マイボーム腺機能不全のガイドラインが2023年2月に掲載されています。(検索すれば出てきます)
今回はマイボーム腺機能不全(MGD)について、ガイドラインから要点をまとめて記載しました。
目次
MGDの概要
- 慢性の眼不快感を起こす
- MGDからドライアイを引き起こし、眼乾燥感、疲労感などの症状を起こす
- 50歳以上の10~30%
- 治療は、眼瞼清拭、温罨法、うっ滞したマイボームの圧出
- 炎症所見がある場合は、抗炎症療法(点眼、内服)
- ドライアイを伴う場合は、ドライアイの治療も併用
MGDの分類
- 分泌減少型
- 先天性
- 閉塞性(原発性、続発性)
- 萎縮性(原発性、続発性)
- 分泌増加型
続発性のリスク・要因として、加齢、アレルギー性眼疾患、眼瞼炎、Stevens-Johnson症候群、眼類天疱瘡、眼GVHD、シェーグレン症候群、トラコーマ、薬剤性、化学熱傷
などがある。
分泌減少型MGDの診断基準
- 自覚症状
- 眼不快感、異物感、乾燥感、圧迫感、流涙など
- 眼瞼炎の以上およびマイボーム腺分泌物(meibum)の質的・量的異常
- マイボーム腺開口部のびまん性の閉塞所見
- 拇指や鉗子・鑷子による眼瞼圧迫にて、マイボーム腺開口部からのmeibumの、①圧出低下 or ②粘稠なmeibumの圧出を認める
参考所見
- マイボーム腺開口部周囲の血管拡張or眼瞼発赤
- 粘膜皮膚移行部の前方/後方移動
- 眼瞼縁の不整
- マイボグラフィーによる腺脱落
- 角膜異常所見(フルオレセイン染色異常、血管侵入、結節)
- BUTの短縮、異常
診断基準には含まれていませんが、上記所見は有用な所見となります。
MGDに関与する因子
- 加齢
- 男性および閉経後女性(性ホルモンのアンドロゲンが関与)
- アジア人
- VDT作業
- 喫煙
- コンタクトレンズ使用
- 緑内障点眼使用
- 糖尿病、酒さ、アレルギー性結膜炎、皮膚疾患、SJS、化学熱傷など
など
鑑別疾患、類縁疾患
- 眼瞼炎:眼瞼全体の炎症
- 眼瞼縁炎:眼瞼の縁の炎症、睫毛根部にカラレット(線維状の付着物)
- マイボーム腺炎:MGDで常に炎症が存在するわけではないため、区別
- 霰粒腫:マイボームのうっ滞によって引き起こされる慢性炎症性の肉芽腫
MGDの有病率
- 20代 11.8%
- 30代 5.6%
- 40代 21.6%
- 50代 32.8%
- 60代 41.9%
- 70代 48.4%
- 80代 63.9%
上記文献からは、有病率はかなり高いことがわかります。
MGDの治療
強く推奨する
- 温罨法・・・エビデンスの強さ A(強)
弱く推奨する
- 眼瞼清拭・・・エビデンスの強さ C(弱)
- meibom圧出・・・エビデンスの強さ C(弱)
- アジスロマイシン点眼・・・エビデンスの強さ B(中)
- ステロイド点眼・・・エビデンスの強さ C(弱)
- オメガ3脂肪酸内服・・・エビデンスの強さ C(弱)
- 抗菌薬
- アジスロマイシン・・・エビデンスの強さ B(中)
- ミノサイクリン、ドキシサイクリン・・・エビデンスの強さ C(弱)
- IPL(intense pulsed light)・・・エビデンスの強さ A(強)
- Thermal pulsation therapy・・・エビデンスの強さ B(中)
IPLは、美容皮膚科で使われる光線療法(保険適応外)
Thermal pulsation therapyは、簡単に言うと医療機関で行える温罨法
治療のやり方、推奨
以上から、治療の方法として個人的な推奨を記載します。
- 温罨法+眼瞼清拭
- 必要に応じてアジスロマイシン点眼と内服
- 必要に応じてドライアイ点眼とステロイド点眼
- 機材のある医療機関であれば、IPLやThermal pulsaition therapyを併用
がよいと思います。
温罨法
温罨法(おんあんぽう)は、当該部位を温める処置のことを言います。
MGDではまぶたを温めるため、ホットタオル、ホットアイマスクなどを使用すればokです。
眼瞼清拭
その後、顔を洗うような感覚で、ぬるま湯で、軽くまぶたを撫でるように洗うとよいでしょう。
まとめ
- MGDガイドラインが2023年2月に出た
- MGDは慢性の眼不快感を起こす、よくある疾患
- 治療は温罨法、眼瞼清拭をメインに、抗生剤の点眼・内服などを行う
頻度は結構多く、普段の診察でもそこそこ見かけるはずです。
温罨法、眼瞼清拭は簡単にできるので、やり方を伝えることができるようにしておくとよいと思います。
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