医学と医療と民間療法、一般の人が知っておくべきこと

医学と医療と民間療法、それぞれの特徴や注意点などに関して書いていきます。

目次

医学・医療について

  • 現代医学の中心は西洋医学
  • 医療とは現代医学をもとに提供される治療など
  • 西洋医学ではピンポイントに治す
  • 東洋医学では体全体のバランスから治す

現代医学は西洋医学をもとにして成り立っています。

現代医学は、体の構造、体の機能、生じた病気に対してその原因を究明し、診断法や治療法、予防法などを探求する学問です。

そしてそれをもとに実際に提供されるのが「医療」となります。

西洋医学

西洋医学では、病気に関しては「これが悪いからそこを治す」というように、薬や手術などによって体の悪い部分に直接アプローチして、原因を取り除いて治療をするものです。

例えば胃の調子が悪いときは胃酸を押さえる薬で治療したり、頭痛がひどいときは痛みのシグナルとなる物質を抑える薬を使ったり、癌であればそれを手術で取り除いたり抗がん剤や放射線で癌細胞の消滅を目指すことが治療をなります。

東洋医学

東洋医学では、体の不調に対してさまざまな要因が絡み合って起こっていると考え、崩れたバランスをもとに整えることで体調を治していきます。

気・血・水という3つの要素を重視し、これらのバランスを整えます。

治療としては主に鍼灸、あん摩、漢方を用います。漢方は多種の薬草を複合的に組み合わせた薬で、1つの漢方薬で多方面の効果・効能があるように、ただ単にその症状に対する治療ではなくて、体全体から治していくという面があります。

現代の医学は主に西洋医学

現代医学では、西洋医学を重視しており、東洋医学は触れる程度はあっても本格的には学びません。そして各先進国での治療も、西洋医学が中心となって行われています。しかし漢方の処方は医療機関で行え、鍼灸、あん摩などの職業もあることから、世の中的にはどちらも受けることができます。

現代医学の限界

  • 治せない病気は多数ある
  • 原因がわからない病気は多数ある
  • 現代医学は現在までの経験で推奨されている内容にすぎない
  • 長期的に将来それがどうなっているかの保証はない

解明できていない病気、治療法がない病気というのは山ほどあります

そしてこれからもそれらが解明できるかはわかりませんし、更に病気の数は増えていくと思います。そんな中でできる限り良い治療法を探求し、提供していくのが我々医療人の仕事です。

治したくて来ている患者さんに対しては申し訳ないのですが「絶対に治る」という保証はどこにもありません

過去の経験則、データから、「多くの場合で治ることが見込める」というだけで、治らない人もいます。

治らなかった場合、普通の医師であれば治すための他の治療法の模索、過去に同じような症例がないか論文の検索、自分の手で追えない領域であれば更に専門の医師への相談・紹介などを検討していきます。

したがって、患者さんに「この病気は治りますか」と聞かれても、「治る可能性が高いです」とまでしか言えないのが現状で、「絶対に治る」保証はありません。

もちろん、患者さんのキャラクターによってはほぼ治ると見込める病気は「治りますよ」などと適宜言い方を工夫する人はいます。しかしあくまでも、「治る可能性が高い」が真実で、100%は存在しないのです。

薬に関して

  • 西洋医学的に薬ではピンポイントに原因に働かせる
  • 薬には必ず副作用の記載がされている
  • 長期的にはその副作用がどのようになるかは不明

西洋医学ではそれぞれの異常に対してそこに焦点を当てた治療を行うわけですが、たとえば薬にしても、実際にはピンポイントにそこだけに効いているわけではありません。もしそうであれば、薬による副作用で他の症状は出ませんから。

全ての薬の添付文章に副作用は記載されています。

薬の成分は吸収され血液内に入ると、全身に送られていきます。それによってさまざまな影響が出ることがあります。そこに薬が効いたとしても、他全身でどのようなことが起こっているかはよくわからない、ということです。

そしてそれは長期的に、薬を使い続けた結果、何十年先にどうなっているかというのは、わかりません。

例えばこちら(→MRI造影剤の脳残留https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcns/26/11/26_776/_pdf)は、治すための薬ではなく検査をするための薬ですが、MRI検査のときに使うガドリニウムという造影剤で、これを使うと脳内にガドリニウムが溜まるというものです。

これは2017年次のものですが、これによる健康被害はないとのことですが、わざわざ薬を使ってそれが体内に蓄積している、なんてことが分かったら、使いたくありませんよね?

