弱視の定義・種類と治療 ロービジョンとの違い

弱視は、”弱”い視力の”視”と書き、見え方における弱い目を意味しますが、正確には見え方の弱い強いではなく、視力の成長が止まってしまった目のことをいいます。

一般的には弱い目、弱視=低視力として、ロービジョンとほぼ同義に使われていますが、医学的には意味は異なります。

目次

弱視の定義

弱視は医学的用語かつ、一般的にも使われる用語であり、それぞれで意味が異なります。

  • 医学的弱視
  • 社会的弱視

社会的弱視

一般的に使われる弱視は社会的弱視のことで、低視力・ロービジョンとほぼ同義です。つまり、視力が弱いこと、学校教育にあたって特別な措置を必要とするような視力、視力の程度が正常と準盲の中間程度、などという視機能が弱い・低い状態のことをいいます。

※社会的弱視:視力が悪いために通常の教育を受けられない、生活に支障があるなど、なんらかの補助が必要な低視力

医学的弱視

一方、医学的弱視は、視機能の発達時期(子ども)において光が適切に眼内に入らないことで、視力が最後まで成長せず途中で止まってしまった状態を意味します。止ってしまった視力がいくらなのかは規定はありません。0.1でも0.3でも0.5でも、他に病気がなくて視力の成長期に止まってしまった視力があれば、それは弱視と呼びます。(ただし一般にはある程度低い視力のことを指しやすいです)

以下、引用も載せておきます。

「通常の教育をうけるのが困難なほどの低視力」という意味で一般的に使われていますが、医学的には「視力の発達が障害されておきた低視力」を指し、眼鏡をかけても視力が十分でない場合をさします。

日本弱視斜視学会

まとめると、

  • 視力の成長・発達が途中で止まってしまった状態(医学的弱視)
  • 通常の教育を受けるのが困難な程度の視力(0.3未満)(社会的弱視≒ロービジョン)

ということになります。

弱視は子どものときに起こる

視力の成長は子どもの時期に起こるので、弱視という言葉は基本的に、子どもの時期に起こったことを意味します。

視力は、

  • 視力が成長する時期(生後~小学生低学年程度まで)に
  • 視覚情報が適切に網膜へ到達すること

で成長していきます。これらが妨げられると視力が低い状態で一生それ以上よくならない状態となり、それを弱視と言います。

弱視の種類

前述したようにまず大きな分類として、一般的に使われる弱視(社会的弱視)と、本来の医学的意味の弱視に分かれます。

  • 社会的弱視 → 一般に使われている低視力の意味
  • 医学的弱視 → 本来の弱視の意味

そのうちの医学的弱視において、視力が成長しない原因として大きく以下の4つの分類があります。

  1. 屈折異常弱視
  2. 不同視弱視
  3. 斜視弱視
  4. 形態覚遮断弱視

屈折異常弱視

両眼が同程度の度な屈折異常(近視・遠視・乱視)により、網膜中心窩への結像ができず視力が発達しない状態。遠視3~6D以上、近視5D以上、乱視3D以上で生じやすい。

つまり、近視・遠視・乱視が強すぎると弱視になりやすいということです。これらが強すぎると、適切な像が網膜に結像せず視界がぼやけすぎていて、視力が成長しません。(適切に網膜に光が届いていない)

不同視弱視

屈折値(近視・遠視・乱視の程度)に左右差があることで視力発達に左右差がある状態。より正視に近い、見やすい目が優位眼となり、反対眼の視力発達が妨げられる。遠視2.5D以上、近視4D以上、乱視2.5D以上で生じやすい。

つまり、屈折(近視や遠視、乱視)の左右の差が大きいと、ぼやけていない見やすい方の目でばかり「見る」ようになり、反対の目を(脳が)使わないように認識して(ぼやけるから)、視力が成長しなくなる状態です。(片眼に適切に光が届いていない+片眼を使わなくなる)

弱視にならない程度の左右差は、モノビジョンとして慣れると老眼などを感じにくく便利な目でもあります。

斜視弱視

斜視による非優位眼に抑制がかかることで生じる。内斜視・外斜視・上下斜視性がある。交代視ができれば両眼とも視力は成長するが、固視眼が定まってしまうと非優位眼が抑制され視力発達が妨げられる。

つまり、斜視(目の位置がずれた状態)では、真ん中の位置からずれている方の目を使わなくなり、視力が成長しなくなるということです。(光は入っているが、視界がダブってしまうため、脳内で片目を使わないようにしてしまう=抑制

