主に眼科領域に関する麻酔薬をまとめました。
局所麻酔の基礎から、眼科領域の主な麻酔薬の種類、麻酔方法など、まとめて記載しています。
局所麻酔法の種類
麻酔方法は大きく3つあります。
- 表面麻酔
- 浸潤麻酔
- 伝達麻酔(神経ブロック、神経叢ブロック、硬膜外麻酔、脊椎麻酔など)
表面麻酔
- 痛覚神経の末梢終端を直接痛覚を遮断する方法
- 粘膜や創部に薬剤を滴下、塗布、噴霧する
眼科の点眼麻酔は結膜(粘膜)に直接作用する表面麻酔です。
他にキシロカインゼリーやスプレーなどがあります。正常の皮膚にはほとんど効きません。
浸潤麻酔
- 皮下に局所麻酔薬を注射し浸潤させ、末梢終端から近い部分で痛覚を遮断する方法
眼科では眼瞼手術がわかりやすいと思います。結膜下麻酔やテノン嚢下麻酔、球後麻酔も一部、浸潤麻酔です。
麻酔薬を注射してその付近の痛みを感じなくなるという、一般的な麻酔という感じです。
伝達麻酔
- 対象神経の周囲に麻酔薬を注射し、神経支配領域を麻酔する方法
眼科領域では、球後麻酔や瞬目麻酔が該当します。瞬目麻酔では顔面神経、球後麻酔では視神経・動眼神経・滑車神経・三叉神経・外転神経などをブロックします。
眼科領域では神経ブロックですが、硬膜外麻酔、脊椎麻酔も伝達麻酔に分類されます。
根本から麻酔をしてその先まで麻酔を効かせるようなイメージです。
局所麻酔薬の作用機序
- 電位依存性Naチャネルの開口をブロックすることで、活動電位の伝導を遮断することによる
- 神経線維に作用し、細胞内部へのNa+の流入を抑制し、活動電位の発生を阻止する
Naチャネルをブロックすることで神経伝導を遮断して痛覚を遮断します。
局所麻酔薬の薬理学的性質
麻酔薬の薬理的な性質として
- pKa(解離定数)
- 脂溶性
- 蛋白結合率
が関与します。それぞれ、
- pKaは作用発現時間
- 脂溶性は作用強度と副作用
- 蛋白結合率は作用持続時間
に関係します。脂溶性は、比を取った分配係数というものもありますが、細かいことは省略します。
局所麻酔薬の種類
局所麻酔薬は、脂溶性であるベンゼン環と水溶性であるアミンが、アミド結合もしくはエステル結合でつながっている形をとっています。分類としてはエステル型とアミド型に分けられます。
- エステル型・・・プロカイン
- アミド型・・・リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン、ロピバカイン
麻酔薬は他にもありますが、眼科メインの記事なのであまり使わないものは省略しています。
適応は麻酔科学会の局所麻酔薬ガイドラインと添付文書から掲載しています。
プロカイン
最初に合成された局所麻酔薬、短時間作用型です。
- pKa 8.9
- 蛋白結合率 6%
- 発現時間 2-5分
- 作用時間 30-60分
最初に合成された麻酔のため、基準として比較に使われることが多いです。
適応は浸潤麻酔、伝達麻酔です。
オキシブプロカイン(ベノキシール0.4%®)
点眼用(表面麻酔)のプロカインです。添付文書に記載の作用効果は以下のようになります。
- 作用発現時間 約16秒
- 作用持続時間 約13分
ベノキシール点眼薬は表面麻酔です。すぐ効きます。効果はすぐ消えます。
pKaは9.16というインターネット上の情報を見つけました。
適応は眼科領域の表面麻酔です。
リドカイン(キシロカイン®)
- pKa 7.9
- 蛋白結合率 64%
- 作用効果 プロカインより強い
- 作用持続時間 プロカインより長い
添付文書上、作用効果は曖昧な記載ですが、プロカインよりは強力ということですね。
適応は表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔すべてあります。
眼科で使うのはキシロカイン点眼液4%®で、表面麻酔用ですね。
メピバカイン
- pKa 7.6
- 蛋白結合率 78%
麻酔効果は硬膜外または浸潤麻酔で
- 作用発現時間 6.5分
- 作用持続時間 149分
伝達麻酔作用はプロカインの1.5倍、リドカインと同等です。薬効はリドカインと同じような感じです。
適応は硬膜外麻酔、伝達麻酔、浸潤麻酔です。
薬効はリドカインと同じような感じです。
ブピバカイン(マーカイン®)
- pKa 8.2
- 蛋白結合率 95%
作用時間が最も長い麻酔薬の1つです。リドカインやメピバカインより神経ブロックにおいて持続時間は2-5倍長く、麻酔効果も強いです。
適応は、硬膜外麻酔、伝達麻酔、脊髄クモ膜下麻酔です。
ロピバカイン(アナペイン®)
- pKa 8.1
- 蛋白結合率 94%
- 脂溶性 ブピバカインより低く、メピバカイン・リドカインより高い
ブピバカインと同等の麻酔効果を発現するには1.3-1.5倍の用量が必要とされるようです。
適応は硬膜外麻酔、伝達麻酔、術後鎮痛(持続硬膜外麻酔)、浸潤麻酔です。
麻酔薬 効果一覧表
脂溶性、分配係数は参考元により多少ばらつきがあったため、省略します。
眼科領域の麻酔方法
眼科領域の麻酔法の分類、作用神経などをまとめました。
点眼麻酔
- 分類 :表面麻酔
- 作用神経:三叉神経
結膜下麻酔
- 分類 :浸潤麻酔
- 作用神経:三叉神経
テノン嚢下麻酔
- 分類 :浸潤麻酔
- 作用神経:三叉神経
球後麻酔
- 分類 :浸潤麻酔、伝達麻酔
- 作用神経:視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経、毛様体神経節
瞬目麻酔
- 分類 :伝達麻酔
- 作用神経:顔面神経
Van Lint法、Atkinson法、O’Brien法、Nadbath法など
三叉神経分枝ブロック
- 分類 :浸潤麻酔
- 作用神経:三叉神経核枝
滑車上神経ブロック、眼窩上神経ブロック、滑車下神経ブロック、涙腺神経ブロック、眼窩下神経ブロック、頬骨顔面神経ブロックなど
まとめ
- 表面麻酔→麻酔薬を付けた部分の粘膜の麻酔
- 浸潤麻酔→麻酔薬を注射した付近の麻酔
- 伝達麻酔→麻酔薬を注射した付近とその先の神経の麻酔
薬効(作用発現時間、麻酔効果、作用持続時間)は麻酔方法により異なるので単純には比較できないと思われます。点眼麻酔はプロカイン系でpKaは高いですが、すぐに効きますからね。
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