低視力(low vision:ロービジョン)とは、その名の通り「低い視力」のこといいます。
一部の眼科ではロービジョン外来という専門外来を設けており、ロービジョンの患者の生活面に関わる外来があります。低視力よりはロービジョンという表現のほうが使われていると思います。
低視力という分類
低視力・ロービジョンは失明とまではいかないけれど視力が低い状態です。
日常であえて「低視力・ロービジョン」という表現を使うことは少ないですが、一般の人からした視覚障害者への理解は「視覚障害=全盲」であることが多く、日常生活や就労などの場で理解が得られにくい視力の人たちがいます。そのような人たちが「ロービジョン」という感じになります。
つまり、完全な失明(全盲)・光覚なし(医学的失明)であれば、「見えない人だから」と優しく理解を示せる一方、低視力・ロービジョンの人に対しては、「え?ちょっと見にくいとは言え、見えているんでしょ?あまり視力低くないよね?甘えだよね?」的な感覚があるということです。見え方による不自由は本人にしか分かりません。
低視力の定義・視力
低視力(low vision)の視力値は、以下のように定められています。
- 良い方の眼の視力が0.05~0.3未満(WHO基準)
- 良い方の眼の視力が0.1~0.5未満(米国基準)
失明の基準がWHOと米国基準では以下の数値になりますので
- WHO基準:良い方の眼の視力が0.05未満
- 米国基準:良い方の眼の視力が0.1以下
あたり前ですがそれよりは高い視力になります。WHO基準と米国基準の「視覚障害」の視力基準は以下のようになります。
世界の視覚障害の基準
WHOでは低視力と失明をまとめて視覚障害と定義されており、それらをまとめると以下のようになります。
WHO基準
良い方の目の現視力presenting vision(通常使用している矯正方法による視力・なければ裸眼視力)が
- 視覚障害 :視力0.3未満
- 低視力:中等度の視力障害(0.3~0.1)、重度の視力障害(0.1~0.05)
- 失明 :視力0.05未満
米国基準
- 視覚障害 :視力0.5未満
- 低視力:視力0.5~0.1
- 失明 :視力0.1未満
視力が最高矯正視力なのか、現視力なのかは他の記事でも何度かお伝えしていますが、WHO的には現視力を用いています。
日本の視覚障害の基準
日本における視覚障害の基準は、障害者手帳による基準と、障害年金による基準があります。
ロービジョンケア
現在の視機能を最大限に活かして、生活の質を上げることが目標とします。
「メガネをかけても0.1しか見えない」とあきらめるのではなく「メガネをかけて0.1見ることができる方に、ロービジョンエイド(視覚補助具)を使うこと等で、新聞等がより見やすくなる環境を考えること」
ロービジョン|Wikipedia
視機能・視力回復が医学的な治療を行っても難しい人に、その視機能で諦めるのではなく、その次の手段として、現在での視力・視機能での生活の質を上げる方法を考えます。
矯正メガネ・遮光メガネ・弱視メガネなどの補装具や、拡大読書器・音声機器・点字器・パソコン、スマホなどの色調調整など(当サイトはあまり色調を意識してません・・・)、いろいろな方法があります。
障害者手帳の級を取得できると補助やサービス、割引を受けることができますが、級に満たなくてもロービジョンケアは受けることができますし、視覚用の用具を使うこともできます。
まとめ
- ロービジョンは失明よりはよい視力だが低い視力・視機能の状態
- 失明と違って理解が得られにくい背景がある
- 今の視力でより生活しやすい方法を探すロービジョンケアがある
医療におけるメインは治療ですが、治療ができない人、治療を終えて障害が残った人に対するアプローチとして、眼科においてはロービジョンケアがあり、大切な分野の一つだと思います。
「これ以上はよくなりません」で説明を終えてしまうと、言われたほうは落胆しかないですよね。そこからの一手で患者さんの不安を少しでも減らしかつ実際にQOLを上げるための方法を提示してあげるのも、専門職の仕事の一つではないでしょうか。
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