網膜の病気になった場合、その治療がうまくいっても、後遺症を残す可能性があります。
網膜は脳と同じく神経細胞、神経線維からできているため、脳梗塞後に麻痺などの後遺症が残ることがあるのと同様に、網膜の障害後には見え方に後遺症が残ることがあります。
手術などの治療がうまくいっても後遺症を残すことが目の状態によってはあり、見え方に後遺症が残ったからといって治療がうまくいかなかったからだ、とはなりません。治療がうまくいっても後遺症が残ることがあります。
網膜と脳は神経でつながっている
ものが見える仕組みの記事で詳しく説明していますが(以下参照)
視覚情報は、網膜→視神経→脳へと送られ、脳で物を見ていることになります。
この情報の伝達は神経細胞・神経線維が行っており、網膜から脳へは神経がシナプスを形成し情報伝達を行っております。
つまり、このどこかが障害されるだけで「見えなく」なります。
脳梗塞の後遺症?網膜の後遺症?
脳梗塞や脳出血などによって身体に麻痺などの後遺症を残すことがあることは、よく知られていると思います。
簡単にいうと、神経細胞が傷付くと完全な元の状態には戻りにくいからです。それが障害として残り、後遺症という表現をします。
網膜は先ほど述べた通り、脳へ情報を伝える役目の神経細胞からできており、神経という点では、脳と同様です。
したがって脳と同様に、網膜も傷付くと完全には元の状態には戻りにくく、見え方の障害、後遺症が残ることが多いです。網膜への病気の影響が大きければ、その網膜の病気の治療がうまくいっても、後遺症を残すことはあります。
網膜の病気は健康な人にも起こる
目の病気は身体の状態が悪い人に起こるものもありますが、身体の状態に全く関係なく健康な人に起こる病気も多いです。
代表的な病気は、網膜剥離です。
網膜剥離は比較的若い人に起こります。(20代~60代程度に多いです)
放置すると失明しますし(治療が遅くなりすぎると治療しても回復しません)
すぐに治療をしても、そのときの目の状態によっては見え方に後遺症を残します。
網膜で一番重要なのは黄斑部
網膜の中心部は、黄斑部(おうはんぶ)といいます。さらにその中心の部分を中心窩(ちゅうしんか)といいます。
黄斑部は、物を見ている視線の中心部分に対応しています。
つまり、黄斑部が障害されると、視線の中心付近の見え方に異常を生じます。
何か作業をしたり、文字など細かいものを認識する上で、視線の中心部分は非常に大切です。試しに視線の中心から少しずらした位置で本の文字を読もうとしても、なかなか読むことが難しいはずです。
このブログを今読んでいる人は、
この文章を目で追いながら文字を読んでいることになります。この文章を読んでいる状態で、目線はこのままで3行分上の文字がなんて書いてあるか読めますか?はっきりとは読めないはずです。
これが中心視力と周辺視力の違いです。
黄斑部が痛む前に治療を
なので、眼科医としては黄斑部が痛む疾患は早めに治療したほうがよいという認識が基本であり、黄斑部が痛む病気はなるべく積極的に治療を勧めます。
網膜剥離の場合、剥がれている範囲が黄斑部まで及んでしまうと、その影響が残ってしまうことがあります。手術が綺麗に終わり網膜剥離が治っていても、歪んで見えたり、視力がやや低い状態となってしまうことがあります。
まとめ
- 網膜は脳と同じく神経からできている
- 脳梗塞後に後遺症が残る可能性があるのと同様に、網膜障害後は見え方に後遺症が残る可能性がある
- 治療がうまくいっても見え方に後遺症は残り得る
- 視線の中心に見え方の後遺症が残ると煩わしく、そうなる前に治療が受けられるとよい
「網膜の病気は見え方に後遺症が残る」可能性があることを覚えておいてください。
後遺症を残さないような網膜の病気もありますが、網膜の中心である黄斑部の病気は、なるべく早くに治療を行ったほうがよいです。
また、網膜→視神経→脳と情報が伝わりますが、これらは全て神経でつながっているため、視神経が痛んでも後遺症が残りますし、脳の障害ももちろん後遺症が残る可能性があります。
網膜の病気はなるべく早期に適切に治療しましょう。
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