散瞳・縮瞳それぞれの支配神経、受容体、薬剤、疾患などのまとめです。
禁忌に関してはこちらを参照
目次
虹彩筋と毛様体筋
瞳孔の大きさは虹彩筋(瞳孔括約筋、瞳孔散大筋)により制御される。毛様体筋にも受容体はあるため、点眼薬による影響を受ける。
瞳孔散大筋
- 瞳孔散大筋は瞳孔径を大きくする方向に働く
- 瞳孔散大筋は交感神経支配(アドレナリンα1受容体)
- 瞳孔散大筋←長毛様神経←鼻毛様神経←眼神経(三叉神経第1)←毛様脊髄中枢(C8-T2頸部交感神経節)←交感神経中枢(視床下部)
※アドレナリン受容体はα1A~D, α2A~C, β1~3がある。
瞳孔括約筋
- 瞳孔括約筋は瞳孔径を小さくする方向に働く
- 瞳孔括約筋は副交感神経支配(アセチルコリンM3受容体)
- 瞳孔括約筋←短毛様神経←毛様体神経節←副交感神経(動眼神経)←動眼神経副核
※アセチルコリン受容体はムスカリン受容体とニコチン受容体に分かれ、ムスカリン受容体はM1~M5まである。
毛様体筋
- 交感神経(アドレナリンβ受容体)刺激で弛緩(遠方視)
- 副交感神経(アセチルコリンM3受容体)刺激で収縮(近方視=調節)
※交感神経系において虹彩筋(瞳孔散大筋)はアドレナリンα1受容体により反応するが、毛様体筋はアドレナリンβ受容体のため、α1交感神経刺激点眼(フェニレフリン)では瞳孔にのみ作用する。
散瞳
散瞳は大きく以下の2つの影響から生じる。
- 瞳孔散大筋の収縮
- 瞳孔活躍筋の麻痺
散瞳薬
瞳孔散大筋(交感神経支配)を刺激する、瞳孔括約筋(動眼神経の副交感神経支配)を麻痺させることで散瞳する。副交感神経麻痺薬は毛様体筋にも作用するため調節麻痺が生じる。
交感神経刺激薬
- フェニレフリン(ネオシネジン®):α1選択的
散瞳作用は副交感麻痺より弱い、副交感刺激薬で拮抗できる - アドレナリン(ボスミン®):α1-2、β1-2に作用
内眼手術の灌流液に添加し術中散瞳維持目的に使用する
副交感神経麻痺薬(ムスカリン受容体拮抗薬)
- アトロピン:
1時間で散瞳 2週間調節麻痺
小児の完全屈折矯正 ~5歳は0.5%、6歳~は1%
アトロピン中毒症:顔面紅潮、口喝、頻脈 - シクロペントラート(サイプレジン®):
1時間で散瞳、1-2日持続 幻覚 - トロピカミド(ミドリン®):
20-30分で散瞳、5-6時間持続
※ミドリンP®=トロピカミド+フェニレフリン(交感神経刺激薬)
散瞳する主な疾患
動眼神経麻痺、Adie症候群、緑内障発作、外傷性散瞳(瞳孔括約筋断裂)、Fisher症候群、コカイン中毒、向精神薬など
縮瞳
縮瞳は大きく以下の2つの影響から生じる。
- 瞳孔散大筋の麻痺
- 瞳孔括約筋の収縮
縮瞳薬
瞳孔括約筋(動眼神経の副交感神経支配)を刺激する、瞳孔散大筋(交感神経支配)を麻痺させることで散瞳する。副交感神経刺激薬は毛様体筋にも作用するため調節(近方視)が起こる。
副交感神経刺激薬
- ピロカルピン(サンピロ®):ムスカリン受容体刺激薬
毛様体にもコリン受容体あり→毛様体筋収縮→線維柱帯けん引→流出路抵抗低下→眼圧低下 - アセチルコリン(オビソート®):アセチルコリン受容体刺激薬(ムスカリン+ニコチン?)
角膜透過性が低い→術中前房内投与で使う(適応外使用)
※緊張性瞳孔(Adie瞳孔):0.125%ピロカルピン(1%の4倍希釈)で縮瞳する(普通は縮瞳しない)
交感神経麻痺薬(効果は弱く一般的に使われない)
- ブナゾシン(デタントール®):選択的α1遮断薬
緑内障点眼 若干の縮瞳作用
縮瞳する主な疾患
Horner症候群、虹彩炎(虹彩後癒着)、橋出血(pinpoint pupil)、モルヒネ中毒、有機リン中毒、サリン中毒など
薬物中毒による散瞳・縮瞳
散瞳するもの
- ボツリヌス中毒(アセチルコリン放出障害、Clostridium botulinum嫌気性菌)
- 覚せい剤(アンフェタミン)
- 一酸化炭素中毒
- アルコール中毒
- 抗ヒスタミン、抗うつ、抗コリン
縮瞳するもの
- 有機リン(不可逆性コリンエステラーゼ阻害作用←分解を抑えてアセチルコリンを増やす)
- サリン(有機リン化合物)
- 麻薬(モルヒネ・ヘロインなどのアヘンアルカロイド)中脳動眼神経核のK受容体刺激
- 睡眠導入薬
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