ただし必要なときには使った方がよいのも事実です。そのときのリスク、ベネフィットを考えて、使うかどうするかを相談するとよいと思います。

従って、不要な薬を使う必要はありませんし、不要な薬は使うべきではありません。

民間療法について

  • 民間療法は医療機関で行われる医療と対比される
  • 民間療法は科学的根拠、データが乏しい
  • 医師が勧めるケースもある

その定義は不明確ですが、医療機関で医師が提供するものが「医療」であるのに対し、一般人が医療機関以外で提供するものが「民間療法」ということが多いです。医者が名前を出して、西洋医学的な根拠がない、民間療法的なものを行っていることもあります。

雑誌やテレビなどで一時的に話題となるケースとして、「血圧〇〇程度は大丈夫、薬を飲むな」などというものを見かけます。中には医師自体が「医療経験〇〇年、ベテラン医師が語る」などと宣伝している出版物や雑誌(医学雑誌ではなくコンビニにおいてあるようなやつ)もあります。

その内容が真実かどうかは別として、

通常の医療者からすると「怪しい」ということになります。なぜなら、それが本当に医学的に正しい内容であれば、データを集めて検証し、正しいことを報告すれば、自身の実績にもなるし、世界中の医師がその治療法を選択することで、世界中の患者さんがよりハッピーになれるのですから。どう考えてもそれが一番みんながハッピーになります。それができない内容だから、一般の出版物にやや誇張して書いている、という風にみなされます。

また、医療法にて医療機関は誇大広告が禁止されています。自身の診療科、診療時間などの基本的なことしか広告できません。本にその規制はないので、そういうところで誇張して表現している、と言うふうにも取れます。

民間療法と医療の違い

現代医療では、先に述べた通り、これまでに得られた莫大なデータをもとにして現在よいとされている内容を提供しています。

一方民間療法では、多くは現代医療で改善されなかった人が勧めているケースが多いですが、個人の経験からよいと思われることを提供しています。

民間医療は原理を考えると、実際にデータ、論理的に得られたものは少ないので、その根拠は乏しいです。(根拠があれば医学的に正しいとされ、民間療法ではなくなりますから)しかし医療でも実際には治せない病気が無数にある状態であり、「なんとしてでも治したい」と願う人がいろいろ考え努力し、考案したものもあり、一概に否定するものでもないと思います。

そして実際に、「民間療法でよくなった」という人が増えるのなら、それはそれでよいことだとさえ思えます。そしてその経験数が増え、それが真によいとされることであれば、ちゃんとした治療になると思います。医学にも限界があるのですから、医療者以外の観点で、新たな治療法が生まれるならそれは素晴らしいことだと思います。

一方、「怪しい」民間療法も存在し、実際に人体に害を与えている可能性もあるので注意です。

現代医療の注意点

  • 医療には限界があること(治療に絶対はない)
  • 治療や検査などには副作用が存在すること
  • 不正な研究結果があること(データが正しいとは限らない)

医療における注意点もあります。先ほど述べた、医療には限界があるということ。全てを解明し治すことは無理です。そして人の寿命が延びてきた結果、新たな病気が見つかったり、新たな感染症が現れたりしてきます。しかしその都度、どうにかしようといろんな医療者、研究者含め頑張って解明、治療をしようとしています。

もう一点は、過去にあったディオバン事件(→日本医師会ディオバン事件https://www.med.or.jp/dl-med/doctor/member/kiso/h12.pdf)のように、不正に治療効果を上げた研究などがあります。すなわち、言いたいことは同様なのですが、医療は完璧ではないということと、こういった事例、嘘の医療というものもあります。

