診療報酬改定の話題が広がっています。特に、日帰り手術におけるA400 短期滞在手術等基本料1のうち、入院しない手術、すなわち日帰り手術における報酬の一部(※)が約半額に減りました。(以下参照)
※手術費用自体が半額になったわけではありませんので、総額が半額になったわけではありません。
それに伴い話題になっているのが、手術件数1位2位を争う、眼科の白内障手術と内科の内視鏡によるポリペクトミーです。
第8回NDBオープンデータ(厚生労働省)によれば、令和3年度の手術総件数の第1位は<内視鏡的大腸ポリープ・粘膜切除術(長径2センチメートル未満)>で、1080249件となっています。2位が<水晶体再建術(眼内レンズを挿入する場合)(その他のもの)>で984348件です。
これらは多くの場合、日帰りで行われているため、今回の診療報酬改定で大打撃(?)というわけです。
日帰り白内障手術1件辺りの報酬減額値
短期滞在手術等基本料1としての報酬が2947点から1588点に減るため、1359点減ることになります。金額にすると10倍となるため、13590円です。つまり、現行と比べ、白内障手術1件につき13590円赤字になります。
白内障手術1件だけ行うために手術の時間を取る開業医は普通いないと思うので、少ないラインで5件とします。週1日手術で5件の場合、月に20-25件(年約250-300件)であり、月あたりの減額値は13590×20~25で、30万円(年約350万円)程度です。
数字にしてみると、そこまで大きな感じはしません。
結構手術を頑張って年1000件程度行っている眼科の場合は、先ほどの数値を約4倍して、月80-100件とすると、月あたり120万円(年1500万円)程度の損失になります。
額が大きいと思うか小さいと思うかはそれぞれの環境で変わるかもしれませんが、現行と比べ減額されるのでクリニック経営の点では気にする必要があると思います。
入院手術、日帰り手術どちらも扱っていた眼科への影響
日帰り手術での収益が1件辺り約13000円程度減ってしまうため、入院させる方向に増える?かもしれません。
ただし入院時の対応の手間や人件費、コストなどによってはあまり変わらないかもしれません。
入院させる方向が増えるにしても、入院設備には限度があるので、できるだけ入院をさせつつ、残りの患者を外来手術で行うという感じでしょうか。
入院手術しか行っていない眼科への影響
今回の改訂での影響は受けないので、何も気にすることなく、ノーダメージです。
ただし、近年白内障手術は短期入院や日帰り手術が浸透してきた中、利益が減ってしまったため、院内で今後日帰り手術を推進していくことが難しくなるかもしれません。
国民・患者への影響
診療報酬が下がるので、治療を受ける人(患者)は払う費用が安くなります。
また、この改定部分における医療費は安くなるため、社会保障費として国民が支払うこの改定部分における金額は減ります。
個人的な感想
白内障手術で利益をたくさん上げている医療機関もあれば、白内障手術でぎりぎり経営できている医療機関もあると思います。
手術による利益は減ると言えど、うまく手術で経営している眼科であれば、手術をしなくなることはないでしょう。ぎりぎりで経営している眼科は手術を行わなくなる可能性もありますが、他の病院や入院のみで行っている病院で結局手術は行われるので、手術総件数としては多少変動はあるにせよ、そんなに変わらないかもしれません。
今後の更なる減額を恐れてより手術をやろうと思う人が多ければ、手術件数は増えるかもしれません。
また、冒頭にも述べましたが、白内障手術自体の費用は変わっていません。手術時に算定できるコストの一部が約半減しただけです。
まとめ
- 2024年度の診療報酬改定で、日帰り手術において1件あたり約13000円コストが安くなる
- 眼科の白内障手術と内科の内視鏡手術は影響を受ける(その他ももちろん受けるところはあり)
- 眼科においては、白内障手術費用自体は変わらない
- 日帰り白内障手術を行っていた眼科は、手術による利益は減る
- 額がものすごい大きいかと言われると、そうでもないとは思うが、医療機関の経営状況よっては厳しいことになるかもしれない
- 診療報酬減額に伴い、日帰り手術を受ける患者はハッピーかもしれない
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