眼科レーザー治療 網膜光凝固術の対象疾患・費用まとめ

眼科の外来で行う治療として、レーザー手術があります。

レーザーの機器自体もいくつか種類がありますが、今回はその中でも網膜に行う網膜光凝固術についての、保険診療上の点数や対象疾患についてまとめます。

目次

網膜光凝固術の保険点数、治療費用

網膜光凝固術の保険点数は以下のようになります。

K276 網膜光凝固術

  1. 通常のもの(一連につき)10,020点
  2. その他特殊なもの(一連につき)15,960点

(1) 「一連」とは、治療の対象となる疾患に対して所期の目的を達するまでに行う一連の治療過程をいう。例えば、糖尿病性網膜症に対する汎光凝固術の場合は、1週間程度の間隔 で一連の治療過程にある数回の手術を行うときは、1回のみ所定点数を算定するものであ り、その他数回の手術の費用は所定点数に含まれ、別に算定できない。

(2) 「2」その他特殊なものとは、裂孔原性網膜剥離、円板状黄斑変性症、網膜中心静脈閉鎖症による黄斑浮腫、類囊胞黄斑浮腫及び未熟児網膜症に対する網膜光凝固術並びに糖尿病性網膜症に対する汎光凝固術を行うことをいう。

診療報酬点数 眼科(令和4年版)

3割負担の人であれば、レーザーによる治療費は、1(通常)であれば約3万円、2(特殊)であれば約4.8万円かかります。

結構高額です。

片目でこの費用のため、両眼であれば2倍かかります。

コスト請求における注意点:片眼に対して1回のみ算定する

以下の注意があります。

同一眼における同じ病名、関連する病名に対して続けて行うレーザーは基本的に1回しか算定できまない

左右別々にレーザーをする際は、左右それぞれコスト請求できます。(左右それぞれに費用がかかります)

一方、片眼に対して複数回レーザーを行っていく場合がありますが、その際のコストは1回分になります。

例えば、糖尿病網膜症に対する汎網膜光凝固術は、通常3-4回にわけてレーザーを行うとされます。(一度に行うと時間がかかる上にレーザー後の炎症が強くでる可能性があるため) その3-4回に分けるレーザーですが、同じ病名に対する継続する治療になるので、1度しかコストは取れません。右眼、左眼で別々に1回ずつ算定できます。

同様に、網膜裂孔に対するレーザーを片眼に行い、その際に網膜格子状変性を見つけレーザーをする場合、通常は同じ日にレーザーをしておきますが、後々見つかったなど様々な理由で後日行う場合もあるかと思います。同一眼であれば、改めてコストを取ることはしないのが普通かと思います。

一方、既にレーザー済みで治療が終わっていた目で、のちに病状が悪化して再度レーザーが必要となった場合はコストとして算定できます。請求するかどうかは医師次第ではありますが。

「その他特殊なもの」の対象疾患は限られている

その他特殊なものは、以下の疾患になります。

  • 裂孔原性網膜剥離
  • 円板状黄斑変性症(加齢黄斑変性)→PCVに行うことがある
  • 網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫
  • 未熟児網膜症
  • 糖尿病網膜症

上記適応疾患から考えると、その他でレーザーを行う疾患として、BRVOや網膜裂孔のみ、格子状変性、網膜細動脈瘤などは「通常のもの」のコストとなります。

「その他特殊なもの」は、①RRD、②AMD(PCV)、③CRVO-CME、④ROP、⑤PDR

RRD:裂孔原性網膜剥離
AMD:加齢黄斑変性
CRVO-CME:網膜中心静脈閉塞症による黄斑浮腫
ROP:未熟児網膜症
PDR:糖尿病網膜症

網膜裂孔・網膜剥離のレーザーの適応とコスト

上述のように、網膜裂孔に対しては、①通常のコストを取ります。

一方で、裂孔原性網膜剥離に対しては、②その他特殊なものとして高いほうのコストを取ります。

この2つに疾患の違いは何か?となると、微妙なところです。

完全に牽引のない網膜円孔で、周囲に網膜剥離が起きていないのであれば、①でよいと思いますが、硝子体牽引による裂孔であれば、裂孔周囲は多少なりとも網膜剥離が起きていることが多いです。

レーザーが入らない場合は網膜剥離をきたしているし、その範囲が大きい場合はレーザーではなく外科的手術適応となります。しかしレーザーが入った場合、剥離範囲が極めて小さければレーザーで完治することもあります。

このような症例は悩ましいですが、②の特殊で算定してよいと思われます。

まとめ

  • 網膜光凝固術後(レーザー手術)の費用は2種類ある
  • 3割負担であれば、3万円or5万円程度かかる
  • 汎網膜光凝固で何回かに分けレーザーを行う場合、片目につきコストは1回のみ算定できる
  • 「特殊」で算定できる適応疾患は①RRD、②AMD(PCV)、③CRVO-CME、④ROP、⑤PDR

レーザー治療は予定で行うことがあれば、急遽行うこともあります。

特に網膜剥離の際は、急に行う場合が多く、急に3-5万の出費となると患者側も負担となります。

必要性を十分に説明して、理解していただく必要がありますね。

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