BDUMPとは、Bilateral Diffuse Uveal Melanocytic Proliferationの略で、日本語では「両眼性びまん性ぶどう膜メラノサイト増殖」となります。
BDUMPはかなり珍しい疾患ですが、身体の悪性腫瘍から併発する腫瘍随伴症候群の一種であり、眼科で診ることが非常に稀ですがあります。身体的な悪性腫瘍の影響であり、予後は悪い疾患になります。
BDUMPの概要
BDUMP(Bilateral Diffuse Uveal Melanocytic Proliferation)はその名の通り、
- Bilateral Diffuse Uveal Melanocytic Proliferation
- 両眼性に、びまん性な、ぶどう膜メラノサイトの、増殖性変化
を引き起こす疾患です。
具体的な症状として、両眼性の視力低下を引き起こす、腫瘍随伴症候群の一種であり、悪性腫瘍と関連しています。
Machemerによって1966年に初めて報告された疾患で、現時点でpubmedに症例報告、レビュー含め124件のみの、かなり稀な疾患です。
以下の5つの主要な徴候があります。
- 眼底写真上の多発性で微小の円形の、橙赤色の網膜下斑点
- フルオレセイン血管造影によるこれらの斑点の多巣性早期過蛍光
- びまん性脈絡膜肥厚を伴う限局性隆起性色素性・非色素性のぶどう膜メラノサイト腫瘍
- 滲出性網膜剥離
- 急速に進行する白内障
BDUMPの原因の腫瘍
レビューでは60件程度の症例のうち、
- 女性患者の約70%が泌尿器生殖器がんで、そのうちの25%が卵巣がん
- 男性患者の約50%が肺がん
- その他、膵臓がん、食道がん、乳がん、肝細胞がん、腎細胞がん、胆嚢がん、リンパ腫など
とまとめられています。
BDUMPの眼所見
BDUMPの眼の所見としては、以下の5つがあります。
- 眼底写真上の多発性で微小の円形の、橙赤色の網膜下斑点
- フルオレセイン血管造影によるこれらの斑点の多巣性早期過蛍光
- びまん性脈絡膜肥厚を伴う限局性隆起性色素性・非色素性のぶどう膜メラノサイト腫瘍
- 滲出性網膜剥離
- 急速に進行する白内障
Bilateral diffuse uveal melanocytic proliferation|QJM: An International Journal of Medicine, Volume 116, Issue 4, April 2023, Pages 305–307
これらは脈絡膜における良性メラノサイトのびまん性増殖によって引き起こされ、原発性非眼腫瘍とは組織病理学的に無関係となっています。
BDUMPの眼症状
- 両眼性の進行性の視力低下
視力低下の原因としては、
- 白内障の進行
- 滲出性網膜剥離による黄斑部の網膜下液、網脈絡膜不整や色素沈着
などが考えられます。
原因となる全身性の悪性腫瘍の検出、診断から数か月~数年以上先行して症状が出現することもあるため、疑った場合は全身検査は当該科へコンサルトすることも大切です。
BDUMPに必要な検査
- 細隙灯顕微鏡検査(白内障の確認)
- 眼底検査(広角眼底写真、OCTなど)
- 眼底自発蛍光検査
- フルオレセイン蛍光眼底検査
が有用です。
急激に進行したと思われる白内障を認め、眼底所見に斑点所見、滲出性網膜剥離を認める際は、本疾患を考慮してもよいと思います。
- uveal effusion syndrome
- 慢性CSC
- 梅毒性網脈絡膜炎
などが鑑別疾患として挙げられます。
BDUMPの治療・予後
原発腫瘍に対する治療を行います。治療後に視覚症状、所見が改善する報告があります。
ただし原発巣の悪性腫瘍の関係で、BDUMP発症後の全平均生存期間は15.7か月とされています。BDUMP自体はぶどう膜メラノサイトによる良性の増殖性疾患であり、これ自体は生命予後には関与しません。
まとめ
- 両眼性の白内障の進行、滲出性網膜剥離、多巣性の網膜下斑点、メラノサイト増殖、FAでの早期過蛍光
- 女性の泌尿器生殖器がん、男性の肺がんに多い腫瘍随伴症候群
- 治療は原発がんの治療を行う、予後は1年と少し
眼科書籍にも載っていないこともある、珍しい疾患です。腫瘍随伴症候群の一種であるため、CARやMARと同じ系列の疾患の一つとして知っておいてよいかもしれません。
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