蛍光眼底造影 FAとICGAの違い・特徴

FA(フルオロセイン蛍光眼底造影)とICGA(インドシアニングリーン)蛍光眼底造影の違いについてです。

目次

FA : fluorescein angiography

  • 網膜・脈絡膜循環動態、網膜血管・網膜色素上皮による血液網膜関門の状態を評価できる
  • 分子量はICGより低い
  • 肝代謝→腎排泄だが腎に薬理作用はない
  • 副作用がICGAより多い
  • 1871年にAdolf con Baeryerによって合成された色素
    1961年NovotonyとAlvisによって開発された?(眼科学)
    1995年にMacClearとMaumeneeがヒト網膜の血管造影に応用した
  • 分子量350程度(文献により332、367、フルオロセインナトリウムとして376などの記載)
  • 約480nm(465-490nm)の青色光で励起されると、最大波長520nm(495-600nm)の蛍光を発する
  • 透過波長520nmのフィルターで観察・記録する。
  • 80%以上が血漿蛋白(主にアルブミン)と結合し残りはフリーとして存在する
  • 血液網膜関門が正常であればフルオロセインの漏出はみられない。
  • 24時間以内に肝臓で代謝され大部分は腎臓から尿として排泄
  • 全副作用1.1-11.2% (10%程度 眼科学)

過蛍光を示すもの

蛍光漏出(leakage)
 :血液網膜関門の障害にて生じる。経時的に拡大する

蛍光貯留(pooling)
 :網膜内、網膜下、網膜色素上皮下などの組織間隙に蛍光色素が貯留すること。

  嚢胞様黄斑浮腫、 網膜色素上皮剥離など

組織染(tissue staining)
 :組織内に色素が拡散・結合し、強い過蛍光を示す。

透過蛍光(window defect)
 :網膜色素上皮のメラニンは脈絡膜背景蛍光を遮断するが、網膜色素上皮の欠損・萎縮によって遮断効果が弱まり、脈絡膜部の蛍光が過蛍光として見られる。拡大はない

 網脈絡膜変性・萎縮、ドルーゼン、黄斑円孔などでみられる

低蛍光を示すもの

蛍光遮断(blockage)
 :網膜前・網膜下・網膜色素上皮下出血、網膜色素上皮剥離、硬性白斑、網膜色素上皮裂孔でロールし上皮が重なっている部分などでみられる

充盈遅延・欠損(filling delay/ defect)
 :血流の循環障害もしくは血管の完全閉塞により、造影剤の流入が遅れたり流入しない部位。脈絡膜毛細血管版の萎縮や消失などでみられる。

ICGA (IA) : indocyanine green angiography

  • 脈絡膜血管の状態を評価できる
  • 分子量が大きくほとんどが蛋白と結合しているため、拡散速度が遅く血管透過性が低い
  • 代謝されずに胆汁排泄される(腎に影響を与えない)
  • ヨードを含んでいる
  • 副作用がFAより少ない
  • 1957年にFoxらが開発
  • 血中半減期は3-4分
  • 水溶液中は波長780nmに光吸収のピーク
  • 血清蛋白結合後は波長805nmに光吸収のピークがあり、励起されると835nmの蛍光を発する
  • 800nm付近の波長は組織透過性にすぐれ、網膜色素上皮メラニン色素やキサントフィル、浸出液、出血部のヘモグロビンを高率に透過する(ブロックが少ない)
  • 約98%が血清蛋白と結合する
  • 脈絡膜血管から周囲組織への拡散速度が遅く透過性が低い→脈絡膜血管の異常、CNVの検出に優れる
  • 肝臓に摂取され、胆汁中に排泄、腸肝循環なし、腎排泄なし
  • 蛍光量はフルオロセインの1/25-1/50
  • 副作用 FAより頻度は低い。ヨードを含んでいる。
  • 全副作用0.11-0.39% 発疹、嘔気、血管痛、便意、熱感、発熱など
         0.05-0.68%(日眼 眼底血管造影実施基準)

禁忌

日本眼科学会の造影検査実施基準に関して言えば、絶対的禁忌の記載はない。問診の上で実施するにあたっては副作用発言に十分注意して行う。注意すべき点は以下の通り。

  • アレルギー歴
    :過去に検査での副作用発現歴、アレルギー体質の有無を確認し、実施を検討。
  • 糖尿病
    :できるだけ血糖コントロールできている状態で行う。
  • 高血圧・動脈硬化
    :できるだけ血圧がコントロールできている状態で行う。
  • 肝障害
    FAは肝炎、肝硬変、肝機能低下患者には原則的に控える。ICGAは肝機能テストに使われることから禁忌といは言い難いが主治医に問い合わせる。
  • 腎障害
    腎に対してフルオロセインは薬理作用を持たないので腎機能は悪化しない。インドシアニングリーンは胆汁排泄なので腎に無関係。(腎機能低下のみでは禁忌とは言えない)
  • 心疾患
    :主治医に問い合わせる。心筋梗塞・狭心症発作の新鮮例は避ける(6か月以内)
  • 脳血管疾患
    :主治医に問い合わせる。
  • 高齢者
    :年齢だけで判断せず既往、全身状態を考慮し、必要に応じて他科主治医に問い合わせる。
  • 小児
    :安全性は確率されていない。(慎重に判断)
  • 妊婦、授乳婦
    :安全性は確率されていない。(避けるべき、避けることが望ましい)

比較表

FAとICGAを色素フルオロセインとインドシアニングリーンとの比較を含めて比較します。

FAICGA
観察部位網膜脈絡膜
分子量350程度775
励起波長480nm(青色光)805nm(赤外光)
蛍光波長520nm(緑色光)835nm(赤外光)
動態80%蛋白と結合98%蛋白と結合
排泄肝で代謝され腎臓へ代謝は受けずに胆汁へ
副作用1-10%程度0.5%程度

参考文献
・網膜診療クローズアップ
・ICG蛍光眼底造影マニュアル
・加齢黄斑変性:診断と治療の最先端(眼科診療クオリファイ)
・眼科学
・眼底血管造影実施基準(改定版) など

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