子宮頸がんに対する新たな治療薬として、テブダック®(Tivdak)、一般名チソツマブ ベドチン(Tisotumab Vedotin)(製造販売元:ジェンマブ株式会社)が2025年3月27日に製造販売が承認されました。
こちらの薬剤では眼障害が高頻度に起こるとして、使用開始前に眼科医の診察が必要とされています。本剤使用による眼障害に関すること、予防点眼の内容について眼科医の視点でまとめていきます。
テブダックとは?
テブダックは子宮頸がんのうち、再発したものに使います。
効能また効果
がん化学療法後に増悪した進行又は再発の子宮頸癌
添付文書には上記記載があり、子宮頸癌のうち基本的に最初に使われる薬剤ではありません。初回の化学療法に対して効果が乏しかった場合、再発した場合に使う次なる手としての薬剤になります。
テブダックは抗体と薬物をつなげたADC(抗体薬物複合体)と呼ばれる薬です。3週間間隔で点滴投与します。
テブダックの副作用、眼障害
テブダックの副作用としては眼障害が重要で、添付文書の一番最初にも大きく以下のような記載がありあす。
1. 警告
1.2 視力低下を伴う眼障害があらわれ、失明に至る可能性があることから、眼科医との連携の下で使用し、本剤の投与開始前に眼科医による診察を実施すること。また、投与中は定期的に眼の異常の有無の確認(問診、視診、眼球運動の評価等)を行い、患者の状態を十分に観察すること。異常が認められた場合には投与を中止するなど適切な処置を行うとともに、眼科医による評価を行うこと。
- 視力低下を伴う眼障害
- 失明に至る可能性がある
- 眼科医と連携し、投与開始前に眼科医による診察を実施する
上記の理由で、使用開始前には基本的に眼科医へ紹介があります。なので眼科医も知っておく必要があります。具体的な有害事象として、
- 結膜炎(約30%)
- 角膜炎(約15%)
- ドライアイ(約13%)
- 眼瞼炎(約4%)
- 眼脂(約4%)
があります。重複分もありますが、約50%に眼科領域の有害事象が発現したと報告されています。
薬剤投与中に必要な点眼薬
テブダックは高頻度に眼障害を起こすことから、テブダックで治療中に点眼薬を使う必要があります。全部で3種類の点眼薬が必要であり、その薬とは
- 副腎皮質ステロイド点眼
- ブリモニジン塩酸塩点眼
- ドライアイ治療点眼
の3種類です。それぞれ、
- ステロイド点眼はテブダック投与前日、当日、1日後、2日後の4日間
- ブリモニジン点眼はテブダック投与直前に1回
- ドライアイ点眼はテブダック当日から30日目まで
となります。テブダックは3週間隔の点滴投与のため、ドライアイ点眼は基本的にずっと付け続ける形になると思います。
副腎皮質ステロイド点眼
副腎皮質ステロイド点眼は炎症を抑えるために使用します。点眼薬の種類として、
- デキサメタゾン0.02%, 0.05%, 0.1%
- ベタメタゾン0.01%, 0.1%
- フルオロメトロン0.02%, 0.05%, 0.1%
があります。ステロイド点眼の強さとして、デキサメタゾン=ベタメタゾン>フルメトロン、となりますが、どのステロイド点眼を使うかについては決まりはありません。
ステロイド点眼はテブダック投与前日、当日、1日後、2日後の4日間 の使用のみであるため、ステロイド点眼自体による副作用(主に眼圧上昇)はあまり心配はなさそうですが、基本的にテブダックにおける有害事象は眼表面のものであるため、まずは弱めのフルオロメトロンでよいと思います。濃度は0.1%でよいと思います。
ブリモニジン塩酸塩点眼
ブリモニジン点眼は商品名アイファガン®の1種類のみです。アイファガンの効果効能は眼圧下降ですが、その際に血管収縮をさせる作用も持つため、今回使われています。(血管を収縮させてテブダックが眼表面で漏れにくくして副作用を予防する、ということらしいです。)
アイファガンが含まれる点眼としては、合剤を含めれば他に
- アイラミド®
- アイベータ®
- グラアルファ®
の3種類がありますが、これは眼圧下降目的としての合剤ですので、今回の使用目的は血管収縮作用ですので、使うことはありません。1滴だけ使っておしまい、ということですね。3週後の次の投与のタイミングでも点眼してよいと思いますが、あまりに長い期間点眼ボトル1本だけで継続するのは、不衛生ですので気をつけましょう。基本的には1ヶ月たった点眼ボトルは捨てることを推奨します。
ドライアイ治療点眼
- ヒアルロン酸0.1%, 0.3%
- レバミピド
- ジクアホスルナトリウム
ドライアイ点眼としては上記のものがありますが、こちらもどれを使うかは特に決まりはありません。一番使いやすいのはヒアルロン酸0.1%でしょう。
TS-1などの経口抗がん剤は、薬剤成分が涙液に出てくる影響で眼表面の合併症をきたすため、洗い流す目的で点眼することが推奨されていますが、その際に使うのは人工涙液点眼(ソフトサンティアなど)が勧められています。今回も薬剤による似たような機序かと思いますが、今回使うのはドライアイ点眼になるようです。
投与前の眼科医の診察では何をするのか?
- 視力
- 眼圧
- 眼底検査
- ドライアイの有無
- 結膜・角膜所見(染色含む)
を検査して、「眼科コンサルテーションシート~投与開始前~」というものを記載する必要があります。(→https://files.genmab.com/genmab-lab-jp/resources/pdf/tivdak/tivdak_opt_consultation.pdf?utm_source=qrcode&utm_medium=material&utm_id=tv_treatment_manual)
その後は主治医の判断で治療を開始し、眼による自覚症状、有害事象がありそうであれば再度眼科受診をする、という形のようです。
まとめ
- テブダックは子宮頸癌に使われる新たな薬剤
- 結膜炎、角膜炎などの眼障害が高頻度に生じる
- 使用開始前に眼科診察が必要
- 薬剤使用中は、ステロイド点眼、ドライアイ点眼、ブリモニジン点眼を使う




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