眼圧が高いと緑内障になりやすくなります。逆に眼圧が低いほど、緑内障にはなりにくいです。
したがって眼圧が低いことは緑内障にとっては基本的にはよいことです。
一方で、眼圧が低すぎるとよくないこともあるので以下で書いていきます。
低眼圧とは 眼圧が正常値以下
眼圧の正常値は10-20mmHgです。
この正常値より眼圧が低ければ低眼圧ということになりますが、目にとって悪影響が出てくる低眼圧は5mmHg以下が多いので、5-6mmHg以下ぐらいを低眼圧ということが多いです。
また、後述しますが、眼圧は主に房水によって決まりますが、房水の流れる先にある上強膜静脈の圧力である7-9mmHgより、眼圧は普通は低くなりません。
つまり、7-9mmHg程度の眼圧であれば、低いけれど問題がないことがほとんどである(むしろ緑内障にとっては非常によい眼圧である)一方、5-6mmHg以下となると低眼圧と言え、何かしらの悪影響が出る可能性があります。
眼圧を決める因子と眼圧が変わる原因
眼圧は主に、眼内で産生される房水(ぼうすい)という水分によって決まります。
房水は
- 眼内の毛様体で作られ眼内へ入っていき
- 隅角、線維柱帯から眼外へ流れ出ていく
という流れ道があります。
- 眼内で房水が産生されるとそれにより眼圧は上がる
- 房水が眼外へ流れ出るとそれにより眼圧は下がる
これらのバランスによって、通常眼圧は10-20mmHgに維持されています。(正常眼圧)
これらのバランスが崩れると、眼圧が高くなったり(高眼圧)、低くなったり(低眼圧)します。
眼圧の変化は、
- 房水の作られるスピードが
- 早い→高眼圧に
- 遅い→低眼圧に
- 房水が眼外へ出るスピードが
- 早い→低眼圧に
- 遅い→高眼圧に
というようになります。
低眼圧が生じる原因
通常の目の状態では、7-9mmHg以下にはなりません。
眼圧が下がる原因としては、上述の
- 房水が作られるスピードが遅い、房水が作られない
- 房水が眼外へ出るスピードが早い
の2種類になります。
①のパターンは、眼球が外傷を受けたり、眼内で強い炎症を生じたり、網膜剥離が進行したりすると、毛様体による房水をつくる機能が落ち、房水が作られず、低眼圧となることがあります。
②のパターンは、通常の房水の流れ道としては先ほど述べた通り、眼圧は7-9mmHg以下にはなりません。それ以上に眼圧が下がっているケースとして、緑内障手術後の過剰濾過や、白内障手術、硝子体手術などで眼内の房水が傷口などから外へ漏れ出ている場合、角膜穿孔・眼球穿孔・眼球破裂などで房水を含む内容物が外へでてしまっているときです。
低眼圧で生じる5つの状況
低眼圧で生じる目への影響で、よくない状況・結末を5つ紹介します。
- 前房消失
- 低眼圧黄斑症
- 脈絡膜剥離
- 易感染性
- 眼球癆(がんきゅうろう)
前房消失
前房が消失すると、虹彩が角膜内皮に触れることで角膜内皮障害を起こすことがあります。
また、前房消失により隅角が閉塞し、周辺虹彩前癒着を起こし、低眼圧により前房消失していたのに、今度は難治性の高眼圧になることがあります。
低眼圧黄斑症
低眼圧は簡単にいうと眼球がベコベコで張りがない状態です。
張りがない状態だと、内部にくしゃっと潰れてシワが寄っているような状態です。
低眼圧黄斑症は、低眼圧により眼球内部の網膜にシワが寄った状態で、それにより視力が低下する状態です。
一次的であれば改善しますが、長期間網膜にシワがある状態だと、見え方に後遺症を残すことがあります。
脈絡膜剥離
同様に、眼球がベコベコの状態で、眼球が内側にへこんでいる状態です。
へこみ過ぎて眼球の内側と内側がくっついた状態をkissingといい、通常そこまで放置することはありませんが、くっついて外れなくなってしまうと手術が必要となります。
易感染性
易感染性とは、細菌、真菌、ウイルスなどに感染しやすい状態をいいます。
眼内手術後で眼圧が低い状態は、眼球内部と外の圧力差により、傷口から眼球内部へ外のものが入り込みやすくなります。
眼球内に主に細菌や真菌が入り込んで感染が成立すると、感染性眼内炎という状態になります。
眼内炎は最悪失明する可能性があり、場合によっては眼球摘出が必要となることもあります。
眼球癆(がんきゅうろう)
眼圧が維持できず低い眼圧が続くと、最終的に眼球が小さく萎縮していき、眼球癆となることがあります。
眼球癆の状態では見えなくなるだけでなく、ときに痛みを伴うため、痛みを取る目的で眼球摘出を行う場合もあります。
まとめ
- 低眼圧は約5-6mmHg以下のことをいう
- 低眼圧は房水産生低下、房水流出増大で生じる
- 低眼圧はさまざまな合併症を引き起こす可能性がある
- 低眼圧では眼球の形状を保てているかを確認する(前房があるか、脈絡膜剥離がないか、網膜などに皺がよっていないか)
- 眼内炎となると最悪失明する場合がある
- 低眼圧が持続すると眼球がつぶれ眼球癆となる
低眼圧の対処法に圧迫眼帯というものが昔からありますが、やり方が適切でないと角膜障害を起こしたり、低眼圧が遷延したりするため、なかなか難しい処置です。
コメント