IOLマスター(光学式)とAモード(超音波式)の違い、測定誤差 

白内障手術の術前検査に行うIOL度数の設定ですが、光学式と超音波式に大きく分かれます。

二つの違いについて書いていきます。大事なポイントして最初に以下のことを記載しておきます。

  • 光学式では涙液表面~網膜色素上皮(測定範囲が長い)
  • 超音波式では角膜表面~網膜の内境界膜(測定範囲が短い)
  • 両者では測定誤差が出ることが多い
目次

光学式眼軸長測定(IOLマスター)

一般的に行われている眼軸長測定タイプのものです。

  • 測定範囲は涙液表面~網膜色素上皮
  • 検者の技術差による影響が少ない
  • 多くの症例で測定可能
  • 中間透光体混濁例ではデータの信頼性が落ちる(測定不可の場合もある)

非接触型なので侵襲性がなく、簡便に検査でき、また精度も高いことが利点です。

光学式眼軸長測定では測定範囲は涙液表面~網膜色素上皮(RPE)となります。

超音波式眼軸長測定(Aモード)

  • 測定範囲は角膜表面~網膜の内境界膜
  • 中間透光体混濁例でも測定できる
  • 検者による技術による測定差が生じやすい
  • 角膜にプローブを接触させて行う検査のため負担が大きい

基本的には光学式で測定し、光学式で測定できない症例を超音波式で測定するのが一般的です。

超音波式Aモードの利点は、「光学式で測定できない中間透光体混濁例でも測定できること」につきます。測定できなかったらレンズの度数決定ができませんので、IOLマスターで測定できなかった症例に用います。

とはいっても、症例によってはかなりデータの波形が乱れたりします。

直接被検者の目にプローブを接触させる必要があること、検者の熟練度によって測定誤差が出やすいこと、などの欠点もあります。

それぞれの検査の測定誤差

測定精度は光学式の方が高い

と言われています。(測定誤差、光学式0.03mm、超音波式0.1mm程度)

また二つは基本的に測っている範囲が違います。

  • 光学式(IOLマスター)→涙液表面~網膜色素上皮
  • 超音波式(Aモード)→角膜表面~内境界膜

光学式はその測定差を補正しているとの文面も見たことがありますが、

実際は0.1~0.3mm程度、光学式のほうが長く測定されることが多いようです。(という文献あり。それほど変わりなかったという文献もあり。)

自身の経験からも、光学式のほうが0.2mm程度超音波式より長く測定されているように感じます。

これが、測定範囲の差を補正していないからであれば、網膜厚の分0.1~0.3mm程度の差が出るのは納得です。しかし補正して尚この差が出るのであれば、原因は何なんでしょうかね?

→詳細は不明ですが、光軸で測っているか、視軸で測っているかの違い、の可能性があります。


眼軸長測定は保険治療では基本的に白内障手術における検査で用います。白内障手術の際に入れる眼内レンズの度数を決定するために行う検査ですが

白内障手術のための眼軸長測定なのに、測定精度が高いと言われている光学式は、白内障が強すぎると白内障による混濁でデータ信頼度が下がり、場合によっては測定不可になってしまい、結局Aモードのほうが測定に有用になるというジレンマ。

結論としては、

  • 白内障が弱い人は光学式
  • 白内障が強すぎる人には超音波式

のほうが向いている、ということですね。

状況別データの扱い方

施設や個々人で異なると思うので、経験的な内容です。

前提として、基本的には光学式を参考にします。

軽度の白内障の人

基本的に光学式のほうが精度が高いため、光学式の値を参考にします。

白内障の混濁が非常に強い人

光学式では測定不可の場合もあるため、超音波式の値を参考にします。

白内障の強さが中間ぐらいの人

光学式で測定はできますが、データの信頼度(波形など)を確認し、低い場合は再測定もしくは超音波式も参考にします。

他に、レフ値、使用している眼鏡度数、光学式での眼軸長の左右差などを確認し、データ信頼度が低くても、これらのデータから整合性があれば参考にしてよいと思います。

光学式と超音波式でデータの差が大きい場合

データの波形を確認し、うまくデータがとれていない場合は再検査を検討しましょう。

それでも同様な結果の場合

基本的に左右の屈折値、眼軸長にものすごい差がある人はそんなに多くはいませんので、眼鏡使用歴があれば眼鏡の度数の確認と、本人に以前の見え方の左右差の確認をし、反対眼の眼軸長を参考にしてもよいと思います。

もしくはデータの中間あたりの値のレンズ度数を確認し、それが光学式・超音波式いずれでも非常に不便な値でなければそれを使うなどでもよいと思います。


硝子体出血が非常に強い例や、黄斑剥離を含む網膜剥離などがあったり、それらが並存していたりするとデータは狂いやすいと思います。そのような場合は上記のように、ある程度の予想でレンズ選択をするしかないですね。

まとめ

  • 光学式は涙液表面~網膜色素上皮間、超音波式は角膜表面~網膜の内境界膜間を測定
  • 基本的には光学式のほうが精度が高い
  • 光学式と超音波式では数値がずれることが多い(0.2mm程度)
  • 中間透光体混濁例では超音波式を参考にする
  • データに差があり過ぎる場合は、まず再検査を検討
  • その他に持参眼鏡度数や反対眼のデータ、中間の値などを参考にする

このあたりは微妙な誤差をどこまで突き詰めていくかという話になってくると思います。

測定後のIOL決定の式に関してもSRK/T他、バレットやいろいろありますし、ズレすぎなければよいのではないかなと思います。

ただし遠方を裸眼でバッチリみたい、という人にはできる限り±0に合わせたいので、ズレの少ない方法、計算式がよいですね。逆に近方狙い(-3D程度)では多少のずれは見え方にそれほど影響しないので、あまり気にしなくてもよいと思います。

コメント

コメント一覧 (2件)

  • 興味深く記事を読まさせ頂きました。

    「しかし補正して尚この差が出るのであれば、原因は何なんでしょうかね?」

    この違いについて昨日の夜から頭を悩ませているものです。
    まだ答えには至っておりません。
    わたしの認識では、おそらく各メーカーから出ている眼軸長測定器は測定範囲は補正されているという認識です。その他の違いを考えると超音波では光軸、光学では視軸を測定しているという点でしょうか。
    それによるものかといま薄ぼんやり考えております。※明確ではありません。

    • コメントありがとうございます。
      たしかにおっしゃる通り、光軸・視軸で測定している軸が違えば値に差がでてきますね。
      固視して測定する光学式では中心窩までの測定(視軸)、超音波式が光軸なのかは不明ですが光軸であれば中心窩を少し外れるのでズレが生じるということでしょうか。
      中心窩で測っているか、傍中心窩で測っているかの違いで網膜厚で誤差が説明できそうですね。
      真偽は不明ですが、とても納得できる内容だと思います。ありがとうございます!

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