形態覚遮断弱視

視覚情報刺激の遮断により視力発達が障害された状態。先天性眼瞼下垂、先天白内障、角膜混濁などで生じる。両眼性と片眼性で緊急度が異なり、片眼性のほうが緊急性が高い。(片眼性で生後6-8週、両眼性で生後10-12週程度)

視力の成長には、光が「適切に」網膜に結像するように眼内に入ってこないといけないですが、形態覚遮断は「そもそも光が入ってきていない」状態です。完全に遮断されている状態だと、目の成長はより強く阻害されます。(ぼやけるなどの話ではなく、そもそも光が遮断されて入っていないということ)

つまり、子どもに眼帯などをすると、その目の視力の成長が止まり弱視となる可能性があります。

弱視と言わないパターン

子どもの時期の視力成長が止まってしまったことを弱視と言いますが、器質的異常(形態的な異常)がある場合は、弱視とは言いません。先天白内障や先天性眼瞼下垂は器質的な異常ですが例外で、「光が入るのを遮断している」という意味で、それによる弱視は形態覚遮断弱視に分類されます。

コロボーマ(網膜・脈絡膜が欠損している病気)、黄斑低形成、網膜剥離、先天性の視神経の病気、などは、光は入ってきてはいますが、光が入っている・入っていないが原因ではなく、その他の理由で視力に影響しているので弱視とは言いません。

つまり、弱視は正確には

  • 光が目のなかに入ってきているか(形態覚遮断)
  • それがぼけない形で適切に入ってきているか(屈折、不同視)
  • 左右差がある場合、見にくいほうの目を脳内で抑制していないか(不同視、斜視)

という点が重要になってきます。

とは言いつつも、あまり細かく気にしている人は多くはないように感じますが。

弱視の治療

視力の成長する時期を過ぎたら視力は上がらなくなります。なので、弱視治療は子どものときにしかできません。また、治療を開始した時期や視力状態により、治療してどこまで視力が良くなるかは、細かいことはよくわかりません。ですが、子どもの時期にしかできないので、できる限りは頑張っていただくしかありません。(家族の協力が必要です

治療は、以下の3つになります。

  1. 形態覚遮断を解消し(早急に)
    →治療は手術などです
  2. 屈折異常を矯正し
    →治療はメガネを合わせ、そのメガネをできる限りずっと掛けることです
  3. 見やすい方を隠し(眼帯・アイパッチ)、見にくい方で見る訓練をする
    →治療は見やすい目を隠すことですが、子どもは嫌がるのが普通ですので家族の協力が必要です

斜視の場合は斜視治療(メガネ矯正など)も行いますが、斜視の治療より視力の改善を優先することが原則とされています。

ということで

治療は医療者側が行うこともありますが(手術、メガネ合わせなど)、その後は基本的に本人が頑張るしかありません。それにはご家族が子どもの様子を見て、ご家族が眼帯をつけてあげるなど、家族の協力的な姿勢が必要です。

メガネ作成は補助が出る

弱視の子どもには基本的にメガネ矯正が治療となります。その際のメガネの代金は、保険適用で補助がでます。

詳しくは以下でまとめています。

眼帯・アイパッチについて

述べてきたように、子どもに眼帯をすると、形態覚遮断弱視として眼帯をした目の視力の成長が止まり弱視となる可能性があります。

一方、弱視の治療として、見やすい方の目を眼帯・アイパッチをして、見にくいほうで見るためのトレーニングがあります。

眼帯は一般的には目の周囲の傷の保護や、見た目を隠すために使われますが、子どもに関しては弱視となる危険性があるとともに、弱視の治療としても使わるという、使い方が難しいものになります。

子どもに関しては必ず眼科医の診察を受けて眼帯をしていいか、すべきかなどを確認しましょう。

まとめ

  • 一般的な弱視の意味は社会的弱視≒低視力、ロービジョン(視力0.3未満)
  • 医学的な意味の弱視は、子どもの頃に視力の成長が止まってしまったこと
  • 近視や遠視、乱視が強すぎたり、左右の目のピントの差、斜視があるとなりやすい
  • 形態覚遮断弱視の原因は生後すぐ認めることが多く、緊急性が高い

弱視は「成長が止まってしまった視力の目」のことです。

しかし一般的に使われる意味では「低視力・ロービジョン」とほぼ同義です。(ロービジョンに関しては以下でまとめています。)

視力は適切な時期に、適切に光が入ってくることで成長します。子どもに眼帯をつけることはできるだけしないようにしましょう。

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