網膜硝子体界面疾患の中に、分層黄斑円孔(LMH:lamellar macular hole)、黄斑偽円孔(MPH:macular pseudo hole)、網膜分離症(retinoschisis)といった疾患がありますが、これらの新分類が2020年にHubschmanらによって提唱され、現在では主流になってきています。
また、この領域は現在OCTのen face画像による評価や、EP:epretinal proliferation(以前はLHEP: lamellar hole–associated epiretinal proliferationと呼ばれていた)の重要性なども指摘されており、学会や講演会でもよく話題になっています。
分類の概要
現状3つは完全に分類できるわけではなく、それぞれが同時に存在するような症例もあります。以下、おおまかにですがイラストを用いて記載します。
分層黄斑円孔(LMH)
必須所見
- 不整な中心窩形状
- 中心窩の空洞
- 中心窩組織の欠損
- 網膜面と円孔縁がなす角度<90°
参考項目
- EP(epiretinal proliferation)
- 中心窩外層の隆起
- elipsoid zone の途絶
分層の円孔なので、全層ではないですが、網膜自体の層が薄くなって網膜がえぐれているような見た目です。また、EPが多くの症例に認められるのが特徴です。ERMは併存することもありますが必須項目ではないです。
黄斑偽円孔(MPH)
必須所見
- 中心窩を避ける黄斑前膜
- 急峻な中心窩形状
- 網膜厚の増加
- 網膜面と円孔縁がなす角度≒90°
参考項目
- 内顆粒層の微小嚢胞
- 正常中心網膜厚
偽円孔という名のように、眼底写真や直接診察では黄斑円孔のように見えます。直角に近い角度で中心窩が凹んでいるため、正面から見ると凹んでいるように見えます。中心窩を除く領域に網膜前膜が接着することで中心窩の陥凹を際立たせています。分層円孔ではないため、網膜の層構造は保たれやすいです。
網膜上膜による中心窩分離(ERM with foveoschisis)
必須所見
- 黄斑前膜
- ヘンレ線維層での網膜分離
- 網膜面と網膜分離層縁がなす角度≧90°
参考項目
- 内顆粒層の微小嚢胞
- 網膜厚の増加
- 網膜皺壁
名前の通りなので、網膜上膜が存在します。さらに、網膜分離所見があるのでわかりやすいと思います。
硝子体手術における術式について
こちらも細かな点に関しては確立はされていませんが、「ERMがあればERMを除去する」というのは一般的です。ERMが病態に関与していると考えられるため、ERMは除去します。
LMHにおけるEPとILMに関しては、様々な報告があり、
- EPを温存するだけの方法
- EPをLMHのえぐれているところに埋め込む方法
- FSIP:fovea-sparing internal limiting membrane peeling(中心窩近くのILMを残してその周囲のILMをドーナツ状に剥く方法)
- ILMを翻転する方法
などがあります。EPは基本的に残すか埋め込んだほうが視機能はよくなる印象です。
まとめ
- LMH、MPH、ERM with foveoschisisの3つの分類がある
- LMHはえぐれていてEPが多い
- MPHは直角に凹んでいて周囲にERM
- ERM with fovoeoschisisはERMのあるschisis
- EPとILMに関する術式は確立はされていないが、EPは残したほうがよい
LMHはえぐれて変性しているため視機能が回復しにくそうな印象ですが、EPを埋め込むと形状はかなり綺麗になり、視機能もそれなりに回復しますね。
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