眼圧の変動についてです。
眼圧は絶えず変化し、一日の中でも変化し、季節でも変化し、体位でも変化し、運動後や水分摂取後などでも変化し、角膜の厚みの違いでも変化します。
なので、1回の値の変化は参考にはしても、大袈裟に気にしすぎる必要はありません。特に緑内障の方は、医者の説明のせいで気になってしまうようになるのだと思いますが、勿論眼圧は非常に重要ですが、同様に1回の変化を気にしすぎる必要はないです。
眼圧の日内変動
- 眼圧が高値:早朝
- 眼圧が低値:夜
日内変動の機序は不明ですが、視交叉上核にある体内時計が交感神経系を介して房水産生をコントロールし、眼圧が変動していると考えられています。
日内変動があるため、眼圧の測定はできるだけ同じ時間帯に行うのがよいとされます。
眼圧の季節変動
- 眼圧が高値:冬
- 眼圧が低値:夏
冬は交感神経機能が亢進するため眼圧が高くなると考えられています。
眼圧は高いだけでなく変動幅が大きいことも影響する可能性があるため、季節寒暖差が大きい地域ほど緑内障リスクが上がる??
眼圧の体位変動
- 眼圧が高値:逆立ち>頭低位>仰臥位
- 眼圧が低値:座位
上強膜静脈圧の上昇や眼内血液灌流量の増加により眼圧は上がります。
つまり、頭の位置が心臓より下になるほど眼圧は上がります。(心臓と目の位置の関係で決まります。)
角膜厚による影響
- 角膜が厚い→眼圧が高く測定される
- 角膜が薄い→眼圧が低く測定される
眼圧は目の表面(角膜)を押すてその反発力などで測定しています。角膜が厚いと硬くなるため、眼圧は高く測定されます。逆に角膜が薄いとやわらかくなるため、眼圧は低く測定されます。
角膜が正常値(520µm前後)から大きく外れている場合
「測定された眼圧よりも実際は高い・低い」と考える必要があります。
例えば、レーシック後の方は角膜が薄くなります。そのような人が眼圧を測定して10mmHg程度だったとしましょう。しかし実際は、この人は「角膜が薄いから低く測定されているだけで、実際は10mmHgよりも高い」ということになります。
- 角膜厚の眼圧への影響は、厚み20µmで1mmHg程度
眼圧のその他による変動
- 眼圧を上げる:カフェイン、多量の飲水、腹腔・胸腔内圧の上昇など
- 眼圧を下げる:運動、アルコール、全身麻酔など
これらの変化は一時的なものであるため、「運動習慣のある人は緑内障になりにくい」「コーヒーを習慣的に飲む人は緑内障になりやすい」というわけではないと思われます。
全身麻酔下のロボット支援腹腔鏡手術などでは、頭低位・気腹により眼圧は上がります。(全身麻酔自体では少し下がるが、トータルでは上がる)末期緑内障の人で中心視野がわずかにないような人は、中心視野が消失する可能性があるため注意が必要です。逆にそれ以外の人、正常の人、緑内障初期の人はまったく気にしなくてokです。
まとめ
- 真夏の暑い熱帯夜は低眼圧
- 真冬の凍える早朝は高眼圧
- (物理的に)頭に血が上ったら眼圧は上がる
- 角膜は厚いと測定上、眼圧が高くなる
眼圧は緑内障を考える上では非常に重要な指標です。
しかしこれだけたくさんの要因で、眼圧は変動します。
1回の測定が前回より2-3mmHg程度と少し高くなったからといって、無駄に心配する必要は全くありません。
むしろ1回の測定で2-3mmHg前回より眼圧高かっただけで、眼圧下降の薬を変えることは普通ありません。
ただし、それが常に2-3mmHg高いようになってきた場合は、眼圧が下がりにくくなっていると判断してよいでしょう。
眼圧は大事だけど、気にし過ぎず、気にするようにしましょう(難しい)
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