数は少ないですが、眼や眼周囲(まぶたなど)から生じる癌はあります。
今回は、もともと眼の癌ではなく、身体の癌があり、その身体の癌が原因で目に病気を起こす疾患についてです。(こちらも数は多くはありません)
これらは腫瘍随伴症候群といい、腫瘍があることによって間接的に引き起こされる病気です。
腫瘍随伴症候群とは?
腫瘍細胞自体の影響(浸潤や転移、播種など)ではなく、腫瘍によって間接的に引き起こされる病態を、腫瘍随伴症候群といいます。
悪性腫瘍は、
- その悪性腫瘍自体が大きく増大し広がっていく(浸潤)
- 腫瘍細胞が血流などに乗って広がっていく(転移)
- 腫瘍細胞がまき散らかさせることによって広がっていく(播種)
という3パターンで、広がっていきますが、
腫瘍随伴症候群では、これらは関係がありません。
つまり、病気が出ている部位には腫瘍細胞はいません。(腫瘍細胞がある場合は「転移」になります)
腫瘍細胞はいないけれど、もとの腫瘍細胞が原因で、病気を発症している状態を腫瘍随伴症候群といいます。
1.癌関連網膜症(CAR)
癌によって生じる網膜症として重要な疾患の一つです。次に紹介するMARと似ていて、CAR、MARと覚えやすいかもしれません。
CARは肺がん、乳がんがある人に出現することが多く、進行すると両眼性の視力低下を引き起こします。
2.悪性黒色腫関連網膜症(MAR)
MARは名前の通り、悪性黒色腫(メラノーマ)が原因で発症する腫瘍随伴症候群です。
CAR同様に両眼に影響が出る可能性がありますが、症状としてはCARより弱いことが多いようです。
かなり珍しい疾患です。
3.BDUMP
BDUMPもかなり稀な疾患で、眼科書籍に載っていることも多くはありません。医学論文検索サイトにて検査すると、多少の報告が出てくる程度です。
CARとMARは網膜に影響がでますが、BDUMPではぶどう膜に影響がでます。ぶどう膜の影響が網膜にも及ぶため、両眼性の視力低下を引き起こします。
女性の泌尿器生殖器癌(卵巣がんなど)、男性の肺がんに生じることがあります。
腫瘍随伴症候群の検査・治療は?
いずれも明確な治療方法は決まっていません。
しかし、いずれも大もとの癌が原因であり、大もとの癌を治すことで改善する可能性があります。
また、身体の癌が見つかっていない状態で、先に目の症状が出ることもあります。
原因不明の視力低下、網膜症を見た場合、年齢等も考慮した上で、全身に異常がないか検査することも大切でしょう。
さらに、これらは身体の癌が原因の疾患であり、癌による生命予後はよくありません。目だけの症状で来た場合は、なるべく早く当該科へ紹介することが大切です。
まとめ
- 身体の癌によって生じる眼科疾患がある
- いずれも視力低下を起こすことがある
- 治療はおおもとの癌の治療をすること
- 癌が発見されていない状態で目の症状が先に出ることがある
いずれも稀な疾患であるため、疑ってかからないと診断は難しいです。
逆に、目だけの所見から疑って、全身検査をして、身体の癌を発見できた場合、かなりしっかりとしている眼科医だと思います。
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