現代医療は過去からのデータから得られたものと言いましたが、そのデータの扱い方で統計的に結果が変わってくることもあります。従って医学論文でさえも、内容を吟味しないと必ずしも正しいとは限りません。しかし有名な医学雑誌になればなるほど、しっかりとしたデータを求められるのでそのリスクは低くなります。

従って、多くの医療者は有名な医学誌に載せれるように日々努力し、載せることができれば名誉であり、その内容は「だいぶ正しい」と医療界から認定されるようなものなのです。そしてそれが実績になり、お偉い医者になったりします。

しかしそれすらも、くつがえることはあり得ます。例えば学問が異なりますが、過去は地球を中心に太陽などが動いているという天動説が主流で常識でした。当時に太陽を中心とし地球が動いているという地動説は異端とされ、排除されてきた過去がありますが、現代の常識では地動説が有力ですよね。

今の常識が、未来の常識とは限らないということですね。

民間療法の注意点

  • データ自体が乏しいこと
  • 医療界の常識と正反対のことがあること
  • 商品を販売しだしたら注意すること
  • 責任の所在が不明確なこと

民間医療ではそもそも根拠データが乏しいことがあげられます。中にはその方法でよくなったという人もいますが、その「よくなった」自体も個人の感覚であり、客観的な数値でないことも多いです。(体調がよくなった、など)

中には現代医学の常識とされる治療法、健康法と正反対のことを推奨する民間療法もあります。それに関しては、医師からしたら否定されますし、医療者VS民間療法などの戦いが繰り広げられたり繰り広げられなかったり。

例えば薬を完全に否定的な人がいて、医学的に生きていくために必須である薬をやめさせたことにより死亡した例(糖尿病男児のインスリン事件)、これは殺人として判決されました。

また、商品を売り出したら注意です。本当によいものを本心から広めたいのであれば、そこに利益はいらないと思います。(存続するために最低限の利益はあったとしても)

よくありそうなパターンですが「この水を毎日1L飲むと穢れが取れて本当健康になりますよ。一本3000円」みたいな、明らかに流通しているほかの物と比較して値段が高い場合。さすがにこれはおかしいわかると思いますが、こういう詐欺はありますよね。

医療者からの治療は、もちろん金額の高い治療の提案も中にはあります。しかし金額が高いから勧めたいわけではありません。薬剤費が高い治療を勧めても、薬剤費が高いだけで個人の利益にはなりませんので(自由診療の場合は利益になりますが)

まとめ

  • 現代の医療で提供できるのは、現在までにわかっているよいとされる方法
  • 医療・医学は完全ではなく、治せない病気、原因不明な病気も多々ある
  • 薬は短期的には効いたとしても、長期的にどのような副作用があるかは不明
  • 医学業界自体にも、過去に不正な研究データが存在した
  • 現在もデータをよく吟味しないと、真実とは程遠い内容などもあり得る
  • 民間療法は根拠、データ的にも乏しいことがほとんど
  • 利益目的の人もいるので注意
  • いろんな情報をすぐに信じずに、俯瞰して見ましょう

これらのことは、世の中の多くの人が「健康になりたい」「病気を治したい」と強く願うから存在するテーマで、盲目的になってしまっているところがあると思います。

医療に限らずですが、現代では世の中に情報があふれかえっています。正しい情報、正しくない情報が混在しています。一つの情報だけを信じ込まずに、いろんな情報に触れて、さまざまな意見や経験を取り入れることができると、いろいろ見えてくる視点が変わってくるかもしれません。

医療と民間療法の違いに関してはこれまで述べてきましたが、健康になりたい人が健康になって元気になるのであれば、それが医療のおかげでも民間療法のおかげでもよいと思います。だってどちらにも限界はありますから。

自身で選択した結果で、結果がどうであろうとも、納得することができるのならそれが一番です。

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