対光反射の種類と神経経路 眼疾患でも減弱・消失する

頭蓋内病変やICU患者、救外の薬物中毒患者など、瞳孔径を測ることも多々あると思いますが、眼自体の病気でも瞳孔の大きさは変化し、対光反射も減弱・消失します。

一般に対光反射はペンライトを当てて肉眼で観察すると思いますが、眼科医は顕微鏡下で拡大して目を診ています。その状況下でも、対光反射が弱い人はそれなりにいて、消失している人もいます。そのような人たちは眼科に通院できる状態なので、中枢系の異常ではなく、眼自体が原因で対光反射の異常があるわけです。

目次

対光反射の経路と種類

まず、対光反射の経路と種類は以下のようになります。

(神経眼科を学ぶ人のためにより引用)

対光反射の経路

光の入力
→網膜
→視神経
視交叉(交叉して両側へ)
→視索
→視蓋前域核
両側のEdinger-Westphal核
→動眼神経
→毛様体神経節
→瞳孔括約筋

直接対光反射

一側の瞳孔に光を入れ、同側の瞳孔が縮瞳する反射(視蓋全域核から同側のEdinger-Westphal核に入力された経路)

間接対光反射

一側の瞳孔に光を入れ、反対側の瞳孔が縮瞳する反射 (視蓋全域核から反対側のEdinger-Westphal核に入力された経路)


簡潔にいうと、目に光が入って、その情報が脳を通って、目の瞳を動かす筋肉に働きかける(縮瞳する)、という流れです。当然ですが、目に異常があればこの反応も弱くなります。(目以外にもこの経路のどこかに異常があれば原理的には減弱します)

そして対光反射は上述のように、直接・間接があるため、光を入れた方の目と入れてない方の目の両方確認しないといけません。(超重要)

目が原因で起こる対光反射の減弱・消失

さまざまな原因で対光反射は減弱、消失します。

慢性虚血(糖尿病や高血圧など)

対光反射は光を当てたときの虹彩の動きを評価するわけなので、虹彩自体が弱っていると動きも弱まります。

虹彩は瞳孔括約筋と瞳孔散大筋の筋肉で動いているので、生活習慣病による虚血や加齢などで瞳孔の動きは弱まります。年齢によっても瞳孔径は異なってきます。一般的には高齢ほど虹彩の動きは弱まって瞳孔径は小さくなり、対光反射(縮瞳)も観察しにくくなります。

ぶどう膜炎・虹彩炎・内眼手術の既往

眼内の炎症(総称してぶどう膜炎という)が過去にあった目だと、虹彩がその後ろの水晶体と癒着していることがあります。

癒着しているとその部分の虹彩は動かないため、対光反射が減弱しているように見えます。

内眼手術(白内障手術など)の既往がある人は、そのときの手術の影響で虹彩が不整な形になったり、障害されて動きが弱くなったり、全く動かないこともあります。

網膜疾患・視神経疾患(視神経炎や緑内障性視神経萎縮など)

目に光が入っても、視神経がその先へ光情報を伝えることができなければ対光反射は起こりません。

例えば、視神経が痛んで失明している人は、失明している目からの光の入力はないので、失明している方に光を入れても対光反射は起きません。

しかし反対の目が失明していなければ、反対の目に光を入れた光は間接対光反射の経路をたどるので、失明している目にも対光反射は起きます。

散瞳薬点眼後

直前に眼科受診している場合、検査で散瞳薬の点眼を使うことがあります。

散瞳薬点眼後数時間は非常に強い散瞳状態となり、瞳は動かないので対光反射は確認できません。

対光反射の評価

眼科領域で対光反射が減弱・消失するのは

  1. 虹彩が障害されて動かない(対光反射が起きない)パターン
  2. 視神経が障害されて動かない (対光反射が起きない) パターン

の2つのパターンがあることになります。

ここで重要なのが、必ず直接対光反射と間接対光反射の両方をそれぞれ見ること。(計4回分)

虹彩が障害されているパターン

患眼(対光反射が減弱・消失している目)に光を入れても、光を入れた目は動きません(直接対光反射-。刺激が入力されても虹彩が障害されて動かないからです。逆に反対の目は問題なく動きます(間接対光反射+

反対眼(正常眼)に光を入れたら、そちらは縮瞳します(直接対光反射+)が、患眼は虹彩が反応しないので動きません(間接対光反射-)。

視神経が障害されているパターン

患眼に光を入れても、光の入力が伝わらないので、両眼とも対光反射は起きません(直接対光反射-、間接対光反射-

一方反対眼に光を入れたら、その刺激は両眼に伝わり虹彩が動くのであれば両眼とも縮瞳します(直接対光反射+、間接対光反射+

  • 虹彩が障害
    患眼に光→直接対光反射-、間接対光反射+
    対眼に光→直接対光反射+、間接対光反射-
  • 視神経が障害
    患眼に光→直接対光反射-、間接対光反射-
    対眼に光→直接対光反射+、間接対光反射+

細かいことを言うと視交叉での光情報の交叉は50:50ではなく、微妙に差があります。その影響によって、直接対光反射と間接対光反射の強さが微妙に異なったりします。

まとめ

対光反射は中枢系の問題だけではなく、眼自体に異常があれば、反応は弱くなったり消失することもあります。

もし対光反射や瞳孔に異常があった場合は、眼科既往も確認しましょう。

そして、片眼ずつ光を入れ、それぞれに対しての直接対光反射・間接対光反射、すなわち計4つ分の評価をしましょう。

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