麻酔で使われるような薬剤です。

さて、そんな薬剤なのですが、点眼薬があるのご存知ですか?

点眼薬では、目の調節機能を取り除いて、主に小児の適切な治療用メガネを作成するために使われます。

このように目薬でも使われるアトロピンなのですが、その容量、濃度に関して知っておくと面白いのでまとめました。

目次

アトロピンの濃度と全容量

アトロピンは注射液と点眼液があります。

アトロピン注0.05%(注射液)

救急カートなどに入っているアトロピン1A(アンプル)は濃度0.05%で1ml入っています。

0.05%= 0.05g/100ml
= 50mg/100ml
= 0.5mg/ml

ということで、1A1ml中に成分量0.5mg含まれます。

それを以下のように使います。

用法用量(添付文書より引用)

アトロピン硫酸塩水和物として,通常成人0.5mgを皮下又は筋肉内に注射する.場合により静脈内に注射することもできる.なお,年齢,症状により適宜増減する.

有機燐系殺虫剤中毒の場合には,症状により次のように用いる.

軽症

アトロピン硫酸塩水和物として,0.5〜1mgを皮下注射するか,又は0.5〜1mgを経口投与する.

中等症

アトロピン硫酸塩水和物として,1〜2mgを皮下・筋肉内又は静脈内に注射する.必要があれば,その後20〜30分毎に繰り返し注射する.

重症

初回アトロピン硫酸塩水和物として,2〜4mgを静脈内に注射し,その後症状に応じてアトロピン飽和の徴候が認められるまで繰り返し注射を行う.

ECTの前投与の場合には,アトロピン硫酸塩水和物として,通常成人1回0.5mgを皮下,筋肉内又は静脈内注射する.なお,年齢,症状により適宜増減する.

要するに成人では1Aを筋注したり、静脈内投与したりします。

緊急の徐脈時は1mgを(2A)を静脈内投与し3-5分ごと使用し、最大で3mg(6A)使います。(ACLS上)

子どもの麻酔の歳は、0.02mg/kgで使うようです。7歳ぐらいの平均体重を考え、25kgとして0.5mgつまり1Aですね。

アトロピン点眼1%(目薬)

では点眼液に関してです。

もうお分かりでしょうが、濃度が全然違います。

アンプルが0.05%に対して、点眼薬は1%、つまり20倍も濃いのです。

さらに

点眼薬はボトル内に5ml入っています。つまり、容量も5倍あるわけです。

つまり、注射用1Aに含まれる薬剤成分量0.5mgに対して、点眼液には100倍の50mgが含まれています。

アトロピン注射液アンプル100本分です。

やばくないですか!????

これを検査のために点眼するのです。

点眼1滴に含まれる成分量は?

検査用のアトロピン点眼は、1日3回程度両眼につけることが多いです。つまり一日あたり両眼で6滴程度。

では点眼1滴に含まれるアトロピンの成分量はいくらなのか?

上記記事でも書いていますが、点眼液の1滴は40-50μl程度です。(溶液の粘稠度やボトル先端の形状などで変わります)

点眼液1%は1g/100mlなので

1g/100ml= 1000mg/100ml
= 10mg/ml
= 10mg/1000μl
= 0.01mg/μl

つまり1%の点眼液には、1μlあたりアトロピン0.01mgが含まれます。

点眼1滴を40-50μlとすると、1滴あたり0.4-0.5mgのアトロピンが点眼されるわけです。



全身用の1A1mlに含まれるアトロピンの成分量っていくらでした?・・・0.5mgです。

アトロピン1%点眼は、1回の点眼ごとに1Aの全身用の溶液の8割~ほぼ全量近くが目にかかっているということになりますね。

やばくないですか!????

アトロピン点眼の副作用

顔面紅潮、頻脈、発熱、口渇などが有名ですが、すべてあげると以下のようになります。

アレルギー性結膜炎、眼瞼結膜炎、緑内障・眼圧上昇(眼痛、見えにくい、頭痛)、血圧上昇、動悸、幻覚、けいれん、興奮、吐き気・嘔吐、口渇、便秘、顔面潮紅(顔が赤くなる)、頭痛、発熱

(添付文書より)

販売されている点眼液は1%ですが、施設によっては子どもの年齢に応じて、0.5%製剤を院内調剤して使用していることもあります。

こんな劇物を点眼しているわけですから、さぞ副作用も恐ろしいのが多いのかと思いきや

あまりにひどい副作用が出ている報告はそんなに見当たりませんでした。(少ししか調べていませんが)

点眼時の注意:必ず目頭を押さえて

目でみる眼疾患より引用、一部改変

点眼液は自然の流れでは、目から鼻涙管を通って鼻に流れ、そのまま喉→胃と流れ、吸収されます。

点眼液すべてが胃に流れるわけではありませんが、今回のアトロピンのように、全身へ吸収されないほうが良い薬剤もあります。

点眼薬による身体への影響を少なくするためには、点眼後に目頭を押さえて鼻へ流れるのを防ぎましょう。

まとめ

  • アトロピンは副交感神経を抑制する薬
  • 注射液0.05%(1ml)と点眼液1%(5ml)がある
  • 点眼液の濃度は注射液の20倍
  • 点眼液の薬剤成分量は注射液の100倍

アトロピンで記事を書いてから気づいたのですが

散瞳薬として眼科で使われるネオシネジンは5%であり、その注射液は0.1%(1mg/1ml)か0.5%(5mg/1ml)があります。0.1%のほうで計算すれば、濃度50倍、容量も5倍で、

注射液250本分の点眼ボトルですッッッ

とできたけど、まぁいいや・・・。伝えたいことは濃度の濃い点眼もあるから注意ですよということです。

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