眼虚血症候群と内頚動脈狭窄症 レーザー治療や予後について

眼虚血症候群(ocular ischemic syndrome: OIS)について。

ポイントは、

  • 網膜の慢性的な虚血によって糖尿病網膜症のような目の虚血性変化を来す疾患

です。

急激な虚血は網膜中心動脈閉塞症となります。

目次

概要・病態

主に内頚動脈から眼動脈の狭窄によって、網膜中心動脈が低灌流となり網膜が慢性的な虚血となり生じる疾患。

  • 慢性的な眼動脈の虚血
  • 基本的には内頚動脈~眼動脈の狭窄によるが、網膜中心動脈が慢性的な虚血になるような病態であれば、病態的には生じる

原因

内頚動脈~眼動脈が狭窄し低灌流となり、網膜が慢性的に虚血状態になることで生じる。

症状

初期には症状は認めないが、網膜新生血管からの硝子体出血による視力低下や、進行し前眼部虚血をきたし血管新生緑内障を生じれば不可逆的な視機能低下を生じる。

所見・診断

画像検査・生理検査

内頚動脈から眼動脈の狭窄を証明する必要がある。

  • 頸動脈エコー 
    →頚部頚動脈の評価に有用
  • 頭部MRA, CTA 
    →頭部頚動脈~眼動脈の評価に有用

両方検査しないと全体像はわからないため、両方検査する必要がある。

眼底所見

低灌流による慢性虚血の変化を生じる。左右差がある場合が多い。(両眼性20%程度)

  • 網膜血管の狭窄、静脈の拡張(蛇行は少ない)
  • (特に周辺部の)網膜点状出血、斑状出血(刷毛状出血は少ない)
  • (特に周辺部の)無血管野・新生血管
  • その他、軟性白斑、cherry red spot、黄斑浮腫なども生じることがある

前眼部所見

前眼部虚血による変化を生じる。網膜虚血がなくとも脈絡膜循環障害から前眼部虚血を生じることがある。(この場合は汎網膜光凝固を行っても予防できない)

  • 炎症所見
  • 虹彩萎縮、虹彩新生血管、血管新生緑内障
  • 瞳孔散瞳
  • 白内障 など

フルオロセイン蛍光眼底造影検査

  • 造影剤の充盈遅延(脈絡膜背景蛍光も遅延する)
  • 網膜毛細血管瘤、無血管野(周辺部→進行すると後極まで)
  • 網膜動脈からのびまん性蛍光漏出

網膜電図

  • a波b波ともに減弱・消失
  • 慢性虚血性変化として、糖尿病網膜症と所見が似ていたり、併存していることがある
  • 糖尿病網膜症が基本的に両眼性であることに対し、OISは片眼性であることが多い(両眼性もある)

治療

汎網膜光凝固を行い、新生血管を予防・消退させる。

硝子体出血や血管新生緑内障にはそれぞれ対応する治療を行う。

根本的な治療は動脈狭窄部位の拡張だが、狭窄部位や程度などにより治療適応は限られる。(頸動脈内膜剥離術、頸動脈ステント術、浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術など)

予後

脳梗塞や心筋梗塞を合併し生命予後に影響するため、脳外科、血管外科、循環器内科などと連携した加療が必要となる。生命予後は5年で死亡率40%(そのうちの60%が心筋梗塞、20%が脳梗塞)

視力も指数弁以下となることが多い。

まとめ

  • 眼虚血症候群は、慢性的な網膜の虚血で生じる
  • 急激な虚血は、網膜動脈閉塞症
  • 所見は糖尿病網膜症に似るが、違いはある
  • 内頚動脈狭窄は頚部と頭蓋内、両方検索する
  • 虚血性変化が強いため、全身状態も悪いことが多く生命予後も悪い

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