Vogt-小柳-原田病(原田病、VKH) 原因・症状・診断・治療

Vogt-小柳-原田病(Vogt-Koyanagi-Harada desease : VKH)について。

記載がない書籍もあるが、そこそこ見かける所見として、急性の近視化・浅前房がある

目次

概要・病態

原因不明の急性全身性の疾患で、メラノサイトが存在する部位(眼、毛髪、皮膚、内耳、髄膜)に炎症性病変が出現する。

有色人種、特に黄色人種に多く、白色人種では稀である。

  • 好発:20-30代に多い
  • 性差:なし
  • 日本での有病率は約1/20万人

原因

原因は不明だが、メラノサイト特異抗原に対する自己免疫反応と考えられている。

発症2週間以内に約半数に感冒様症状を認めるため、なんらかのウイルス感染が引き金になっていると推測されている。

症状

眼症状として

  • 両眼性の急激な視力低下、歪視など

全身症状として

  • 前駆症状として約2週間前に感冒様症状
  • 無菌性髄膜炎による髄膜刺激症状として頭痛、吐き気、項部硬直など
  • 内耳症状として耳鳴り、感音性難聴、めまいなど
  • 回復期に皮膚症状として毛髪の白髪化、脱毛、皮膚脱色素班など

所見・診断

眼所見として

  • 急性肉芽腫性汎ぶどう膜炎
    前眼部の虹彩毛様体炎は初発時には軽度であることが多いが、再発時には強い肉芽腫性虹彩毛様体炎を示すことが多い。(豚脂様角膜後面沈着物を認める) 眼底は視神経乳頭の発赤・腫脹、網膜皺壁、漿液性網膜剥離などを認める(乳頭浮腫型と後極部剥離型)
  • FAにて後極中心に多発する蛍光漏出点を認め、網膜剥離部に一致したpoolingを認める
  • ICGAにて脈絡膜大血管の狭小化、脈絡膜灌流遅延、多発する斑状ブロック(dark spots)を認める
  • OCTにて脈絡膜の肥厚、網膜色素上皮の波打ち、隔壁を伴う網膜下液、視神経乳頭腫脹などを認める
  • 発症後3カ月以上経過すると、半数以上の症例でメラニン色素が脱失して夕焼け状眼底を示す。また眼底周辺部に多発性の白色小円形脱色素班・萎縮巣(Dalen-Fuchs斑)を認める。角膜輪部色素の脱失を認める(杉浦徴候)

急性の近視化について

原田病は炎症の主体がぶどう膜であり、脈絡膜炎として上記所見が一般的に表れるが、炎症が毛様体まで波及すると、浅前房化が生じる。

UBM(超音波生体顕微鏡)にて毛様体を確認すると、毛様体の浮腫、毛様体剥離などの所見を認める。これらは毛様体への炎症の波及により、毛様体自体の血管透過性亢進に伴う浮腫・剥離が原因として考えられる。

そうすると毛様体剥離に伴う所見として、チン小帯の弛緩→水晶体の前方移動→浅前房→近視化が生じる。(炎症の改善に伴い改善していく)

全身所見として

  • 無菌性髄膜炎、髄液検査にて単核球(リンパ球)の増加
  • 採血のHLA classⅡ検査にてHLA-DR4がほぼ全例で陽性(しかし日本人の25%はHLA-DR4陽性であり、HLA-DR4が陰性であればVKHは否定的である)
  • 回復期に皮膚所見として毛髪の白髪化、脱毛、皮膚脱色素班など

原田病の診断基準

  1. 穿孔性眼外傷・内眼手術歴がない(交感性眼炎症の否定)
  2. 他の眼疾患を示唆する臨床所見・血液検査所見がない
  3. 両眼に初期症状または晩期症状を認める
    ■初期症状:a~cを認めること
    a びまん性脈絡膜炎による局所性の網膜下液または胞状漿液性網膜剥離(虹彩毛様体炎、硝子体炎、視神経乳頭発赤の有無は問わない)
    b 蛍光眼底造影検査による局所性の脈絡膜灌流遅延、多発性点状蛍光漏出、斑状過蛍光領域、漿液性網膜剥離に一致した蛍光貯留、視神経乳頭の過蛍光
    c 超音波Bモード検査による後部強膜炎ではないびまん性脈絡膜肥厚

    ■晩期症状:夕焼け状眼底、杉浦徴候(角膜輪部色素の脱失)
  4. 髄膜炎(倦怠感、発熱、頭痛、嘔気、腹痛、後部硬直のうち複数所見)または、耳鳴りまたは、髄液細胞数増多を認める
  5. 脱毛または、白髪または、白斑を認める

①~③のみ満たす:疑い型
①~③および④または⑤を満たす:不完全型
①~⑤を満たす:完全型

→2001年国際診断基準参照

治療・予後

網膜剥離は無治療でも数か月で自然消退するが、虹彩毛様体炎は遷延する。

視力も無治療でも改善傾向を示すが、回復までに数か月要すること、網脈絡膜萎縮が高度に生じ視力障害を残すことがあることから、ステロイドパルス療法が最も一般的に行われている。

前眼部炎症に対してはステロイド点眼、散瞳薬を使用する。

ステロイドパルス後はステロイド内服療法に切り替え、内服量はゆっくりと漸減する(半年程度を目安)

3割程度の症例でステロイド減量中に再燃を認め、1-2割程度がステロイド離脱困難となる。そのような場合には免疫抑制薬やTNF阻害薬の併用を行う。

鑑別

MPPE
:ステロイドで増悪するため、必ず鑑別が必要。ステロイド使用歴の確認などが必要。

APMPPE
:通常は鑑別できるが、ときにOCTでVKH様の漿液性網膜剝離を認める。肉芽腫性ぶどう膜炎は来さない。夕焼け状眼底などの晩期症状も認めない。

ほか、後部強膜炎、uveal effusionなど。

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